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不動産に頼らない物件探しの可能性 (第24回)

【金がないなら熱意を売れ】

物件探しには、不動産業者が必須パートナーとなる。それはあまりにも常識的なことだが、中には不動産屋を介さずに物件を探しだした開業者もいる。
今回は、そんなユニークでバイタリティあふれる人の例を紹介したい。常識的な物件探しでは思いつかない、意地と根性の話。目からウロコが落ちる話となるかもしれない。
まだ日本人のほとんどが食べたことがなかったハンバーガーを売るために物件を探し、八百屋の裏倉庫からスタートしたファーストフード店。それがモスバーガーの1号店。東京都板橋区成増での話だ。今では業界2位のこの企業も、個人店として小さくスタートしているのだ。
「倉庫を貸してほしい」と言われた八百屋は、当然首を縦に振るわけはない。今では知らない人はいないハンバーガーも、当時は知る人はほとんどいなかった。そんな海のものとも山のものとも分からない飲食店に、スペースを貸してくれるはずがなかったのだ。
そこで彼らがやったこと。それは、八百屋が一番忙しい夕刻、毎日店に顔を出し、販売や倉庫整理を手伝い、誠意と熱意を伝えた。そうして、時間をかけて倉庫を借りるに至った。
彼らは十分な資金があったわけではない。親戚や知人に借金をし、しかもそのほとんどを商品開発にあててしまったために、物件にかける費用は十分ではなかった。それでも、大きな成功を手に入れることができたのは、柔軟な発想力と行動力、そして誰にも負けない努力があったからこそなのだ。
これは随分前の話だが、今でもこれに似た方法で物件を探し出し、開業にこぎつけた人がいる。


【商店街に直接働きかける】

国分寺市の商店街で和風カフェを開業した浦山早苗さんもその一人。彼女はOLとして働いていたが、自分の生まれ育った場所でカフェをやりたいと思うようになり、休日のたびに実家近くの商店街に足を運んだ。当時、出店したいと考えていた商店街に空き店舗はなく、半ばあきらめていたが、強い味方がほしいと、商店会長にあいさつに行くことを思いついた。そこでは、「どうしてもこの商店街で開業したいと思っているので、いつか空き物件ができたら声をかけてほしい」とお願いした。
すると商店会長は、「物件を探している段階であいさつに来た人はいない。それほどにこの商店街を気に入ってくれているとは実にうれしい」と感服し、一つの物件情報を与えてくれた。そこにはまだ飲食店が営業中であり、店を閉める気配もなかったが、実は経営者の副業が忙しくなり、近いうちに店を手放そうかと考えていたものだった。まだ構想中の段階で、具体化していない裏情報だった。結局彼女はこの物件を契約し、半年後の開業に向け、最終調整に入っている。
このケースでは、間に立ったのが商店会長だったため、物件情報も速かっただけでなく、家賃の交渉や引き渡し時期まですべて話し合いで、両者に一番いい方法がとられた。開業まで半年以上の期間を設定できたのも、思いのほか契約コストが高く、資金を調達する時間がほしいと思った浦山さんと、顧客への告知とあいさつをキチンとすませたい現オーナーの意思を尊重した上での決定だった。
商店街といってもさまざまだが、古くからの人々の生活を支えてきた商店街では、商店会長を中心としたつながりの強い地域コミュニティーが確立されていることが多い。古い風習のようにも思えるが、このリーダーとの強いパイプを築くことができれば、思わぬ情報を手に入れることができる。出店地域が絞り込まれているのであれば、ただその地域に物件が出てくるのを待つだけでなく、積極的に働きかけることも重要ということだ。


【仮出店でリスクの少ない出店も】

また商店街には空き店舗を活用し、さまざまな出店者に週単位や日単位で場所を貸すスペースが存在する。これは、商店街内の業種を増やすことと、空き店舗の増加による客足の減少を食い止めるための有効な策として、今では多くの商店街が採用している。
これを活用した物件探しも、移動販売者を中心に行われている。レンタルスペースへの飲食店の出店は難しいが、移動販売車なら問題ない。そのスペースに1週間から1か月の期間限定で出店し、客層や反応を見ながらその地域への本格出店を考えるのだ。もしそこが適した場所と判断すれば、商店街の店主に声をかけ、出店できそうな店舗候補地がないか聞いて回る。仮出店で、商店街の人と友好な関係を築いていれば、快く情報を教えてくれるだろう。人気の高い商店街では空店舗がないこともあるが、レンタルスペースをもっているようなところでは、空き店舗やその予定物件があることが多い。
この手法では、効率的に物件探しをできるだけでなく、出店後のリスクも減らすことができる。
これらは一般的な物件探しではない。だが物件探しに必要以上に時間を要し、手法を変えたいと思ったときには有効な手段だろう。それまで気付かなかっただけで、案外近くに、探していた物件が転がっているかもしれない。


コラム

【知らぬ間に…。“また貸し”の落とし穴。】

ある弁当屋の失敗談だ。彼女は、八百屋と魚屋が共同出店する店舗敷地内の倉庫部分を借り、沖縄料理のテイクアウト専門店を開業した。彼女は八百屋の店主と知り合いで、売上低迷に悩んでいた両店の食材を積極的に使うという約束で話がつき、保障金なし、賃料のみの格安で借りることができた。
2坪ほどの小さなスペースに調理機器を並べ、販売カウンターを設けて、沖縄らしく飾った。現地の味を再現した弁当は徐々に売れ始め、ちょっとした地域の有名店となった。
ある日、彼女が忙しく調理をしていると、八百屋の店主が「今日のところは店を閉めて」と言いにきた。驚いた彼女が事情を聞くと、大家が訪れ、八百屋と魚屋が倉庫を本来の用途以外に使用し、勝手に家賃を徴収していることに憤慨しているというのだ。どうやら八百屋の店主は、大家に話をせずに、倉庫をまた貸ししてしまったらしい。つまり、彼女は知らない間に、また貸し状態でスペースを借りていたのだ。大家が怒るのも分からないではないが、彼女としては家賃も払い、やるべきことをやっていた。リピーターも増えたその場所で、今更営業ができないといわれても納得ができないが、大家と直接契約をしていないので、自分の力ではどうにも解決できなかった。
このような例は決して特異なことではない。不動産屋などの専門家が仲介しない契約には、十分な注意が必要なのだ。



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