直観か、データか。納得できる物件探しは人それぞれ。 (第27回)

【決断のタイミングは難しい】

 たくさんの物件を見ていくうち、「ココに決めようか。いや、もう少し待てば、もっといい物件が出てくるかもしれないし・・・」と迷うことがでてくる。時間を必要とする物件探しをしながら、決断を下すタイミングを見失っている人は意外に多い。そうなってしまった人が、どこで何を基準に決断を下すかは、実に難しい問題となる。
 では、他の人は何を基準に決断したのだろうか。なかには直感で決めた人もいれば、データを集め、納得できるまで下調べをして決めた人もいる。
 今回は、開業経験を持つ複数のオーナーに、最終的な判断を下した理由を聞いてみた。




【即断・即決の直観派】

 直観派、データ派のどちらにも共通しているのは、「賃料が予算内であったこと」や「希望していた地域(立地)にあった」など、最低限の条件が合致、または希望に近いものだったこと。
 しかし、それは最終決定する要因にはならない。ここからが、2タイプのオーナーの大きな違いとなるのだ。
 まず直観派は、開業した物件に出会ったとき、「これだ」とひらめきのようなものを感じたという。よく運命の人に出会ったときに、ビビッと感じるものがあるというが、それと同じようなことが物件にもあるというのだ。
 開業からわずか1年でラーメン店を2軒出店したオーナーは、「探していた物件とは条件が多少違ったが、『ここを変えれば大丈夫』と具体的なひらめきがあった」と話す。その1店舗目は、雑居ビルの地下1階というラーメン店には不向きなものだった。もちろん、当初予定していたのは路面店。ただ、厳しい予算と居抜きという条件にあった物件がなく、時間がかかっていた。
 その物件は厳しい条件を出す自分に対し、不動産屋が『その予算ではこの物件がやっと』と説明するために見せた物件。まさか契約することになろうとは思ってもいなかったのだが、結果的には、その日のうちに判を押していたそうだ。




【じっくりゆっくりのデータ派】

 一方、データ重視派は、そんな性急な行動はしない。条件に近い物件が出てくると、いろいろな時間帯に足を運び、人通りや近隣の状況を見ながら、じっくりゆっくり考える。
 大手のチェーン店では、立地開発専門のスタッフを抱え、歩行者数の調査や時間帯別の人口分布、近くの大通りの状況など細かく調べる。業界トップの某チェーンでは、調査を重ねてはじき出した売上予測は、90%以上当たるという。もちろん個人でそこまでのデータを集めるのは難しいので、いくつかの重視したい項目を調べることになる。
 2年かけて物件を探しだした郊外のレストランオーナーは、「ここはいいかもと思い、下調べをしているうちに、他の人が契約をしてしまうことも1回2回ではなかったし、一人で夜に道行く人を数えていて警察官に声をかけられたこともあった。それでも不十分な状態で納得できず、不安なまま契約するよりはマシだ」という。彼の店は、都内で10年以上繁盛し続けているから、その決断は間違っていなかったようだ。
 このように、物件を決めるまでには、それぞれのやり方があるのだが、直観派にもデータ派にも共通していることがある。
 それは、「結局最後は自分で納得して決めた」ということだ。これは当たり前のことだが、実際に開業し、失敗してしまった人のなかには、「あのとき、不動産屋の口車にのってしまった」とか、「どうしようもない物件をつかまされた」という人が多い。なかには、「本当はあそこで店をやるつもりはなかった」と、まるで自分は被害者で、不動産屋がだましたかのように言う人もいるが、これは大きな間違い。
 独立・開業とは、すべての責任を自分で負うということで、物件を決めるのは、そのスタートの作業。自分で決めた物件が、思い通りのものでなかったとしても、それを自己責任として、前向きにがんばっていく必要があるのだ。そして、その苦しいときに頑張るために、「自分で納得して決める」ということが大切なのだ。




コラム

【運命が赤い糸で結ばれていた?】

 さいたま市内で居酒屋をオープンした男性は、実に面白い経験をしている。
 飲食店で板前をしていた彼は、そろそろ独立をと思い、仕事のオフを使って物件探しを始めた。ある日、朝早くに不動産屋から電話があり、「すぐにでも見てほしい物件がある」と言われた。いつもなら仕事の前に物件を見に行くことはなかったが、その日はたまたま余裕があり、足を運ぶことになった。
 駅から続く商店街の中ほどにあるその物件は、広さといい、内装といい、申し分のないものだったが、十分に調査をしなければ納得ができない性分だった男性は、即答を避けて仕事に行き、次の休みの日に再度、足を運ぼうと思った。ところが、その物件は条件がよかったために、その日のうちに他の人が契約をしてしまい、彼のものにはならなかった。
 その後も彼は物件を探したが、それを超えるものはなく、「あの時すぐに決めていれば」と後悔ばかりしていた。
 そして月日は流れ、1年が過ぎた頃、別の不動産屋からFAXが流れてきた。そして彼は驚いた。それは、1年前に見送ってしまった物件だったからだ。なんでも、そこで店を開いた人は、実家の家業を継ぐことになり、急きょ物件を手放さなければならないというのだ。しかも内装は、1年前に手を入れていたため、さらに良くなっていた。彼は迷わず契約をした。
彼とその物件は、まさに運命。その物件と契約できた自信が、成功への道しるべとなることだろう。




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