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メリットが見いだせなかった三角形・多層階店舗 (第32回)

【駅徒歩0分の好立地物件】

 今回は”最高の立地“に惹かれ、リスクを見落としてしまった例を紹介したい。
 ある法人が事業の多角化を図るため、それまでずっと興味を持っていた飲食店を始めることとなった。法人とはいえ、従業員十数名の小さな会社。飲食店の経営は思い切った決断だった。
 訪ねた不動産屋から紹介された物件は、地下鉄駅へ下りる階段のすぐ脇。『駅徒歩0分』という好立地だった。しかも長年、更地となっていた場所に、新たに建てた3階建てのビルで、すべてのフロアをまとめて賃貸するという条件。その駅の乗降客数は1日2万5千人。地上への出口は2か所で、そのうち1つの出口横となれば、人通りは十分だった。
 賃料の坪単価は2.5万円。その駅近辺の相場より高かったが、敷地面積が狭く7坪弱しかなかったため、3フロア借りても想定内の金額だった。



【気づかなかったデメリット】

 さっそく費用を支払い、店のコンセプト作りに着手した。当初はベーカリーカフェを計画。1階にオーブンを設置し、2〜3階を客席にしようと考えた。飲食店の店造り経験が豊富な設計事務所に連絡をし、立地の良さと間口の広さを自慢気に話した。ところがデザイナーは渋い顔をし、デザインの提案まで時間がかかることを伝えた。それもそのはず、その物件は間口が4メートル程あるものの、奥が極端にしぼんだ、三角形の物件だったのだ。
 数日経って提案されたデザインは、オーブンを小さなものにするか、別のフロアに設置するかしかないということ。扉の開閉スペースや温度を考えると、狭い1階に置くのは危険とのアドバイスだった。しかも、1階部分に商品を並べるショーケースやカウンター、コーヒーマシンなどの什器、簡単な調理スペースを配置すると、人の入れるスペースは極端に狭く、一番奥の角部分は角度がないため使い道がなかった。
 最近増えてきた小さな飲食店の中には、10坪未満の店も少なくない。7坪あれば、こぢんまりとした店ができるのだが、この物件は三角形の3階建て。階段を造らなければならずムダなスペースができる上、何にも使えないデットスペースもできてしまうのだ。
 1階の客席は半分がカウンター席。それに、小さなテーブル席を少し造るのがやっと。各フロアに20席を無理やり作った。



【人件費を体力でカバーする現実】

 結局ベーカリーカフェは諦め、手頃な価格でコーヒーを提供する店に切り替えオープンした。最初はアルバイトを何人も雇ったが、狭い1階キッチンは人が多いと逆に作業効率が悪くなった。さらに、2〜3階の客席には、1人ずつスタッフを配したが人件費ばかりがかさみ、だんだんと客席係を置く余裕がなくなった。
 すると1階のスタッフが、一日に何度も2〜3階を往復するようになり、体力的にとてもハードになった。客数が多いときなど、まるでスポーツトレーニングのように、階段の上り下りを繰り返さなければならなかった。
 オープンから半年。客数だけで見ると圧倒的な集客を誇る店となったが、客単価が極端に低かったため売上げは伸びず、利益は上がらなかった。結局、この店は1年を待たずに閉店となった。
 この失敗は、飲食店のノウハウを持たない法人が、甘い計画の基に開業したことが理由の一つではあるが、誰でも陥るミスだとも言える。あまりの立地の良さに、他のチェックポイントが甘くなりリスクが見えなくなってしまうのだ。物件を選ぶ際には、できるだけ広い視野で長所と短所を冷静に分析することが必要となるだろう。
 ちなみに今回紹介した物件は、その後、ある料理の専門店ができたが約1年で閉店。今は3つ目の店が営業を始めている。ビルの完成から2年半。実に目まぐるしい物件となってしまっているが、家賃が安くなったという話は聞かない……。




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