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2つの条件がキーだった 身の丈サイズの物件選び (第45回)

【独立は子供の頃からの夢】

 「身の丈にあった店」 これは、成功するためのポイントであり、多くの人が分かっていることだが、果たして「自分の身の丈」とはどのくらいなのだろうか。
 今回は、あるオーナーの経験を元に「自分サイズの物件選びの難しさ」を考える。
 Aさんは、小学校の卒業文集に「食べ物屋さんになりたい」と書いたほど、幼い頃から飲食店開業を夢見ていた。高校卒業後は、調理師の専門学校に行き、レストランに就職。10年程勤めた後、カフェ・バーを開業した。
 店は駅前商店街の中心部にある8坪のこぢんまりとした路面店で、女性が1人でも利用できるように、白い壁面に白木を配し小さな暖炉を置くことで、ペンションのようなイメージにした。カウンター8席とテーブルが3つ。周辺に若い人が気軽に行ける店が少なかったこともあり、あっという間に人気店となり、どの時間帯も満席になった。



【譲らなかった2つの条件】

 Aさんには物件を探すとき、絶対に譲らないと決めていた2つの条件があった。
 一つは家賃。どんなにいい物件だとしても、家賃が高ければ、その分多くの売上げを確保しなければならない。当時の勤め先のオーナーの「家賃は、売れない想定で算出しなさい」との教えを守り、15万円以下の物件と決めていた。もう一つは、10坪以下の物件。1人で対応できる範囲を考えると、10坪が限界だった。
 店は大盛況のまま1年が過ぎ、常連客からは、「この前来たら満席で入れなかった」「もっと広い店だったら、たくさんの人を連れて来られるのに」という声が聞かれるようになった。それはAさんも感じていたこと。小さな店では、例えずっと満席だったとしても売上げは大きくない。せめてあと3テーブル程あれば、お客の利用機会も増え、売上げも上がる。Aさんはいつしか、もっと広い店への移転を考えるようになった。



【広い物件に移転したものの……】

 オープンから3年が過ぎた頃、同じ商店街にある店が、店主の引退に伴い空き店舗になるとの情報を得た。広さは約13坪。駅に近く、比較的新しいビルだったこともあり、賃料は倍近い。だが、商圏は変わらない。常連客が、そのまま足を運べることに魅力を感じ、喜んで移転することにした。
 Aさんは「席を倍にしても満席にできる自信がある」と、客席を15席から25席に増やした。厨房も広めにして、ゆったりとした店をつくった。
 再オープン後も店は変わらず盛況で、満席になる日が多かった。常連客は皆「今まで以上に利用する」と言ってくれた。
 ところがAさんは、手放しで喜べない自分がいることに気付く。席数を増やした分、明らかに手が回らない。以前の店であれば、多少料理やドリンクが遅れることがあっても、A「申し訳ないね」 客「いいよ、いいよ」などと声をかけ、コミュニケーションをとりながらその場をしのいでいた。ところが、広くなった新しい店はお客との距離がある。それは、ほんの1?2メートルの違いだったが、大きな壁があるように感じることすらあった。「このままでは、お客さんに迷惑をかける」と、アルバイトを雇い、接客の手伝いをさせるようになったが、以前のような?お客との一体感?はなくなった。
 移転から3年。最初の店からの常連客はめっきり姿を見せなくなった。もちろん今でも足を運んでくれる常連客もいるが、軽く声をかける程度の希薄な関係になっていた。店はそこそこ繁盛しているものの、利益額で見れば前店の方が多かった。家賃も高く、水光熱費や人件費などの経費も大きく、常に数字に追われているような感覚があり充足感がないと嘆く。
 8坪も13坪も、飲食店としては、小さな店に分類されるだろう。だがそこには、やった人にしか分からない大きな大きな差がある。
 「俺には8坪がちょうどよかった。最初に決めた2つの条件が、自分の身の丈だったんだ」
 そう言って広めの厨房に立つAさんは、何だか寂しそうに見えた。




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