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こんな不運、あっていい? ビル建て替えで物件消失 (第49回)

【再開発地域の掘り出し物件】

 地域によっては、自治体がからむ大型の再開発地域とされているところがある。その中の一つ、西新宿は「都心部最後の大型地域再開発」とも言われ、随分長い期間をかけて道路の付け替えなどを行ってきたが、それもいよいよ完成に向かおうとしている。
 今回は、その再開発地域のほど近くの店で起こった予期せぬ出来事を紹介したい。
 5年前、30代だった長坂さん夫婦は、開発地に隣接するビルの地下で居酒屋を開いた。最初から地域を限定して探したため時間こそかかったが、運良く居抜きで借りることができた。
 周りには高層ビルが立ち並び、徒歩圏内には、高層マンションが何本も建設されている。時間を問わず集客が見込める好立地で、賃料も新宿西口界隈に比べればうんと安い。この先再開発が進めば、その恩恵を受けられるのは間違いなかった。
 いわゆる掘り出し物件だったために即断即決を求められたが、二つ返事でOKを出した。ほぼ同じタイミングで、40代の男性も契約を希望したそうだが、ビルオーナーは借入れをせずに開業をする長坂さん夫妻との契約を決めた。
 ビルオーナーの話では、その後も何十件もの問い合わせがあったそうだ。長坂さん夫妻は「とてもラッキーな滑り出しだった」と当時を振り返る。



【突然の宣告! 残り6ヵ月の猶予】


 居抜き物件だったこともあり、契約から2週間で開業にこぎつけることができた。15坪ほどの物件は、カウンター6席にテーブル席が18席。壁紙と照明を変えたが、大きな改装は和式トイレを洋式に付け替えた程度だった。
 家賃22万円のその店は、初月から月商200万円をたたき出した。「夫婦だけで……」と考えていたが、アルバイトも数人雇いながらの店舗経営となった。
 3年目を迎えたある日、めったに顔を見せることのないオーナーが「重要な話がある」とひょっこり現れた。その内容はあまりに衝撃的で、長坂さん夫妻は、その日の営業ができる精神状態ではなくなったそうだ。
 それは「このビルは建て替えることになったので、半年後を目安に出て行って欲しい。保証金は、償却なしにそのまま返金。スケルトンにする必要もない」というものだった。
 半年の猶予をもっての契約解除。しかもその時期に、契約の3年の期日が来る。長坂さん夫妻としては、抵抗する余地はなかった。しかし、保証金が丸ごと返ってきたところで、200万円。それだけでは次の開業資金としては不十分だった。
 「もう店は二度とできない︱︱」。2人は途方に暮れ、何も考えることができなかったという。



【いつかカムバックを夢見て】

 程なくそのビルは、売りに出される計画があることが分かった。長坂夫妻は、ビルオーナーが所有する他のビルで開業できないかと尋ねたが、飲食店として使えるところはなかった。
 あまりの落胆ぶりに「営業は半年間やっていいが、家賃は後3ヵ月払ってくれれば、その後は不要。新しい店舗探しの足しにして欲しい」との提案があった。嬉しかったが、事態が好転したわけではない。
 その後夫妻は都心を離れ、町田市内に新しい店を構えることとなった。少ない開業資金では、都心を離れるしかなかった。特に奥さんは不満が大きかったようだが、いつの日か新宿に戻ってくることを夢見ながら、忙しい日々を過ごしている。
 そして、そのビルは……。半年後にすべての店舗が出ていき、完全な空きビルとなり入口も封鎖されたが、2年目を迎える今になっても取り壊される気配はない。どんな事情があるのかは分からないが、あまりに無計画で迷惑な話だ。
 この事例は、最初から予測するのは難しかっただろう。ただ事情は違えど、建て替えや相続争いに巻き込まれる形で、契約を解除される例はいくつか存在する。不運としか言えないが、安泰な営業をしているときでも、そんな不可避な事態が起こりうることを知っておくのも、経営者として大切なのかもしれない。




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