毎日晴れれば最高! 風雨が苦手な半地下物件 (第52回)

【視認性の高い優良物件】


 売上げ確保のために「路面店(1階)で開業したい」と思う人は多い。しかし、売上げが期待できる半面、賃料や保証金が高いのも現実だ。
 一方で意外と手頃に借りられるのが
?半地下物件?。路面店よりは安価で、視認性は路面店と変わらない。このことから、飛びついてしまいそうだが、実は意外な欠点も。今回は、半地下店舗で苦労している例を紹介したい。
 Aさんは、オシャレなカフェ&バーを開きたいと物件を探していた。「カフェは儲けが出にくい」と、できるだけ安価で借りられる物件を探すことにした。
 物件を探し出してほどなく、新興住宅地の半地下の物件が出てきた。周りには高層マンションが立ち並び、近くには深夜まで営業するスーパーもある。住民は若いカップルやファミリーが多く、カフェのコンセプトにもピッタリだった。
 物件を見に行くと半地下なのだが、前面ガラス張りで、上半分は道路からでも十分見える。階段は8段で、店舗の間口と同じ広さ。圧迫感もなく開放的で、客席から通りが見えない分、喧騒を感じずにリラックスできる最高の物件だった。



【雨の日は危険な幅広階段】


 契約は2月。オープンに向けて準備を進め、4月1日にオープンした。ダークな色の木を使い、落ち着いた空間を造り上げた。華やかな印象になるよう、店頭には花を植えたプランターを多数配置しアットホームな店となった。
 店の運営にも慣れた6月。季節は梅雨に。ある雨足が強かった日のこと。店頭から女性の悲鳴が聞こえた。
 急いで店頭に出てみると、女性がうずくまっている。「大丈夫ですか?」と声をかけると「階段が滑って危ない!」と怒りをあらわにした。Aさんは誠意を込めて謝罪したが、女性は「足が痛くて歩けない」「服が汚れた」などとクレームを言い、タクシー代とクリーニング代を渡すことで許してもらった。
 Aさんは「彼女が不注意だっただけに違いない」と思い、あまり深く考えなかったが、その後も、月に1〜2人程度の人が階段から転げ落ちる。その多くは、階段が濡れている日に起こった。手すりのない幅広の階段は、店側の配慮が足りないという印象を与えることとなり、しばらくすると、雨の日はお客が来ない店になってしまった。



【ゲリラ豪雨で店頭は洪水に】

 さらにこの年は異常気象で、ゲリラ豪雨が連日続いた。開放感のある階段は、想像を超える勢いで風雨が吹き込み、ガラスに打ちつける。周りに高層マンションが多いため、余計に風が強まり、ちょうどAさんの店の方に吹き込んでくる。 店頭のプランターは、そのままでは無残な姿になってしまうので、風雨が強い時は店内にしまうしかない。店頭のプランターは数も多く、撤収作業を終える頃にはびしょ濡れになった。
 さらに悪いことに、一定以上の雨が降ると店頭が洪水状態になる。排水設備はあるのだが、ゲリラ豪雨ともなると、一時的にその許容量を超えてしまうのだ。そんな状況でお客は来るはずもなく「いつ店内に水が入ってくるか?」と戦々恐々としながら、店内で1人、うらめしく外を眺めるしかない。
 後で知ったことだが、Aさんが開業する前に、その場所には雑貨店があった。店頭にワゴンを出し、雑貨を置いていたのだが、風や雨で売り物にならなくなることもあったそうだ。
 「結構お客さんも入っていて人気の店だったのに、なぜか閉めちゃったのよね」
 この事情を知らないお客は不思議そうに話すが、Aさんは深く納得する。とは言え、大雨や強風の日以外はいい物件に変わりない。
 「梅雨と夕立、台風が連続する夏が来なければ最高」
 それがAさんの口癖となってしまった。




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