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「本質的なところから変えていかなければ」。コロナ禍の窮地に対し、抜本的改革を遂行。ダイナック代表取締役社長・綾野喜之氏が唱える「サステナビリティ経営」と、外食産業へのメッセージ

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2024年10月29日

1958年に株式会社新宿東京会館が創業。88年には株式会社サントリーレストランシステムを吸収する形で設立された株式会社ダイナック。数多くの飲食店を展開してきた同社は、現在コロナ禍の影響で下降した業績回復のため、猛スピードで経営改革を実施中。その先頭に立つは、2023年に代表取締役社長へ就任した綾野喜之氏だ。今回は、綾野氏が代表へ就任するまでの歩みと、現在進めている経営改革について、話を伺った。

「本質的なところから変えていかなければ」。コロナ禍の窮地に対し、抜本的改革を遂行。ダイナック代表取締役社長・綾野喜之氏が唱える「サステナビリティ経営」と、外食産業へのメッセージ

1962年岡山県生まれ。1986年サントリー株式会社入社。大手外食チェーンへの営業に従事したのち1999年、株式会社ダイナックへ出向。2010年、株式会社プロントコーポレーション常務取締役として、営業・店舗開発・経営企画などを担当。2021年、株式会社ダイナックホールディングス(現:株式会社ダイナック)の取締役常務執行役員を経て、2023年に株式会社ダイナックの代表取締役社長に就任。

営業としてサントリーへ入社。トレンドを押さえた大手外食チェーンの開拓に注力

——綾野社長はダイナックが設立される2年前の1986年にサントリーへ入社されています。どのようなことをされていたのですか?

綾野氏:業務用酒販店への営業から入って、すぐに大手外食チェーンの本社を担当する部署へ行きました。

——80年代後半だと、気鋭の大手外食チェーンが市場に台頭してきた頃でしょうか。

綾野氏:そうですね。この頃は外食業界に限らず、世の中全体でチェーンビジネスがトレンドとなっていた頃です。スーパーマーケットなどの小売業はすでに伸びていましたし、海外でチェーンストア理論というロジックも確立され、日本にも浸透していた。それが外食産業のマーケットに入ってきたという印象です。

——マーケットの中心が個店から大手外食チェーンへ移る過渡期だったんですね。

綾野氏:実はこの頃、サントリーはビールがあまり売れていなかったんです。プレミアムモルツのようなヒットがなくて、シェアがとても低い。だから、今後急激に拡大が見込める大手外食チェーンのマーケットへ営業を強化する方針になり、開拓する部署が作られた。たまたま私は和民を担当していて、わずかながらチェーンビジネスに対する知見があったため、この部署へ異動になりました。10年ほど続けて、この部署を少しずつ大きくしていきました。今では「市場開発本部」となっている部署ですね。

ダイナックでは幅広い業務に従事。出向先のプロントで活躍する中、コロナ禍を迎える

——その後、1999年にダイナックへ出向。この頃は、どのようなお仕事を?

綾野氏:当時、首都圏で展開していた『ダイニングバー 膳丸』という業態のエリア責任者を任されました。営業として、約13店舗ほどの売上・利益を任されていました。
最初の2ヶ月ほどは「現場を知らないと何もわからないから」と言われて、アルバイトの格好をして店舗に立っていたんですよ(笑)。そこで「ああ、現場はこういうものか」と実感しました。
2年ほど続けた後は、企画やIRなど、色々な仕事に携わっていました。

——ダイナックとしては、2000年に大阪証券取引所ナスダック・ジャパン市場、その後2006年に東京証券取引所に株式上場しますね。

綾野氏:当時は、大手外食チェーンが立て続けにIPOをする時代でした。私自身はこの頃、経営には参画していませんでしたが、ダイナックとしても時流に乗り、自立自走していくという考えがあったのだと思います。

——思い返すと、錚々たる外食企業が切磋琢磨していて、なんだかアツい時代だったような記憶が……。

綾野氏:『つぼ八』や『村さ来』、『天狗』は居酒屋の「御三家」なんて呼ばれていて、それに追いつけ追い越せと、和民やコロワイドが上場。さらに、グローバルダイニングやレインズインターナショナルといった若い経営者の運営する会社も上場するなど、業界全体が勢いに乗っていました。

——ダイナックが上場するのも、当時としては自然な流れだったんですね。その後、2010年に綾野社長はプロントへ出向されます。

綾野氏:ここでは、『プロント』の店舗開発やFCオーナーの対応を任されていました。2018年頃からは、『プロント』以外の業態の運営や社内の経営企画、当時プロントが運営していた人材派遣会社など、色々携わっていました。
諸々順調だったのですが、2020年のコロナ禍で大打撃を受けます。プロントも業績が振るわず大変でしたが、ダイナックはそう言っていられないほど打撃を受けていました。20年の決算時点で債務超過に陥って、21年の6月には上場廃止となりました。

立て直しのため、古巣のダイナックへ帰還。業態変更と新規出店で業績の立て直しを図る

「本質的なところから変えていかなければ」。コロナ禍の窮地に対し、抜本的改革を遂行。ダイナック代表取締役社長・綾野喜之氏が唱える「サステナビリティ経営」と、外食産業へのメッセージ

——綾野社長は立て直しのために21年の9月、ダイナックへ戻るわけですが、どのようなことをされたのですか?

綾野氏:既存物件の精査と業態変更ですね。元々ダイナックは、比較的高めの年齢層の方々がビジネスシーンや宴会などで利用できる業態を、都心のオフィス街や繁華街に出店するモデルで展開してきました。これがうまく機能して強みとなっていたのですが、コロナ禍以降はそういった飲食店の使い方をする人が激減してしまった。今までの勝ちパターンが通用しなくなり、人の流れを戻すこともできず、にっちもさっちもいかない状態だったわけですね。

——いわゆる領収書を切るような、会合的な飲食シーンは減りましたよね。

綾野氏:コロナ禍以前の数値と比較して、この先の利益が見込める店舗はどれか、ひたすら精査していました。人の流れがあったり、家賃が安かったりする物件は、まだ価値がある。そういったところに業態変更をかけて、立て直していく方針で進めていきました。

——業態変更は、どのようなコンセプトで?

綾野氏:ターゲットは従来よりも年齢層を低く設定しました。今でいうミレニアル世代と呼ばれる方々ですね。利用シーンは、ビジネスではなくプライベートを想定。基本的に、宴会前提の店づくりはしない。
また、想定しているターゲットは食通な方々が多いと仮説を立て、料理のグレードは落とさず、従来よりも価格を少し低く設定して提供できるよう商品開発も行いました。ダイナックには経験豊富な調理人がいるので、これが可能だったんです。

——従来よりも気軽に利用できる業態にすることで、間口を広げた印象ですね。

綾野氏:例えば『ハレツバメ』は、元々は鶏専門の業態でしたが、品書きに蕎麦を加えたり、鴨を取り扱ったりして、鶏一辺倒ではなく多様な料理を楽しめるブランドに変えました。
また、『魚盛』という海鮮居酒屋は、『釣宿酒場マヅメ』という業態に変更。刺し身が看板であることは同じですが、漁港からの仕入れルートを構築し、新鮮な「釣り魚」や通常は消費されない「未利用魚」などを取り扱い、特色を強めました。
このような業態変更を22年から23年の間に28店の業態変更を実行し、少しずつ結果が出始めています。

——業態変更の他に、新規出店にも挑戦していますね。

綾野氏:新規店舗は、先述のターゲットが集まる街をリサーチし、出店しています。
例えば『元祖海老出汁 もんじゃのえびせん』や『純けい焼鳥 ニドサンド』は、大阪の天満に出店し、その後、東京へ持って来た店舗です。
従来とはターゲットが異なるため、新規出店の方は、必然的に今までダイナックが展開していなかった場所で挑戦する形になっています。

業態変更も、新規出店も少しずつ結果が出て、良いサイクルが見えてきています。当面は、これらの店舗のトップラインを上げていくことに力を注いでいきます。

企業理念を一新。社内コミュニケーションの向上による文化の醸成に注力

「本質的なところから変えていかなければ」。コロナ禍の窮地に対し、抜本的改革を遂行。ダイナック代表取締役社長・綾野喜之氏が唱える「サステナビリティ経営」と、外食産業へのメッセージ

——2023年に企業理念を刷新されたことも印象的でした。こちらについてもお伺いできますか?

綾野氏:最たる目的はES(Employee Satisfaction:従業員満足度)の向上です。
ESが高まることによって、CS(Customer Satisfaction:顧客満足度)も上がり、業績向上につながる。このサイクルによって利益を出していくわけなのですが、業績が良くない時は社員の士気が落ち込み、雇用も下がります。
例外なく弊社もそういった状況で、ESの向上は重要な課題として認識されていたんです。

——そうして、企業理念の刷新に至るわけですね。

綾野氏:とはいえ、トップが話すメッセージって現場の従業員まで、なかなか伝わらないんですよ。実は、こちらの方が課題としては大きくて。
具体的な対策としては、DXによるコミュニケーションの仕組みの強化です。
社内情報プラットフォームを導入し、アルバイトを含めた全従業員とLINEによって情報共有できる仕組みを構築しました。
企業理念を動画配信したり、給料明細のやり取りをしたり、電子雇用契約を交わしたり、様々なコミュニケーションをとっています。

——なるほど、LINEならほとんどの人がスマートフォンに入れているので、情報の共有がしやすいですね。

綾野氏:コミュニケーションの仕組みを作ったら、後はもう、意見の吸い上げですね。やはり飲食店の業務は労働集約型で、現場の方々が生き生きとしていないと立ち行かない。
経営層やマネージャー層とのブレストはもちろん、従業員の皆様からアンケートを取って。2023年は、ひたすらヒアリングを続けている年でした。
ひとつの会社の中に業種や業態がたくさんあるので、本当に多様な意見が出てくるんですよ。出てきた課題に対して担当者を決め、解決のためのチームを作って動いたり、私自身も取り組みを社員に発表する場を設けて伝えたり。そういったことの繰り返しです。

——業態変更や新規出店といった施策と同時に、社内文化の形成にも取り組んでおられるのですね。

綾野氏:きっと、コロナ禍以前から社内文化の課題はあって、潜在的に認識もしていたはずなんです。2000年に上場して、ある程度大きくなって踊り場を迎え、徐々に収益が右肩下がりしていく中で、コロナ禍を迎えている。私としては、コロナ禍が問題を顕在化させたとも捉えているんです。
現在は受けたダメージを回復するために立て直している時期ですが、会社が求めるべきは短期的な成果ではなく、永続的な成長です。それを実現するには、本質的な部分を変えなければいけない。時間をかけて文化を醸成していくしかない。それを、進めている最中です。

外食産業を、希望に満ちた業界にするために。思いを声にして内外へ発信し続ける

——文化といえば、ホームページで掲げられている「サステナビリティ」という部分についてもお伺いしたいのですが。

綾野氏:環境があって、社会があって、その上で経済は回っている。私たち外食産業に携わる者にとって、サステナビリティというのは経営の母体なんです。
今は若い人たちが、そういった考えに対してとても意識を強く持っているので、彼らを集めてプロジェクトチームを作り、「ダイナックができるサステナビリティって何なのか」と、インプットとアウトプットを繰り返しています。
それこそ、『釣宿酒場マヅメ』の未利用魚の取り組みだったり、ペットボトルの捨て方だったり、そういったものを動画配信して、社員を教育しています。

——食品ロスや廃棄物処理の問題は、外食業界全体の課題であるとも考えられますね。

綾野氏:実際、食品ロスのリサイクルは主にアルコールを取り扱っている居酒屋業態はなかなか難しく、遅れているんです。でも、だからこそ社会的使命だと考えています。
食品残渣を堆肥にして、それで育てられた野菜を買って。そういった循環を一生懸命、真面目に作っていく。
そういった活動が、外食業界全体の地位向上につながれば、とも思うんです。

コロナ禍によって、外食産業で働くことにネガティブなイメージを持った人も多いはず。けれども、ここで働くことでしかできない体験や感動があって、その人の人生を豊かにしてくれる。
絶対に、意味のある業界なんです。
そういったものを可視化して、外食業界に携わる人を増やしていきたい。
それはダイナックだけではできないことで、他の企業とも組む必要がある。業界全体が一丸となって、外食産業の地位向上に取り組んでいかなければならない時代は、すぐそばに来ている。
だから今、「一緒に行動しませんか」と、声をかけているんです。

次の世代に、良いバトンを渡すことができるように。
外食産業に、夢を持ってもらえるように。

株式会社ダイナック

https://www.dynac.co.jp/

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