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飲食・食品業界でも可能な「1円買収」。売却益がほぼないM&Aの仕組みとは?
2021年09月22日

2020年2月、PCオンラインゲームを開発するネクソンが連結子会社・gloopsの株式をジーアールドライブに「1円」で譲渡したことが話題に。ネクソンは2012年10月にモバイルゲーム事業を強化するため、業界の開発大手だったgloopsを365億円で買収していました。巨額の買収でしたが、モバイルゲームの環境変化は激しく、開発や運用が想定よりも難航し、1円売却へと至ったとしています。
しかし、飲食店のように資産や従業員を抱えている会社が1円で売買されるのは、あまりイメージが湧かない人も多いのではないでしょうか。どのような仕組みで、売買する側にどのようなメリットがあるのか、「1円買収」の概要や事例を見ていきましょう。
「1円買収」とは?
企業の買収価格は多くの場合、買収対象の会社が将来的に生むキャッシュフローをベースとして算出されます。1円買収の対象になる会社は多額の負債があったり、キャッシュが不足したりしている場合がほとんど。赤字体質で利益が出にくい状態に陥っています。このような会社を買収すれば、財務上の負のインパクトが大きくなります。負債が膨らめば親会社も赤字になりかねません。
さらに買収時のデューデリジェンス費用や仲介会社の手数料がかかり、本当に1円で売買できるわけではありません。また、赤字体質の会社は経営、組織などの問題を抱えていることが多く、シナジー効果が出づらいのが現状です。それにも関わらず、なぜ1円で買収するのでしょうか。
■赤字会社を買収するメリット
・人材の確保 ・サービスや技術の取り込み ・新規参入 ・取引先の開拓・拡大
1円で優秀な人材やサービス、技術を自社に取り込めることが最大のメリットだと言えます。例えば、斜陽産業で市場の縮小が鮮明になっており、そのあおりを受けて赤字体質になっている会社があるとします。赤字であることは外的要因なので、その会社で働くマネージャーや従業員のモチベーションや能力の問題ではありません。
新規参入できることもメリットの1つです。新規参入のハードルが高い業界でも、買収であればスムーズに参入できます。また、飲食店などは新たに店舗を買収することで取引先の開拓や拡大につながることもあるでしょう。
■売却側のメリット
・従業員の雇用継続 ・店舗の継続 ・経営者の連帯保証からの解放
廃業で従業員を路頭に迷わせてしまうことは、経営者にとって辛い出来事の一つ。しかし、M&Aによって資本のある企業に譲渡できれば、雇用を継続できることもあります。場合によっては店舗も存続できることも。借入金などから解放され、自由度の高い生活ができるようになることもメリットといえます。

飲食・食品業界の「1円買収」事例
■あみやき亭のスエヒロレストランシステム買収
焼肉チェーンのあみやき亭が、2009年に日本ハムの孫会社だった焼肉店運営のスエヒロレストランシステムを買収しました。スエヒロレストランシステムは売上高45億円、営業損失が6,100万円でした。
■ヒガシマルの日清マリンテック買収
スープのヒガシマルが2010年に日清オイリオグループから水産飼料や水産種苗を生産販売する日清マリンテックを買収しました。売上高は約5億円でした。日清マリンテックは買収直前に債務超過に陥っています。
■寿スピリッツのフランセ買収
菓子の製造販売をする寿スピリッツは、2015年に明治ホールディングス傘下のフランセを買収しました。フランセはミルフィーユなどの洋菓子の製造販売をする会社です。フランセは売上高47億円、最終損益は8,100万円でした。寿スピリッツはグループで洋菓子店や飲食店を展開しており、フランセの販路拡大を狙いとして1円買収を決めています。
赤字会社の立て直しは、極めて難易度の高いプロジェクトです。また、簿外債務を抱えていたり、経営者と従業員の関係が悪化しているケースも目立ちます。買収を検討する際は、デューデリジェンスを入念に行い、どのような道筋で経営の健全化を図るのかを明確にしておく必要があります。
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