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自店の市場価値とは? 納得の売却・譲渡のための価値の高め方とEBITDA等の計算方法
2019年07月09日
飲食店の売却や譲渡をしたくても、買い手に「買いたい」「ほしい」と思ってもらえなければ、売買は成立させることができません。そこで重要になるのが、自店の市場価値を知り、高めることです。そこで今回は、飲食業界専門のM&A仲介サービスを展開する株式会社ウィットの三宅宏通氏に、そのポイントを伺いました。
―――はじめに、より高く事業を売却するために大切な要素を教えてください。
「継続性」「成長性」「独自性(特異性)」、この3つの要素が大切です。
まず、「継続性」が求められるのは、買い手が買収後も従来通りに、組織や店舗をしっかりと運営できることを望むためです。この観点では、1店舗よりは複数店舗を展開していること、本部組織が整備されていることが評価の対象になります。また社長や職人など特定人物の影響力が大きければ大きいほど、継続という観点ではリスクが生じやすいとされます。
次に成長性には、2つの観点が関わります。1つは業績のトレンドが上昇傾向にあるのか、下降傾向にあるのかという点です。もちろん、上昇傾向にあれば成長性があると見なされます。「M&Aでは良い時に売却することが鉄則」とよく言われますが、この背景にはこの成長性の観点があるのです。
そして、もう1つは明確な課題を持っているかどうかです。課題というとマイナス要素に思われがちですが、課題が明確であればそれは“伸びしろ”と捉えられます。マッチングの相性としては、この課題の分野に強みを持っている買い手が良いということでもあります。
独自性(特異性)は、差別化されたコンテンツや独自のノウハウを指します。買い手はこれを取り入れることで、既存事業に多大なシナジーを発揮できるようになります。
3つの要素すべてを満たすことは難しいかもしれませんが、譲渡価格を構成する大きなポイントであることは間違いありません。
―――具体的に自社の市場価値を知る方法はありますか?
飲食業の場合はEBITDA(イービットディーエー)×3(3年)くらいで売買が成立するケースが多いです。
EBITDAとは営業利益と減価償却費を合算したものです。オーナーの私的経費や引き継がれないコストなどもPL上に含まれていることが多いため、それらを除外して金額調整し算出したものは、調整後EBITDAと言います。
おおよその譲渡価格は、ご自身でも決算書などからイメージすることはできるでしょう。ただ、市場価値となると、計算式通りにはいきません。M&Aアドバイザーに相談してみることは、納得できる売却・譲渡を成功させるための一手になるでしょう。弊社ではこれまでの成約実績の傾向、市場トレンドなどを加味し、算定レポートとしてご提出するようにしています。
―――赤字では売却はできないのでしょうか?
黒字の事業と比較すれば、買い手がつきづらいことは確かです。一方で、赤字の事業をあえてターゲットにしている買い手がいることも事実です。
赤字事業をターゲットにしている買い手は、既に自社で積極的に展開するブランドを保有しており、そのブランドに当てはまる物件と人材を確保することを一番の狙いにしています。
前段で「成長性」の観点では「明確な課題」がキーワードのひとつだとお伝えしましたが、立地は悪くないが商品やサービスなどに課題があり赤字になっていることが明確であるなら、自社のブランドに変えることで大幅な売り上げ改善が見込めると考えているのです。赤字事業であれば買収金額が低額になることも、買い手にとってはメリットです。
―――自社(または自店舗)の価値を高める1番の方法を教えてください。
「自社の価値=譲渡金額」とするならば、必ずしも出店を増やし売上規模を拡大することが正解ではありません。短期的には借入が増え、投資による利益率の低減によって、価値は下がるためです。3年から5年後を見据えて、投資回収後を一つのタイミングで考えるならば、出店を増やす方法は有効でしょう。
短期的に価値を上げていくには、前段で説明をした「継続性」がポイントになります。高い組織体制を構築すること、仕組化が必要です。また、前年比を超え続けていくこと、トレンドを掴むことも重要です。さらには他社との差別化ポイントを客観的に把握し、磨き、独自性を見出すということ欠かせません。
M&Aにおいては利益水準が査定の最重要ポイントですから、利益を上げていくことが価値を高める1番のポイントであることは言うまでもありません。ただ、限界があるのも事実です。会社や店舗の価値は、日々の営業活動において、十分に高めていけるものですし、こうして高めた価値は、どんな場面でも揺るがない価値になるはずです。
「市場価値を高めるのは、日々の営業活動だ」という三宅氏の言葉には、非常に重みがあります。今回教えていただいた3要素を切り口に自店を見直すと同時に、日々の営業活動に改めて力を入れていくことが、M&A成功の近道になりそうです。
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