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【M&Aのプロに聞く!】飲食店売却時、従業員への伝え方は? 事業承継後の待遇・引き継ぎのリアルを解説
2026年04月30日
飲食店の経営者の「その後」を考える重要性を、飲食店のM&Aを数多く手掛ける株式会社ウィットの正野浩基さんにインタビューする本連載。
第3回では「いざ売却」となった際のリアルな手順と落とし穴について伺いました。第4回となる今回は、M&Aを検討する多くのオーナーが最も頭を悩ませる「従業員への伝え方」と「売却後の引き継ぎ」がテーマです。
「いつ、誰から伝えるべきか?」「M&A後、従業員の給料や待遇はどうなる?」「常連客にはどう伝えるべきか?」など、絶対に失敗できないデリケートな問題について、数々の現場を見てきたプロに極意を伺いました。
第1回「飲食店経営者が知っておくべき『4つの出口戦略』とは?プロが教える『閉店・倒産』以外の選択肢」
第2回「『小さな飲食店でも高く売れます!』プロが教える1店舗M&Aの売却相場と、高値がつく店の条件」
第3回「飲食M&Aの専門家に聞く! 飲食店を売却する時のリアルな手順と、失敗のパターンとは?」
第4回 飲食店売却時、従業員への伝え方は? 事業承継後の待遇・引き継ぎのリアルを解説(本記事)
■PROFILE
正野浩基(株式会社ウィット・シニアアドバイザー)
飲食業界を中心に、中小企業のM&A・事業承継を専門とし、多様な売却スキームの案件に携わり、売主・買主双方の実務支援を行ってきた。これまでに約50案件程の成約実績あり。現場実務に基づいた正確性と、専門用語を噛み砕いた分かりやすい解説を強みとし、M&Aに不慣れな経営者にも理解しやすいコミュニケーションを心がけている。
■株式会社ウィットとは?
飲食・食品に特化したM&A仲介に20年近く従事しており、小規模1店舗案件から大規模多店舗チェーンまで幅広く対応できることが特徴。2018年からは飲食店ドットコムを運営する株式会社シンクロフードの傘下に入り、会員数約30万人以上のネットワークを活かした最適なマッチングによる支援を行っている。
目次
飲食店M&Aで従業員トラブルを防ぐ!告知タイミングはいつが正解?
──お店を売却することが決まった後、従業員にはどのタイミングで、どのように伝えるのが正解なのでしょうか?
■目安は譲渡の約2週間前。「早すぎず、遅すぎず」が鉄則
正野氏:タイミングの目安としては、「譲渡の約2週間前」くらいに告知をしていくのが一般的です。これは「早すぎず、遅すぎず」の非常に難しいタイミングです。
早すぎると、従業員に「じゃあ今のうちに転職しようかな」と別の選択肢を考える余地を多く与えてしまいます。かといって、前日や当日にいきなり「明日からオーナーが変わります」と言うわけにもいきませんからね。
■伝える順番は「キーマン」から個別
──たしかに、あまりに早く知らされると不安になって辞めてしまう人もいそうです。誰から順番に伝えるべきかといったセオリーはありますか?
正野氏:順番は非常に重要です。まずは店長やホールのトップ、料理長といった「キーマン」に水面下でお伝えします。
彼らが一番傷つくのは「人づてに聞くこと」です。「お店が変わるらしいよ」という噂を別の従業員から聞いてしまうと、「自分は重要だと思われていなかったんだな」とプライドを傷つけられ、離職に繋がることもあります。
そのため、キーマンとはなるべく個別に面談をして丁寧に背景を伝えた上で、それ以外の従業員さんには皆に集まってもらって「説明会」という形で一斉に告知するのが最も角が立たない方法です。
■従業員が納得する「ポジティブな売却理由」の伝え方
──説明会では、どのような理由を伝えるのが従業員にとって一番納得感があるのでしょうか?
正野氏:一番良い見せ方は「皆さんの雇用を維持し、店舗を展開していくためのポジティブな選択である」と伝えることです。
個人事業主のままでは店舗展開に限界がありますが、資本力のある会社の傘下に入れば、今後お店が増えて「新しいポジション(役職)」が生まれる可能性もあります。
「皆さんの待遇を良くし、活躍の場を広げるために、マネジメントが得意な会社と一緒にやっていくことにした」という文脈で説明すると、前向きに受け取ってもらいやすいですね。
M&A後のリアルな労働環境。従業員の給料や待遇はどうなる?
──M&Aでオーナーが変わった後、従業員の給料や待遇は下がってしまうのではないかと不安に思う人も多いと思います。実際はどうなのでしょうか?
■基本的に待遇は維持、または改善されるケースが多い
正野氏:基本的に、待遇がそのまま引き継がれるか、良くなるケースがほとんどで、悪くなることは滅多にありません。買い手企業も今のスタッフがそのまま残ってくれることを望んでいますし、給与バランスを崩して不満を持たれるのは避けたいからです。
■「労働環境のホワイト化」で辞める人も?
──むしろ良くなるケースもあるんですね。
正野氏:はい。特に買い手が大企業の場合、社会保険にきちんと加入したり、労働時間が適正化されたりするケースは非常に多いです。個人店の頃は残業ありきで長時間働いていたような環境が、大手のしっかりとしたルールのもとで再整備されるわけです。
ただ、飲食業界特有の面白いところなんですが、労働環境がホワイト化することで、逆に「物足りない」と感じて辞めてしまう職人気質の方も稀にいらっしゃいます。
「もっと残業してでも料理を追求したいのに、規制されてしまってつまらない」と(笑)。大企業が異業種参入で買収した際などに、こうした「労働時間に対するギャップ」が起こることはありますね。
飲食店売却で絶対に防ぎたい「従業員が一斉に辞める」罠
──これまで数々の案件を見てこられて、従業員関連で揉めたケースはありますか?
■契約書で「従業員の引き留め」を強制することはできない
正野氏:それはもう、たくさんありますよ(苦笑)。一番多いのは、「そのまま残るという口約束をしていたのに、蓋を開けたてみたら辞めてしまった」というトラブルです。
──それは買い手にとっては大打撃ですね。防ぐ方法はないのでしょうか?
正野氏:実は、M&Aの譲渡契約書の中に「この従業員を絶対に辞めさせないこと」という条件を組み込むことはできないんです。従業員には職業選択の自由がありますからね。
売り手オーナーは「うちのスタッフは絶対に残るから大丈夫ですよ」と言っていても、いざ譲渡が実行されると、キーマンだった店長が派閥を作っていて、他のスタッフをごそっと引き連れて一斉に辞めてしまった……なんていう恐ろしいケースも実際にあります。
■専門家による「事前のヒアリングとリカバリープラン」が必須
──そういった事態を防ぐためには、どう対策すればいいのでしょうか?
正野氏:私たちアドバイザーが事前に入念なヒアリングを行います。売り手と買い手が直接顔を合わせて話す前に、「このスタッフはこういう性格だから、こういう風に伝えないと辞めるリスクがある」「もしこの人が辞めてしまった場合は、こういう代替策や金額の調整で対応しましょう」といったリカバリープランを何段階も準備しておくんです。
こうしたリスク管理を行うのも、専門家が入る大きな意義の一つですね。
M&A成立後、元オーナーの引き継ぎ期間と常連客への伝え方
──M&Aが成立した後、元オーナーはすぐにお店からいなくなるものですか? それともしばらくは現場に残るのでしょうか?
■3ヶ月〜半年間は「引き継ぎ期間」として現場に残る
正野氏:大体3ヶ月から半年くらいは「引き継ぎ期間」として残っていただくケースが多いです。やはり元オーナーの影響力は強いので、いきなりパッといなくなってしまうと、従業員からもお客様からも「売り抜けて逃げたな」という悪い印象を持たれてしまいますから。
■常連客には「自然なフェードアウト」で浸透させる
──お客様、特に「常連さん」には、お店を売却したことをどう伝えるのが正解なのでしょうか?
正野氏:「オーナーチェンジしました!」と大々的にアナウンスするケースは少なく、自然に浸透させていくことが多いですね。 とはいえ、常連さんはお店の雰囲気が変わったり、オーナーの姿が見えなくなったりすればすぐに気付きます。
私が担当したある老舗の方の場合は、「少しずつ第一線を退いて、これからは2番手の番頭さんにメインでやってもらうことにしたんです。私は裏方に回りますね」といったような言い方で、自然な形でフェードアウトしていく形をとられていました。
もちろん、「どうしても長年の常連さんにはきちんと挨拶をしておきたい」というご希望があれば、事前にしっかり告知をしてから引き継ぐことも可能です。
経営の「その後」のお悩み、一緒に解決します
先の見えない飲食店経営の「その後」を考える時、ぜひ私たち「飲食店ドットコムM&A(株式会社ウィット)」を思い出してください。
オーナー様の体力、ご家族の状況、そして従業員への想い……。ご希望の条件をすべて伺った上で、M&Aが最善の道なのか、あるいは他に道はないのか、飲食店の出口戦略に精通したアドバイザーが一緒に最適な道を見つけるお手伝いをいたします。
もちろん、秘密は厳守いたします。
あなたの店の可能性を診断する無料相談は、下記リンクよりお気軽にお申し込みください。
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