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“そこにない価値”を見出す先見性でヒットブランドを量産。「おぼん de ごはん」のビー・ワイ・オー中野耕志社長の「視点と視野」の秘密に迫る

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2023年07月24日

1996年、「手作り料理とお酒 えん」のヒットによって「和食居酒屋」というジャンルの先駆けとなった株式会社ビー・ワイ・オー(東京都豊島区)。現在でも、「おぼんdeごはん」をはじめとした数多のヒットブランドの創出により、国内外で約120店舗を展開している。今回は、同社の料理長として数多くの店舗をつくりあげ、2021年に代表取締役社長に就任した中野耕志氏から、新たな価値を生むための着眼点や今後の飲食業界に対する在り方について伺った。

“そこにない価値”を見出す先見性でヒットブランドを量産。「おぼん de ごはん」のビー・ワイ・オー代表取締役社長・中野耕志氏の「視点と視野」の秘密に迫る

中野耕志氏
1966年6月生まれ。高校卒業後、料理人としての修業を積み始め、1985年に西ドイツへ渡り、和食店で働く。約2年の修業生活を終えて帰国。29歳の頃にビー・ワイ・オー創業者の楊氏と出会い、入社。同社の飲食事業一号店となる「手作り料理とお酒 えん 池袋西口店」の立ち上げに料理長として尽力。以降、商業施設での出店を中心に、数多くのヒットブランドを世に送り出してきた。2021年6月に同社の代表取締役社長に就任。長きにわたるコロナ禍を乗り越え、企業として新たな一歩を踏み出している。

海外で修業を積んだのち、ビー・ワイ・オーでは新規事業の展開に従事。業界に新たなムーブメントを生む

―中野社長は高校卒業後に飲食の道を歩み始めましたが、そのきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

中野耕志氏(以下、中野氏):もともとのきっかけは、高校の頃、友人を家に招いて料理を振舞ったら喜んでもらえたことだったと思います。実際に高校を卒業する頃には大学へ進学する選択肢もあったのですが、当の私は特に大学でやりたいこともない。ならば、自分自身が興味のある飲食の道へ行こう。どうせなら海外へ行きたい、と、いうことで、1985年に西ドイツへ渡ることになります。

―西ドイツには何年ほどおられたのですか?

中野氏:約2年ですね。私が渡った頃はまだドイツが東西で分かれていたので、日本食のレストランはあまりなかったんです。そんな中でも、私が入ったのは結構な有名和食店で、色々な会合やパーティに料理をつくって出すお店だった。私は出張班のような部署に回されて、ヨーロッパのあちこちへ赴いて和食をつくっていました。夏休みになったら、師匠の知り合いのフレンチでちょっとバイトさせてもらったりとか、当時はいかにも「修業」という感じでしたけど、振り返れば色々なものを吸収できたと思います。

―豊かな時間ですね。その後、ビー・ワイ・オーに入社するまではどのような経緯があったのでしょうか?

中野氏:帰国してから色々な和食店を転々としていましたが、あるとき、知人から店を預かる機会があって。オーナーではないけれど、責任者として運営するかたちですね。しばらく経ったら、ビルの立ち退きでその店がなくなることになって、ぼんやり「自分の店を持とうかな」と考え始めます。そんなタイミングで知人伝いに出会ったのが、ビー・ワイ・オーの創業者・楊だったわけです。彼は私と同い年で、当時29歳。もともと、ビー・ワイ・オーは自社ビルでカラオケなどを運営する会社で、私に声をかけたときは「初めて賃貸で店を借りて、飲食店を始める」というタイミングでした。その賃貸物件がなんと100坪の大型店だというのだから、「これは面白い」と、料理長として入社したというわけです。私はオープンに向けて店づくり、楊は経営のマネジメントと、うまく役割分担をしながら、準備を進めていました。

―初めての飲食店開業が100坪とは! なかなか豪快ですね……!

中野氏:この頃はバブルが崩壊した後で、ビルの空中階に新しい商売が生まれていない時期だったんです。そこで、私たちは「ナショナルチェーンの居酒屋を卒業した人たち」の受け皿として、単価が市場よりも1000円ほど高い店をやろうと考えました。自分たちと同年代くらいの人が来店できる、新しい遊び場を作ってみよう。そうして1996年10月に開業したのが「手作り料理とお酒 えん 池袋西口店」です。売上は好調に推移していって、翌年2月に火が点いた。私たちが当初ターゲットにしていた20代後半から30代はもちろん、想定外だった60代、70代のアッパー層を取り込むことができたのも嬉しい誤算でした。カジュアルな価格帯でありながら、料理のクオリティも高く、隠れ家的な空間デザインも当時としては新しい。これによって、幅広い年代の人が友人同士の飲みやデートはもちろん、会社の宴会、接待など様々なシーンで利用する店になり、1998年に渋谷で開業した同様のコンセプトの店舗も、1日3回転するほどの賑わいを見せていました。

新たなる主戦場は商業施設に。持ちうるリソースとアイデアを駆使してヒットブランドを量産

“そこにない価値”を見出す先見性でヒットブランドを量産。「おぼん de ごはん」のビー・ワイ・オー代表取締役社長・中野耕志氏の「視点と視野」の秘密に迫る

―こうしたヒットが「和食居酒屋」や「アッパー居酒屋」といった新しいジャンルの火付け役になったとも言われています。

中野氏:ありがたいことに、業界内でも注目を浴びることになりましたが、一方で、同じコンセプトで参入してくる店も増えてくる。あるときから一気に競合が増えて、2000年ころには、駅前や路面には似たようなお店の看板がぎっしり並ぶようになってしまった。そこで次の方策を考え始めていたときに、池袋のパルコさんから「商業施設でお店を出しませんか」と、声がかかったんです。当時、商業施設の飲食店といえば、「商業施設の利用者がついでに立ち寄る」という場所でした。そうではなく、「その店で食事をするために商業施設へ行く」という、目的来店による新たな客層の流入を狙う。そういった戦略の池袋パルコのターゲットとしている客層が、私たちの顧客である「ナショナルチェーンを卒業した層」、「本格志向の料理を求める層」と合致していたため、白羽の矢が立ったのだそうです。

―今となっては「ビー・ワイ・オーといえば商業施設」とイメージが強いですが、そういった始まりだったのですね。

中野氏:結果としては目論見通り、従来は商業施設を利用しなかった層の取り込みができました。昼間はサラリーマンのランチ需要があり、夜は飲みや宴会の需要があった。特に、安全な商業施設は女性が安心して利用しやすかったようで、女性グループの飲み会なども多かったですね。弊社としても、今まで取り込むことのできなかった昼の利用客を取り込み新たなインプットができて、「商業施設での出店は、新しい活路になるかもしれない」と考えるようになりました。

―その後、2003年に「だし茶漬け えん 渋谷東急東横店」を出店し、これもヒットします。

中野氏:実は、もともと東急百貨店さんからは惣菜店の出店を依頼されていたんです。弊社としても「惣菜店、やってみたいよね」と思っていたところだったので、ちょっと気合を入れて「和食屋の惣菜 えん」というブランドを立ち上げて臨むことにしました。ただ、実際に物件を見てみると、惣菜売場のすぐ横にちょっとしたイートインスペースがついている。せっかくなので有効活用しようと、おまけのつもりでイートインに「だし茶漬け えん」もつくって開業したんです。そうしたら、こっちの方が売れてしまって(笑)。なんとも嬉しい誤算ではあったのですが、このころから本格的に商業施設での出店の流れができたと思います。居酒屋の企業でありながら、商業施設のお客さまのニーズをしっかり捉えている。「和食といったらビー・ワイ・オー」と、声がかかることが多くなったと思います。

ピンチをチャンスに変える柔軟な対応力。「おぼん de ごはん」の誕生秘話

―2008年には「おぼん de ごはん 新宿ミロード店」を出店しますが、もともとはガレットのお店だったと聞きました。

中野氏:ちょうど新宿ミロードが何10年かぶりの改装で、飲食スペースも一新する、という話だったんです。私たちは、若者の利用を見込んで和食のデザートをつくろう、と、ガレットを商材に選びました。しかし、オープンしてみたら、全然お客様が来ない。初日で、周囲の店は満員なのに、ウチの店だけは閑古鳥が鳴いている。その後も、何日も同じような状態が続くんです。「このままでは、お客さまに売れていない店というイメージが染み込んでしまう。そうなる前に、業態変更してしまおう」と、オープンから1ヶ月後に一度クローズ。2ヶ月で準備を終えて、「おぼん de ごはん」としてリニューアルオープンしました。この時は、初日からすでに大盛況だったので、ほっと胸を撫でおろしました。

―具体的にどのような思考で課題解決に臨んだのですか?

中野氏:初めの頃はうまくいかないものに対して「あれを足そう、これも加えよう」と、足し算の思考で対策を練っていたのですが、結局は根本的なテーマやコンセプトが間違っていると気付いて、いちどゼロベースで考えることにしました。毎日現場に出て、その場所にないものは何か。何があったら流行るだろうか。そんな見方で周囲を見ていたら、ふと、「ここに定食屋があったら流行るかも」と思ったんです。和食の会社だから定食はお手の物だし、周囲にはない。店舗の状態も、ガレット屋の小洒落た雰囲気が残っている。「カフェっぽい定食屋」という見せ方にすれば、ウケるはずだ!

―結果的には大ヒットブランドになったのですから、すごいですよね。

中野氏:リニューアルオープン当日から大盛況だったのですが、その要因はサンプルケースのデザインだったと思います。定食が乗ったおぼんを垂直に立てて並べることで、お客さまはひと目で定食の内容を理解できる。なにより、見栄えもいい。手前味噌ですが、当時こういった見せ方をする店はなかったので「サンプルケースの革命」と自画自賛しています(笑)。
ここでの成功体験はその後の指針になり、出店場所に合わせて業態を考える、という計画の立て方が弊社の出店の基本戦略になっています。

コロナ禍真っただ中の社長就任。組織改革によって見えた飲食企業としての“これから”

“そこにない価値”を見出す先見性でヒットブランドを量産。「おぼん de ごはん」のビー・ワイ・オー代表取締役社長・中野耕志氏の「視点と視野」の秘密に迫る

―数々のブランドを創出したヒットメイカーとしてビー・ワイ・オーを引っ張ってきた中野社長は2021年に代表取締役社長に就任しましたが、その頃はどのような気持ちでしたか?

中野氏:コロナ禍真っただ中での就任だったため、実はすごく不安でもあったんです。けれども、3500人の従業員をのせた船の長になったわけだから、彼らに対して「先がある」ということを示し続けなければなりません。今までの常識を覆し、今まで不可能だと思っていたことを疑い、できない理由を度外視して、組織改革に全力を費やしてきました。その甲斐あってか、今年の3月頃からようやく数字が戻り始めて、続けてきた改革が実を結び始めていることも実感しています。
特に、ウチは居酒屋業態の会社としては珍しく、デベロッパーとのつながりが強いことも、コロナを乗り切れた要因のひとつだと思います。今年1年間をいい状態で駆け抜けることができれば、その後、ビー・ワイ・オーとしてやるべきことにチャレンジできると思います。

―ビー・ワイ・オーとしてやるべきこととは?

中野氏:食のビジネスに携わる企業として、在り方を示していくことです。 コロナ禍は、本当に多くのことに変化をもたらしたと思います。お客様の価値観や行動原理、来店の動機は変わったし、DXによる自動化も一気に進んだ。そういう時代に入って、飲食企業は今までのように店舗数を増やしていくだけでは通用しない。実際、私たちも「いつまでに何店舗達成させる!」といった目標は今まで持ったことがないですし、今後もそういった展開をすることがあまり想像できません。

―多店舗展開で広げていくのは、時代に合わなくなってきたのかもしれませんね。

中野氏:では、我々飲食企業の存在意義ってなんだろう、と考えたら、やはりどこまでいってもコミュニケーションビジネスであることだと思うんです。それは、私たちとお客様のコミュニケーションであったり、飲食企業同士のコラボレーションであったり、他業種からの飲食企業参入者が持って来た新しい価値観であったり。自社だけに留まらず、社内外の様々なアイデアやノウハウを取り入れて柔軟に成長して、新しい価値を創出し続けていく。
例えば、弊社は多くの方々から「商業施設でたくさんヒットブランドをつくっている」という印象を持っていただいているのですが、その背景には、依頼をしてくれるデベロッパーのマーケティング力があるんです。彼らは、店とか建物とか、そういう狭い範囲ではなく、その周辺エリアとか街全体といった、私たちよりもはるかに広い視点と視野で、ものを見ているわけですね。一方、私たちはいくつもブランドを作ってきた経験と技術がある。彼らのマーケティング力と、私たちの技術が掛け合わさることで、新しい価値が生まれる。このような、足し算ではなく掛け算の展開を、これからも続けていきたいと思います。

―では最後に、社長自身の展望・ゴールを聞かせてください!

中野氏:私自身はゴールを決めて動くタイプではないんです。新しいものや面白いものを常に探している。人と話しているとき、街を歩いているとき、どんなときでも何かを見つけようとする癖がついている。そういうタイプなんです。ですので、コロナ禍を乗り越えつつある今、「コロナ禍以前に戻る」という選択肢はありません。コロナ禍前とは全く違う、新たな1ページをワクワクしながら開き続けていきたいと思っています。

株式会社ビー・ワイ・オーについて

事業内容:飲食店の経営
HP:https://byo.co.jp/

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