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飲食店M&Aの成功は「PMI」に左右される! 契約後の重要なプロセスとポイント
2020年01月29日

M&Aで買い手が飲食店を買収する場合、契約して譲受すれば終わりというわけではありません。自社と買収した店舗で経営方針やノウハウなどをすり合わせ、統合する必要があります。この譲受後の統合プロセスを「PMI」と呼び、M&Aの成功を大きく左右します。
M&AにとってかかせないPMIとは?
PMIはPost Merger Integrationの略語で、日本語で「合併後の統合」を指します。計画通りの収益を上げるためにはPMIを実施し、2社間のビジョンや制度、会計、システム、取引先などを無理なく統合することが重要になります。
PMIを十分に行わない、あるいは実施すらしない企業もありますが、これは非常に危険です。企業間の理念や人事評価制度をきちんと合わせられないと、齟齬が生じて経営陣やマネージャーが離職してしまったり、社員同士の不満が噴出して組織に乱れが生じたりする可能性があるためです。
また、制度・規律が上手く統合できないままに経営を続けると、売上管理や顧客管理、雇用管理などの情報をきちんと連携できないままになってしまい、顧客情報が漏洩するなどのトラブルが起こってしまうことも考えられるでしょう。巨額の損失になったり、社会的な信用を失ったりすることもあり得ます。

PMIの具体的なプロセス
では実際に、PMIをどのように進めれば良いのでしょうか。時間軸と実施内容に分けて説明します。
最終譲渡契約書が締結された日を一般的に「Day0」、M&Aの譲渡を完了させ、最終的な手続きを行うクロージング当日を「Day1」、そして統合から100日後を「Day100」と呼びます。この100日間がM&Aを成功させる最も重要な期間であり、PMIの山場です。
「Day0」から「Day1」までは数週間から数カ月の空白期間があります。この期間中に、買収企業は「100日プラン」を策定するのが一般的です。統合後の最も重要な期間であるこの100日間に何を達成するのかを決めておきます。
企業や事業の規模にもよりますが、100日間にやっておきたいことは主に以下の4つです。
■判断基準の一致
企業のビジョンや理念はさまざま。セキュリティや行動規範に関するルールもまったく違うことでしょう。両社の判断基準と行動規範をすり合わせ、足並みをそろえる必要があります。
■目指すべきゴールの設定
KPIの落とし込みも重要です。例えば、社員が追うべき数字は売上なのか、営業利益なのかで注力するポイントは異なります。目標の立て方とその根拠となる考え方も企業によって一致しません。
■従業員のモチベーション管理
店舗や企業にとって重要な人物が離職しないためにも、人事評価やモチベーションを管理できるようにしましょう。買収前に評価されていた項目が、買収後にまったく考慮されなくなると、不満も出てきてしまいます。特に飲食店のM&Aは、店舗だけでなくそこで働いている社員を迎え入れるという側面も持っています。社員が離職しないよう心を配ることが、統合の成功を左右します。
■組織を円滑に動かすためのインフラの整備
システムや取引先などを最適化することも、重要な要素の一つ。仕入れ先や導入しているサービスを改めて検討し、取捨選択しましょう。
PMIを成功させるためのポイント
引継ぎによって入社してくれた社員は、身構えていることが多いです。そんな中に分け入って統合作業を進めるのは、そう簡単なものではありません。だからこそ、PMIを成功に導くポイントは、ずばり人選に集約されます。どんな人物にPMIを任せるべきなのかを考えましょう。
まず、コミュニケーション能力に長け、経営陣やマネジメント層、現場の社員を取りまとめる調整力を持っている人が望ましいです。さらに、100日プランを一つひとつ確実に進める管理能力も問われます。
能力だけでなく地位(ポジション)も成功要因の一つ。経営陣に問題点や課題、意見をしっかりと言える立場にいる人でなければ、PMIを円滑に進めることは難しくなります。
外食企業は企業風土の違いが如実に現れる業界です。考え方の違う人々をまとめ、計画どおりのシナジーを出すためには、PMIを行うことが大切。どんなに小さな企業や店舗の買収であっても、統合作業を怠ることなく進めることがM&Aの成功に繋がります。また、PMIには絶対的な答えがないため、PDCAを実行し、事業間シナジーが生まれるまで何度でも行うことが大切です。
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