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飲食店をM&Aで売却した後、経営者や従業員はどうなる? 譲渡後の選択肢と注意点
2021年05月12日

飲食店オーナーがM&Aによって店舗を売却する際、経営者や従業員がどうなるのか不安を覚えたことはありませんか?「経営者は会社に残ることができるのか」「買収された後の従業員の待遇はどうなるのか」「現場での働き方は大きく変わってしまうのか」など、気になることがたくさんあるのではないでしょうか。今回は店舗を譲渡する際に経営者や従業員はどうなるのか、選択肢や注意点を解説します。
買収後も経営者が会社に残るメリットとは?
事業承継以外で会社を譲渡した場合、売却した元オーナーが会社に残ることは可能です。ただし、買収した企業が元オーナーに対して残ることを望んだ場合に限ります。
店舗や企業を譲渡する目的は、後継者がいないことによる事業承継だけではありません。資本力のある会社で成長を遂げたいといったケースもあります。その場合、買収した会社も経営に参画してほしいと考えるケースは多いです。
例えば、『しゃぶ菜』などを展開するクリエイト・レストランツ・ホールディングスは、『磯丸水産』のSFPダイニングや『つけめんTETSU』のYUNARIなど多種多様な会社や店舗を買収してきました。買収された多くの会社で、社長はそのまま在籍しています。クリエイト・レストランツはグループ連邦経営を推進しており、買収前の企業風土や文化を重んじる方針を取っています。
資本力のある会社に買収されたことで経営は安定し、グループ内の会社同士での交流が図りやすくなるため、社長として残るメリットが高くなるわけです。社長として残るのではなく、取締役などとして経営をサポートすることもあります。例えばオーナーシェフであれば、料理長として技術を高めることができます。資金繰りや連帯保証といった重荷が外れるため、好きな分野に集中できるというメリットもあります。

事業譲渡の場合は退職金が出ない?
買収した企業の意向にもよりますが、M&A後に急激に待遇が変わる例は少ないです。これは、買収・売却する会社がM&Aでキーマンや従業員が離反することを最も恐れているためです。基本的には、買収されたことで従業員がリストラをされるようなことはありません。
多くのM&Aで、買収が成立する前の交渉段階で給与、福利厚生などの条件を契約に盛り込みます。買収した会社は契約内容に沿った雇用を継続します。
ただし、経営権は買収した会社が持っています。そのため、いつまでも当初の待遇が保証されているわけではありません。人事評価は新たな会社の基準となり、厳しい競争下に置かれる可能性もあります。また、買収されたことで見るべき店舗が増えるなど、仕事量が増えることもあります。従業員は新たな環境に適応する心構えが必要です。
M&Aでは、買収した会社を統合するPMIというプロセスが存在します。人事評価制度を含めた経営上の重要項目を、買収した会社と統合するものです。通常は緩やかに行われるため、すぐに評価制度が変わることはありませんが、いずれは親会社のものと統合される可能性があることに注意しましょう。
企業買収の場合、退職金もそのまま買収した会社に移行します。しかし、事業譲渡の場合はその限りではありません。買収した企業にもよりますが、退職金が出ないということもありえます。そもそも事業譲渡の場合は新たな雇用契約を結ぶ必要があり、一度退職して新たな会社に入り直すという意味合いが強くなります。
M&Aは従業員にとって理解が追い付かないことも多く、事前に十分な説明をすることが重要です。これは売却する側も買収する側も配慮するべきポイントとなります。
経営に必須な人材を確保する「キーマン条項」
M&Aには、経営に必要不可欠な人材の離反を防ぐキーマン条項というものが存在します。名シェフや経営企画、マーケティングなどの優秀な人材は、退職すると企業価値が著しく下がることがあります。それを防ぐため、買収後も一定期間は会社に残ることを約束するキーマン条項を盛り込むのです。通常、3年程度を設定することが多いようです。キーマン条項は期間のほかに、待遇や裁量権なども規定します。
厚遇されることのある一方で、違反した場合は違約金などが発生することもあるため、注意が必要です。
現場の働き方は大きく変わる?
買収後に働き方が変わる可能性は高いです。特に業務量が増えることが考えられます。
例えば、1店舗~2店舗を展開する会社が多店舗展開する会社に買収された場合、ヘルプに回る店舗数が増えることもあるでしょう。あるいは、資本力がある会社はIT化が進んでいるケースが多く、新たなシステムの導入を学んだり、現場のスタッフに覚えさせたりといったの新たな業務も発生します。
ただし、資本力のある会社は属人的な仕事を排除する傾向があります。そのため、「〇〇さんしかできない仕事」といったものは少なくなるでしょう。
M&A後の店舗の在り方は、経営者も従業員も気になるところ。買い手とのすり合わせをきちんと行い、納得のいく譲渡を行いましょう。
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