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新型コロナで飲食業界の後継者不足問題はどう変わったか? 現状と今後の展望
2021年06月10日

新型コロナウイルスの感染拡大で、後継者不足問題が深刻化しています。帝国データバンクの「後継者不足率動向調査2020年」によると、2020年の飲食店の後継者不足率(後継者不在の会社や店舗)は71.6%。全業種の65.1%と比較すると極めて高い水準となっています。後継者不足を解消し、新たな時代でも飲食店が生き残る術はないのでしょうか。事業承継を機にコロナ禍を乗り越える準備を整えた飲食店の事例や、後継者不足問題解消のヒントとなる情報をお伝えします。
コロナ禍で後継者不足問題はより深刻に
もともと後継者不足率が高かった飲食業界ですが、コロナ禍でより深刻に。2019年の71.1%から0.5ポイントアップしています。新型コロナウイルスの感染拡大によって業績が悪化する会社や飲食店が増加しており、収束の見通しが立たない中で、親族などが進んで事業を承継する機運が遠のいています。
また、2020年は飲食店の倒産件数が780件(帝国データバンク「飲食店の倒産動向調査2020年」)となり、過去最多となりました。後継者の不足、業績の悪化、新常態での経営難易度の高さが背景となり、廃業を選択する経営者が増えています。
厳しい状況ながら、M&Aによる引き継ぎも
飲食業界にとって厳しい状況が続いていますが、それでも後継者不足を何とか解決しようという動きは多く見られます。その一つが、M&Aを利用した第三者による事業の引継ぎです。
例えば、『カレーハウスCoCo壱番屋』を運営する壱番屋は、2020年12月に『成吉思汗(ジンギスカン)大黒屋』の運営をする有限会社大黒商事を買収。大黒商事の経営者が高齢化したことを背景に、多店舗展開が実現できる相手として壱番屋を選びました。壱番屋は国内外で1,473店舗(2021年2月末)を運営するチェーン展開ノウハウを活かして、『大黒屋』の全国展開を視野に入れています。
M&Aは仲介会社やマッチングサイトが増えており、難しい選択肢ではありません。また、事業承継としてのM&Aは、自治体も後押ししています。

引継ぎM&Aを後押しする補助制度が増加
M&Aに仲介手数料などの経費がかかるのは事実です。しかし、政府や自治体はM&Aを促進する補助制度を設けています。代表的なものが「経営資源引継ぎ補助金」です。これは新型コロナウイルスの感染拡大で、業績悪化が懸念される中小企業の経営資源の引継ぎを促進することを目的としています。2次募集は2020年10月で終了となりましたが、3回目の募集が始まる可能性は高いでしょう。
自治体でも、助成金でM&Aによる事業承継をバックアップしています。東京都中小企業振興公社の「事業承継支援助成金」です。こちらも令和2年度の募集は締め切っていますが、コロナ禍で3回目の募集がかかるとみられています。
引継ぎ後の経営支援も多く登場
政府や自治体は事業承継後の経営支援も本格化しています。例えば、独立行政法人中小企業基盤整備機構は、47都道府県に「よろず支援拠点」を設けています。
また、東京都中小企業振興公社は、新型コロナウイルス感染拡大に伴って売上が大きく落ち込んだ中小飲食事業者が、新たなサービスを提供することで売上の確保を支援する業態転換支援事業として助成金を用意。助成限度額は100万円です。特にテイクアウトや宅配、移動販売を始める事業者に向けた投資額を支援するものです。
事業承継後に事業拡大に向けた取り組みをサポートする「事業承継補助金」もあります。現在は募集を締め切っていますが、今年度も実施される見込みが高いです。設備投資や退店にかかる費用を一部負担し、事業拡大をバックアップしてくれる内容となっています。
コロナ禍で飲食業界は苦境に立たされ、後継者不足問題もより深刻になってきています。しかしながら、第三者によるM&Aを利用した引継ぎや、それらを支援する政府の動きも多く見られるようになりました。後継者不足に悩む場合は、M&Aや支援制度を活用してみるのも良いのではないでしょうか。
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