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「売上右肩下がり」の居酒屋を2500万円で売却! 期限内に希望価格で成約した理由とは? 飲食店M&Aの「舞台裏」に迫る!第2回

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2026年07月31日

「売上右肩下がり」の居酒屋を2500万円で売却! 期限内に希望価格で成約した理由とは?

飲食店の出口戦略の一つであるM&A。今回は、大阪市内で大衆居酒屋2店舗を営んでいた60代オーナー様が、売上減少や助成金申請に関するペナルティなどの課題を開示しながら、希望価格2,500万円で株式譲渡を成立させた事例を紹介します。トップ面談を実施した全ての企業から満額の提示を受けた理由や、従業員の雇用を重視した買い手選び、短期間で引き継ぎを完了させたポイントを聞きました。

「売上右肩下がり」の居酒屋を2500万円で売却! 期限内に希望価格で成約した理由とは?

売上の減少傾向に不安を抱え、65歳を前に引退を考えていた60代のオーナー様。後継者不在に加え、助成金申請に関するペナルティや労務上のリスクも抱えていました。

飲食のM&Aの豊富なノウハウを持つ株式会社ウィットは、こうしたネガティブな情報を買い手候補にあらかじめ開示。リスクを価格や条件に織り込んだ上で売却活動を進めた結果、トップ面談に進んだ3社全てから、希望価格である2,500万円の提示を受けました。
今回は、株式会社ウィットのシニアアドバイザー・正野浩基さんに、課題のある会社を希望条件で譲渡するために行った準備と、買い手選びの舞台裏を伺いました。

【今回の案件概要】

項目 内容
譲渡側(売り手) 大阪市・大衆居酒屋2店舗/オーナー:60代前半
譲受側(買い手) 不動産など複数の事業を手がける法人。飲食店のFC加盟経験あり
譲渡方法 対象会社の株式譲渡
売却の背景 後継者不在、65歳を前にした引退意向、売上低下への不安
主な承継内容 会社が運営する2店舗、屋号、店舗運営、従業員の雇用関係など
売却価格 2,500万円(希望価格通り)


正野浩基氏

■PROFILE 正野浩基(株式会社ウィット・シニアアドバイザー)

飲食業界を中心に、中小企業のM&Aや事業承継を支援。売り手・買い手双方の実務支援に携わり、会社や店舗が抱える課題を整理した上で、譲渡条件の設計や買い手候補の選定を行っている。専門用語をかみ砕き、M&Aに不慣れな経営者にも理解しやすく伝えることを心がけている。

■株式会社ウィットとは?

2007年に設立された、飲食業界に特化したM&A仲介会社。小規模な1店舗の案件から、多店舗を運営する企業、食品製造会社などの案件まで対応している。
現在は「飲食店ドットコム」を運営する株式会社シンクロ・フードの100%子会社。飲食業界に特化して蓄積してきた知識とネットワークを生かし、売り手と買い手のマッチングや、譲渡に向けた実務支援を行っている。

飲食店ドットコムM&Aでは、飲食事業を売却したい方と、譲り受けたい方の出会いから引継ぎをサポートさせていただきます。

<シリーズ:飲食店M&Aの「舞台裏」に迫る!>

第1回 月商300万超の人気洋食店を”異業種”のラジオ局が購入した理由とは?

目次



売上の減少と後継者不在。60代オーナーが売却を急いだ理由


── 今回ご紹介いただくのは、長年営業されてきた大衆居酒屋の案件ですね。オーナー様は、なぜ売却を検討されたのでしょうか?

正野氏: 今回のオーナー様は65歳を迎える方で、大阪市内のターミナル駅周辺と商業施設内で、大衆居酒屋を2店舗運営されていました。

主な譲渡理由は「後継者不在」で、オーナー様には成人したお子様がいましたが、従業員の管理が必要な飲食店経営の大変さや、業界の先行きなどを考え、親族内での承継は行わないと判断されていました。
御本人が長年の経営で疲れを感じていたことも、売却を考えた理由の一つです。

── 年齢的な節目も関係していたのでしょうか?

正野氏: はい。65歳を迎える前に会社を売却し、現金化した上で引退したいという希望がありました。

また、当時の役員報酬を受け取りながら厚生年金を受給する場合、受給額に影響することを懸念されていました。
すでに住居を購入され、お子様も社会人になっていたため、今後はこれまでのような収入を得続ける必要はないと考えていたようです。

── 会社の業績は、どのような状態だったのでしょうか?

正野氏: 決算書上は営業赤字でしたが、その数字だけでは会社の実態を正確に判断できません。
オーナー様ご夫妻は、現場にほとんど入っておらず、譲渡後には不要となる役員報酬を会社から受け取っていました。私的な経費なども調整して計算すると、年間の実質的な収益力は約700万円あると見込まれました。

つまり、店舗自体が直ちに立ち行かなくなる状態ではなかったんです。

一方で、大きな問題だったのが、月次の売上が右肩下がりになっていたことです。長年ブラッシュアップできていなかった低価格帯の居酒屋業態が古くなりつつある中で、原価も上昇し、人員管理の負担も大きくなっていました。
立地は非常に良く、長年の営業による認知もありました。それでも売上が下がり続けていることに、オーナー様は強い不安を感じていました。

── まだ収益力が残っているうちに売却したかったのですね。

正野氏: 売上が下がっている会社は、投資回収期間が短く見られる傾向があります。

オーナー様自身も、「このまま売上が下がり続ければ、実態としても赤字になり、会社の価値がさらに下がってしまうのではないか」という恐怖を感じていました。
もう少し時間をかければ、より高く売却できた可能性はあります。ただ、今回は価格を上げることよりも、一定の金額を確保し、希望する時期までに確実に売却することを優先しました。

助成金のペナルティも先に開示。リスクを価格に織り込む


── 売却活動を始めるにあたり、どのような準備をされたのでしょうか?

正野氏: この案件の特徴のひとつが、オーナー様が会社のネガティブな情報を最初から全て開示していただいたことです。

売却を検討する経営者の中には、少しでも会社を良く見せたいと考え、問題を表に出したがらない方もいます。しかし、後から問題が判明すれば、買い手の不信感につながります。
今回のオーナー様は、「もう売却すると決めている。後から問題になるくらいなら、最初から全て伝えよう」という姿勢でお取組みいただきました。

── 具体的には、どのような問題があったのでしょうか?

正野氏: コロナ禍に、外部のコンサルタントを通じて行った助成金申請に関するペナルティがありました。オーナー様としては、コンサルタントの説明を信じて申請したという認識でしたが、結果として対象会社にもペナルティが生じていました。

加えて、従業員の未払い残業代が発生する可能性など、労務面のリスクもありました。

── 買い手からすると、かなり気になる情報ですね。

正野氏: そうですね。ただし、問題があること自体よりも、それをいつ、どのように伝えるかが重要です。

こうした情報が、買い手による買収監査の段階で初めて発覚すれば、「ほかにも隠していることがあるのではないか」と疑われます。値下げ交渉や、取引の中止につながる可能性もあります。
そこで今回は、買い手に提示する案件概要書を作る段階から、助成金に関するペナルティや想定の追加人件費を明記し、事前に譲渡価格や条件に織り込みました。

── 単に「正直に伝えた」というだけではなく、リスクを含めて条件を設計したのですね。

正野氏: その通りです。

ネガティブな情報を開示しても、価格がリスクを無視した高い金額であれば、買い手は納得しません。反対に、考えられるリスクを整理し、価格に反映しておけば、買い手も「この条件なら検討できる」と判断できます。
今回の2,500万円という価格は、ネガティブ情報を伏せたまま設定した金額ではなく、想定されるリスクを含めてオーナー様と話し合い、損をしない範囲で設定した、現実的な金額でした。

説明を受けているイラスト

約20〜30社に直接案内。3社が希望価格を提示


── ネガティブな情報を開示したことで、買い手探しは難しくなりませんでしたか?

正野氏: 結果としては、3社がトップ面談に進み、その全てから希望価格である2,500万円の意向表明を受けました。

ただし、「ネガティブな情報を正直に伝えたから、満額で売れた」と単純に考えるべきではありません。
店舗の立地が良かったこと、長年の営業で固定客や認知を獲得していたこと、オーナーが現場に入らなくても店舗を運営できる体制ができていたことも、高く評価されました。

── 買い手候補は、どのように集めたのでしょうか?

正野氏: 今回はM&Aの情報サイトなどには掲載せず、当社から候補者へ直接案内しました。案内した先は、おそらく20〜30社ほどです。

飲食業界に特化しているため、どの企業が新しい店舗を探しているのか、どの企業が異業種への参入を検討しているのかといった情報を、ある程度把握しています。
その中から、この案件に関心を持つ可能性のある候補者へ声をかけ、最終的に3社がトップ面談に進みました。

── 3社は、どのような買い手だったのでしょうか?

正野氏: 2社は飲食店を10~30店舗展開する企業で、残る1社が、少人数で不動産などの事業を手がける法人でした。本業は飲食ではありませんが、飲食店のフランチャイズに加盟した経験があり、飲食事業についても一定の理解がありました。

3社とも、意向表明の段階では希望価格を提示しました。そのため、最終的な判断では、金額以外の条件が重要になりました。

同業の飲食企業ではなく、異業種の買い手を選んだ理由


── 最終的に、オーナー様は異業種の買い手を選んだそうですね。なぜ、飲食店経営の経験が豊富な企業を選ばなかったのでしょうか?

正野氏: 最も大きな理由は、従業員の働き方です。

今回の店舗には、60代を中心としたベテランスタッフが複数在籍しており、勤続年数の長い方も多く、現在の店舗運営を支えている重要な存在でした。
同業の飲食企業2社は、買収後に自社の業態へ変更することを基本方針としていました。飲食店経営の経験が豊富だからこそ、「自分たちの業態や仕組みに変えた方が、収益を改善できる」と考えていたのだと思います。

── オーナー様は、それを心配されたのですね。

正野氏: はい。

店舗の業態や運営方法が急に変われば、スタッフは新しいメニューや作業手順、管理方法を覚えなければなりません。
オーナー様は、「長年働いてくれた高齢のスタッフが、急激な変化についていけず、辞めることになってしまうのではないか」と心配されていました。

もちろん、事業を続ける上で、将来的に業態を変更せざるを得ない可能性はあります。ただ、少なくとも譲渡直後は、現在の店舗と雇用をできる限り維持してほしいという希望がありました。

── 異業種の買い手は、どのような考えだったのでしょうか?

正野氏: 「まずは現在の屋号や運営方法を維持し、スタッフの力を借りながら続けたい」という考えでした。

飲食店のフランチャイズ加盟経験はありましたが、この店舗をすぐに別の業態へ変更するのではなく、現状を引き継ぐことを優先していました。
オーナー様は、金額だけでなく、「この人であれば、従業員に大きな負担をかけず、今の店舗を残してくれる可能性が高い」と判断し、この買い手を選びました。

密なコミュニケーションが短期間での引き継ぎを可能に


── 成約後の引き継ぎは、どのように進めたのでしょうか?

正野氏: この買い手の方は過去にもM&Aを経験しており、オーナーが変わった後に、従業員と信頼関係をつくることの重要性を理解されていました。

従業員と一度面談して終わりではなく、日程を決めて懇親会を開き、一緒に飲みに行く機会も設けていました。
新しい経営者が一方的に方針を伝えるのではなく、まずは同じチームとして働いていく姿勢を見せたことが、従業員の安心につながったのだと思います。

── 実務面の引き継ぎはいかがでしたか?

正野氏: オーナー様の奥様が、店舗の仕込みやバックオフィス業務の一部を担当していました。

そこで、奥様が行っていた業務を一つずつ分解し、「どの仕事を、誰が、どのように引き継ぐのか」を買い手と一緒に整理しました。
店舗の営業だけでなく、発注や取引先との連絡など、表からは見えにくい仕事もあります。こうした業務が曖昧なままだと、譲渡後に店舗が回らなくなる可能性があります。

買い手の方が細かい業務まで理解しようとし、オーナー様とも密に連絡を取ったことで、引き継ぎは想定以上に早く進みました。

握手をしているイラスト

── どのくらいの期間を想定していたのでしょうか?

正野氏: 当初は、1か月程度かかるのではないかと考えていました。

しかし、実際には2週間余りで、奥様が担当していた業務を含めて、主な引き継ぎが完了しました。一定期間の顧問契約も結んでいましたが、契約期間の後半には、奥様がほとんど勤務しなくても運営できる状態になっていたそうです。

── 売買間の関係も良好だったのでしょうか?

正野氏: クロージング後も、私を含めた3人で飲みに行きました。契約が終わったら関係も終わりというのではなく、譲渡後もコミュニケーションを続けたことが、スムーズな運営につながったと思います。

M&A成功のポイントは「条件の整理」と「買い手候補」


── 今回の事例から、飲食店のM&Aを成功させるために重要なことを教えてください。

正野氏: 今回の成功要因は、大きく二つあります。

一つ目は、売却条件を早い段階で整理できたことです。
オーナー様が何を優先するのかを確認し、希望する金額、売却時期、従業員の雇用について、あらかじめ方向性を決めました。
助成金のペナルティや未払い残業代のリスクなども隠さず、最初から条件に織り込んでいます。買い手から後で指摘されて値下げされるのではなく、問題を踏まえた価格として2,500万円を提示できたことが重要でした。

── もう一つは、どのような点でしょうか?

正野氏: 二つ目は、案件に合った買い手候補へ、早い段階で案内できたことです。

飲食店を売却するからといって、買い手を飲食企業だけに限定する必要はありません。
今回のオーナー様は、従業員の雇用や現在の店舗を残すことを重視していました。そのため、すぐに自社業態へ変更する飲食企業だけでなく、異業種の買い手も含めて案内しました。
買い手が何を目的としているのか、売り手が何を残したいのかを整理し、双方の希望が合う相手を探すことが必要です。

── アドバイザーには、どのような役割が求められるのでしょうか?

正野氏: 単に買い手を紹介するだけではありません。

会社の財務状況、従業員の状況、契約関係、潜在的なリスクなどを確認し、買い手が検討できる状態に整理することが必要です。
売り手にとって都合の良い情報だけを並べるのではなく、買い手が買収監査で確認するポイントを予測し、問題になりそうな部分を先に洗い出します。

その上で、金額、時期、従業員の雇用継続、運営業態の維持などのうち、何を最も重視するのかを確認し、条件に合う買い手を探します。
「自分のお店に買い手がつくのか分からない」「問題を抱えているため、売却できないのではないか」と考えている場合でも、まずは状況を整理することが大切です。
課題があるから売れないとは限りません。課題を隠さず、価格や条件に反映させ、適切な買い手に届けることで、売却できる可能性は十分にあります。

今回の事例では、リスクを含めて価格と時期を固めたことに加え、約20〜30社へ直接案内できる買い手ネットワークが成約につながりました。

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飲食店を長く経営していると、年齢や体力、後継者、従業員の雇用、売上の変化など、さまざまな理由から「いつまで経営を続けるべきか」と考える時期が訪れます。

店を閉めることだけが、経営を終える方法ではありません。会社や店舗を第三者へ引き継ぐことで、従業員の雇用や、長年育ててきた屋号、取引先との関係を残せる可能性があります。
一方で、全ての店舗にとってM&Aが最善とは限りません。店舗の状況やオーナー様の希望によっては、別の方法が適している場合もあります。

飲食店ドットコムでは、オーナー様の年齢やご家族の状況、従業員への思い、希望する売却時期などを伺った上で、飲食店の出口戦略に精通したアドバイザーが、今後の選択肢を一緒に整理します。
ご相談内容や店舗の情報は秘密厳守で取り扱います。

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