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ブランドや職人の魅力を重視したM&A! PAPABUBBLE JAPANが仕掛ける新たな方向性「お菓子屋さんのプラットフォーム」とは

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2021年10月20日

2003年にバルセロナで産声を上げ、2005年に世界の2号店として中野に上陸したアート・キャンディ・ショップ『PAPABUBBLE』。2017に創業者の引退による経営者の交代があり、現在、第2の創業期とも呼ぶべき、変革の時を迎えている。今回は、2018年にPAPABUBBLE JAPANの代表取締役CEOに就任した横井 智氏にインタビュー。M&Aの経緯や創業者から引き継いだ想い。今後の展望などを伺った。

ブランドや職人の魅力を重視したM&A! PAPABUBBLE JAPANが仕掛ける新たな方向性「お菓子屋さんのプラットフォーム」とは 横井氏

横井 智氏

1973年愛知県生まれ。東京大学思想文化学科を卒業後、帝人株式会社に入社。経営への関心を高め、戦略コンサルティングファームの米国モニター・グループ(現モニターデロイト)に参画後、2003年に設立間もないソネット・エムスリー(現エムスリー)に入社。通算14年間の在籍期間で取締役に就任する一方、新規事業立ち上げなどを担った。2018年、PAPABUBBLE JAPANの代表取締役CEOに就任。現在16店舗を運営中。また、2019年には老舗洋菓子店『ヴィヨン』の事業も承継した。

数奇な巡り合わせが運んできた、M&Aの案件

ブランドや職人の魅力を重視したM&A! PAPABUBBLE JAPANが仕掛ける新たな方向性「お菓子屋さんのプラットフォーム」とは 中野の『PAPABUBBLE』。実は横井氏はオープン前の店づくりの段階から目にしていた

-横井さんが『PAPABUBBLE』の運営を引き継いだのは2017年とのことですが、その経緯はどのようなものだったのですか?

横井:当時、私はエムスリーで経営をしていた頃で、ヘッドハンターがM&A対象企業の経営者募集の案件を持ってきた形だったんです。その時点では、買収先がどこなのかは伏せられていて、「とある菓子店」とだけ聞かされていました。私自身、お菓子は大好きで、色々なお店を巡り歩いていたので、案件に対して純粋に興味深かったですね。

-『PAPABUBBLE』もご存知で?

横井:はい。実は私は『PAPABUBBLE』が開業する2年前に中野へ引っ越していたんです。そのため、『PAPABUBBLE』がオープンするまでの様子もこの目で見ていたし、開業後も、今まで日本になかった新しいアプローチのビジネスモデルに惚れ、すっかりファンになっていたんです。そういった経緯もあって、ヘッドハンターとの面接の際、「気になっている菓子店は?」と聞かれ、迷わず『PAPABUBBLE』と答えました。さらに、店舗の特徴、強み、課題などを経営的目線からお話ししたところ、すぐさま創業者の菅野清和さんと繋げていただく流れとなりました。

-すごい運命の巡り合わせですね! 菅野さんとはどのようなお話をされたのですか?

横井:私が考える『PAPABUBBLE』の価値観ですね。何をもって“クール”とするのか。どのようなお客さまに来てほしいのか。そういったブランドのイメージや強み。そして、現状の課題と、それに対する解決案。私が考えていることをすべて正直にお話ししました。すると、それらの意見はすべて菅野さんの考えとリンクしていたんです。そして後日、菅野さんは私に会社の運営を任せる決心をされました。

経営基盤の充実が承継後の改善ポイントに

ブランドや職人の魅力を重視したM&A! PAPABUBBLE JAPANが仕掛ける新たな方向性「お菓子屋さんのプラットフォーム」とは 創業者・菅野清和氏のセンスが光る、細部に至るまでアーティスティックな内観

-実際に、『PAPABUBBLE』が抱えていた問題点というのはどのようなものだったのですか?

横井:一番の課題は、個人商店から会社組織への転換、つまり経営基盤の充実です。この当時、『PAPABUBBLE』は10店舗を展開。ブランドとしての知名度も高くなりつつある時期だったのですが、菅野さん自身は多店舗展開に悩みも感じていたそうです。彼は一流のアーティストであり職人で、ブランディングを得意としていました。しかし、店舗が増え、いろいろとやりたいことができなくなっていたのかもしれません。そこで、誰かに譲って経営をしてもらうことで、ご自身は新しいチャレンジに進み、後継者に『PAPABUBBLE』のブランドを守って発展させて欲しいと、承継を決意したそうです。

-実際に経営を引き継いだあとは、どのように感じましたか?

横井:やはり、今後の展開の方向性について悩みました。『PAPABUBBLE』は海外発祥のブランドであるため、日本ではあまり馴染みのない、尖ったブランドイメージが強みです。万人に好かれる店ではなく、アンテナの高い人が好む店。駅から少し離れたところにあって、わざわざそこを目指して出かける店。そういう、「知る人ぞ知る店」というブランディングだったんです。一方で、私が引き継いだ時点ではすでに商業施設への出店も行っていました。この流れはある意味、従来の『PAPABUBBLE』のブランディングとは少し外れた、より多くの方に知ってもらう為の店舗展開です。

-コアなファン向けのニッチな店でいくか、より多くの人への認知を広げていくか、相反するところですね。結論は出たのですか?

横井:正直、今でも模索中で答えは出ていません。ただし、運営会社としての弊社の規模や強み、『PAPABUBBLE』自体のブランド力、実績を考慮すると、大規模な展開を行うことは現実的ではないはずです。商品も、誰もがみんな日常的に買う物ではなく、好きな人だけ手に取る、いわば嗜好品のようなものであると思うんですね。とはいえ、その層ばかり狙うのでは広がりに限界がある。そこで、現状での方向性としては、全国各地どこの街も網羅して出店するのではなく、各都市の主要な都市だけ出店するような、比較的ゆるやかな成長を考えています。コアなファン層とそうでない層の両者をバランスよく取り込んでいく方向性ですね。

個人菓子店の経営基盤を作るためのプラットフォームビジネスを新たな事業展開の軸に

ブランドや職人の魅力を重視したM&A! PAPABUBBLE JAPANが仕掛ける新たな方向性「お菓子屋さんのプラットフォーム」とは “生粋のお菓子好き”を自称する横井氏。M&Aの原動力は、魅力ある菓子を後世まで残したいという気持ちからだ

-御社は2019年にバウムクーヘンで有名な老舗洋菓子店『ヴィヨン』もM&Aをしています。それについては、どのような狙いがあったのですか?

横井:『PAPABUBBLE』が堅実にゆっくり店舗展開を続けていっても、いつかは飽和点が来て事業としての成長が止まる瞬間が訪れます。そこを見据えて将来の展開を思案していたところ、ある仮説が立ちました。それは、個人の菓子店が抱える問題点のほとんどが、「経営基盤の弱さ」に集約されるのではないか。と、いうことです。
『PAPABUBBLE』のように、職人の技術やブランディングのレベルが高くとも、数字管理や営業力、店舗展開の方法といった経営面を不得手としている店舗は多い。それに対し、わたしたちは「経営基盤」という強みでカバーすることができます。店舗設計のノウハウ、原材料メーカーとのつながり、ロスや在庫管理、人事など。何より商業施設への出店もお手の物。それらを活かして、「お菓子屋さんのプラットフォーム」を担う。これを、店舗運営とまた別のアプローチの、新たな事業として展開しよう、と考えました。
そして、その方向性で行こうと社内で固まったときに、ちょうど案件として飛び込んできたのが『ヴィヨン』だったのです。

-そういった経緯があったのですね。『ヴィヨン』の案件はどのような課題があったのですか?

横井:職人の引退による、レシピの承継の問題です。実は、『ヴィヨン』創業者の大年 壮(さかえ)さんは、創業以来看板メニューであるバウムクーヘンのレシピを、一切誰にも教えてこなかったんです。しかし、ご自身が高齢になって一線を退こうと考えたとき、現状のままではレシピを残すことができない。「いっそ店を畳んでしまおうか」と悩みながらも、結果的にM&Aで事業を承継させる結論に至ったといいます。
そういった意味で、弊社はすでに数多くの優秀な職人を確保していたので、すぐにバウムクーヘンのレシピを引き継ぐことができるので、マッチングとしてはピッタリでした。ただ、正直な話をすると、私自身「こんなに魅力的なお菓子と技術が失われてしまうのは我慢ができない!」という想いが強かったことが本音ですね(笑)

承継後は、人と人のコミュニケーションに四苦八苦

-『PAPABUBBLE』と『ヴィヨン』、ふたつのブランドを買収したわけですが、引き継いでからの苦労はどのようなものがありましたか?

横井:やはり、人と人のコミュニケーションという部分です。例えば、承継後は前オーナーに店舗でレクチャーを賜るのですが、新しいスタッフに教えるべきところを、つい前オーナーご自身でこなしてしまうというシーンをよく目にしました。商品の陳列から看板の位置、値札の角度に至るまで、思い入れが強いんですね。
逆に、昔からいるスタッフさんが新しい提案を受け入れがたい。というケースもあります。
とはいえ、これらはどちらも致し方ないことだと思います。状況で言えば、「ある日、経営者が変わりました」ということ。簡単に切り替えるのはなかなか難しいことでしょう。私たちも、苦労というより経験だと捉えて、コミュニケーションを模索しています。

ブランド重視の店舗展開と、職人重視のブランド開発の二軸で広げていく

ブランドや職人の魅力を重視したM&A! PAPABUBBLE JAPANが仕掛ける新たな方向性「お菓子屋さんのプラットフォーム」とは 横井氏とPAPABUBBLE JAPAN COO執行役員の奥田将司氏。奥田氏は菓子づくりの経験もあり、「作り手視点からのアドバイスは心強い」と、横井氏は語る

-今後については、どのように考えておられますか?

横井:M&Aの方向性は、二軸に分けて進めていこうと考えております。
ひとつは、ブランド自体の経営基盤を固めて展開する方向性。これは、『PAPABUBBLE』や『ヴィヨン』のように、買収前の店舗がすでに強いブランド力を持っているケースです。
もうひとつは、職人の技術にフォーカスを当て、新たなブランドを作っていく方向性。こちらは、技術や知識が豊富だけれど、ブランディングや事業展開が不得手な個人(職人)をターゲットにしています。実は、8月から案件がひとつ進行中です。
また、M&Aの展開については件数よりも質を優先。質の高い菓子の買収や、逆に買収先に質の高い菓子を提供することで利益を作りながら、事業を進めていこうと思っています。

-では、M&Aに興味を持っている読者のみなさまに一言お願いします!

横井:買い手となる方は、「自分だけができることは何か」を考えるのがよいと思います。弊社の例で言えば、大手のように手広い展開をしない代わりに、その「ブランドの魅力」と「職人へのリスペクト」を尊重して、長期的な経営を目指すことはできます。そのブランドを好きな人は、100人に1人かもしれない。ならば、私たちがその100人に1人のファンと同じ気持ちでブランドと職人のファンになり、価値と魅力を伝えていく。そうすることで、希少なブランドの歴史が途切れることなく、後世に残していくことができる。その熱意と、それを可能にするための基盤は持っています。それこそが、弊社の「自分だけができること」だと言えるでしょう。また、菓子店の事業主さまには、ご自身のブランドや技術の希少性を自覚し、誇りに思っていただきたいです。作り続け、守ってきたものは、私も含め、多くのお菓子好きの人々の心を豊かにしてきたはずです。それが失われ、二度と目にすることがなくなってしまうことが、どれだけ悲しいことか。それを後世まで残していくために、M&Aという方法は大いに役立つものだと思います。

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