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アティックプラニング代表・五味美貴子氏が、自分の“好き”を詰め込んだ「屋根裏」から伝えたいこと

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2023年03月15日

2005年にオープンした“屋根裏部屋”をモチーフにしたカフェ「attic room」のヒットをきっかけに、直営多店舗の運営だけでなく、飲食店開業のコンサルティング、カフェスクール、デザイン事業など、幅広い事業を展開しているアティックプラニング(東京都渋谷区、代表取締役社長:五味啓氏)。新たなフィールドにも臆せず足を踏み入れ、結果を出し続けている同社の原動力は、創業者であり、取締役の五味美貴子氏の決断力と行動力にある。今回は、創業から現在に至るまでの事業展開の秘話、今後の展望などを伺った。

店舗出店、コンサルティングと幅広く展開するアティックプラニング代表・五味美貴子氏が、自分の“好き”を詰め込んだ「屋根裏」から伝えたいこと

<経歴>
五味美貴子 氏
大学卒業後、大手IT企業にシステムエンジニアとして入社。退社後、西麻布に第1号店「café chocolat」をオープン。その後、渋谷・恵比寿・新宿などに複数店舗をオープンし、株式会社アティックプラニングを設立。個人経営カフェから企業の店舗開発プロデュース、カフェ開業の専門学校講師など、カフェプロデュースに関わる事業を幅広く展開。

システムエンジニアから飲食店オーナーへ転身。自分の“好き”を集約した店づくりで多くのファンを獲得する

―創業の歴史としては、2003年9月に東京都に西麻布でドッグカフェ「café chocolat」で独立開業したことが始まりだったと聞きますが、きっかけをお伺いできますか?

五味美貴子氏(以下、五味):独立前は、大手IT企業でSEをしていたんです。当時はひたすら仕事に追われる毎日を過ごしていました。そんな中で、結婚をしたり、犬を飼い始めたりといった生活の変化があって、「何かに追われるのではなく、自分に合った生活を確立したい」と思ったのがきっかけです。飲食業自体は、大学時代にカフェのアルバイトで経験していて、その時の「楽しい」という気持ちが残っていました。SEになってからも料理を作るのが好きだったし、休みの日にコーヒーを飲む時間も好き。もちろん、新しく家族になった犬も好き。そんな、自分の“好き”を集めていった結果、「カフェ」という道が見えたんです。

―その後、2005年12月に渋谷で2号店となる「attic room」をオープンします。ここはビルの4階という飲食店舗としては不利な立地でありながら、多くのメディアに取り上げられ注目を集めました。この場所を選んだことには戦略的な狙いがあったのでしょうか?

五味:実は、偶然なんです(笑)。1号店が予想より好調に推移していて、「これは私ひとりの個人事業ではなく、しっかりと法人化して店舗展開をしよう」と思い始めるようになって。2号店の物件を探していたら、ある日、仲介業者の担当者から「渋谷に1階で45平米、家賃安めの物件がある」と連絡が来て、内見へ出かけたんです。着いてみたら、びっくり。すでに別の店が入っていたんですね。実は、担当者が見つけたのは同じビルの4階だったっていうオチで(笑)。どうりで渋谷にしては家賃が安すぎるなーと思ったんですよね。

―もしや、その4階の物件が、のちの「attic room」に?

五味: そうなんです。実際に物件を見た瞬間、「屋根裏部屋を作りたい」と閃いて。そうしたら、一見条件が悪そうに見えるこの物件が、なんだか魅力的に見えてきたんです。例えば、ビルにエレベーターがついていないから、店に着くまでに階段を上らなければならないという短所も、視点を変えれば本当にお店を好きな人だけが足を運んでくれるということになる。店舗側が打ち出したコンセプトに共感してくれるお客様の目的来店を狙う、いわゆるプロダクトインの店づくりができる。つまり、ここでも自分の“好き”を集めたものを作ることができると感じたんです。

―そうして、物件を決めたわけですね。具体的に、どのような店づくりをしましたか?

五味:コンセプトを固めることですね。「屋根裏部屋」というイメージをベースに世界観やストーリーを作り込んで、スタッフに共有して、一緒に内装を手作りしました。自分の好きなインテリアを置いたり、子どもの頃に使っていたおもちゃを飾ったり。そうしていると、素人が作ったゆえの独特の温かみや家にいるような居心地のよさが出て、すごくいいんです。また、家賃が低いため、過剰に席を作ったり、回転率を上げたりする必要がなく、お客様の席を広くとることもできました。こうすることで、ランチやティータイムでひとりゆっくり過ごすだけでなく、ディナータイムにデートや商談などで使えるなど、お客さまの利用シーンを広げることにもつながります。さらに、広告系の仕事をしている夫にもアドバイスをもらって、プレスリリースも出しました。もっとも、その頃はWEBのPR媒体なんてない時代だったので、雑誌社の住所をメモして、自作のPR文を郵送していたんですよ。

―実際にオープン後の反響はいかがでしたか?

五味:予想を大きく超えて、お客様が来てくださいました。特に、オープンしてからほどなくしてテレビや雑誌が取り上げてくれたことが大きかったですね。その影響もあって、お店が開いた瞬間に、1階まで長蛇の列ができるほど、連日超満員の日が続きました。正直なところ、オープン前には「こんなに好き放題な店の作り方で大丈夫だろうか」という不安もあったんです。けれど、夫に相談したら、「渋谷は、街にいる人が多いから大丈夫。店の前を通り過ぎる人が100人いたとして、そのうちの1人が階段を上ってくれるくらいでなんとかなるよ」と、勇気づけてもらって。結果的に、自分が信じて発信したコンセプトが、多くのお客様に受け入れていただけたカタチになって、自信につながりました。
これ以降、家賃の低い空中階で、昼、夜それぞれ1回転ずつで黒字化するという「attic room」のモデルをベースにして、1年に1店舗ほどのペースで直営店を出店するようになりました。

店舗出店、コンサルティングと幅広く展開するアティックプラニング代表・五味美貴子氏が、自分の“好き”を詰め込んだ「屋根裏」から伝えたいこと

店舗展開と同時進行でコンサル、スクールなど、“人の夢”の後押しに力を入れる

―「attic room」オープンの翌年である2006年8月に法人化。その後、1年ごとに直営店舗を出店しつつ、コンサルティング業、カフェスクール事業など、展開を広げていっています。こちらはどのようなきっかけが?

五味:どちらも、店舗運営の中でつながった方からの依頼ですね。コンサルティング業を始めたきっかけは、旧知の知人から「カフェを作りたい」、「物件はすでにある」、「全て、五味先生に任せたい」、という依頼からでした。私もコンサルティングは全く未経験だったので、“自店舗を開業するつもりで作る”ということしかできることがなく、本当に1から10まで依頼人の方と一緒に店づくりを進めていました。そういった私の“自分事にする”という姿勢が相手は嬉しかったようで、できあがった店舗に対してもすごく満足してくださって。今でも、弊社では「お客様に寄り添う」ということをすごく大事にしていますが、この経験は大きかったですね。

―まさに“依頼主の目線での店作り”ですね。こうした経験が、多くの店舗をコンサルティングしたり、カフェスクールで生徒に教えたりすることにも生きているのでしょうか?

五味:そうですね。実際に、飲食店を続けていくということは、接客や調理といった技術的なものはもちろんですが、それ以上に経験によって得られるものが多いと思うんです。私で言えば、「失敗に慣れたこと」。やっぱり、飲食店を運営していると、山ほど失敗をするんです。でも、そうしていると、失敗には法則があることもわかってくるんです。法則さえ分かっていれば、次に同じことが起きそうなとき、自分の中でアラートが鳴って対処できる。失敗を体験で終わらせるのではなくて、そこから何を学んで、クロージングするか。それが重要だと思うんです。そのためには、私だけでなく、もっと多くの人の経験談があれば、なおよい。ならば、たくさん講師を招いて、それぞれの経験を持ち寄った集合知を作ろう。そう考えて、カフェスクールを開いたんです。スクールを開いてからの6年間で、生徒さんが開いた店舗は約80軒にのぼりますが、全ての店舗が撤退せず、現在も運営を続けています。今後は、福岡にもスクールを開校する予定なんです。よりたくさんの人の可能性を広げていきたいと考えています。

自分たちらしさを発揮しながら、「屋根裏」からワクワクを発信し続ける

―今後の展望はどのように考えていますか?

五味:これまで夫とふたりで経営してきて、そろそろ事業継承も考えなければいけないと考えています。私の個人事業から始まったアティックプラニングですが、20年が経ち、130人のスタッフを雇用する企業になりました。彼らの将来も考えながら、どのような形で残していけるかということは、次のステージの課題だと思っています。
もともと、私は思い立ったらすぐ行動してしまうタイプで、気が付いたら全部自分で抱えていることも多いんです。でも、10年ほど前、私がふと「人材不足だ」とため息をついていたとき、スタッフから「その悩みは10年前に聞いた」と指摘されたことがあったんです。つまり、私は創業時から「人が足りない」と言いつつ、誰かに頼ろうとしていなかったということなんですね。そのスタッフは「僕たちがスタッフ主導でやってみるから、人材不足のことを忘れてもらえないか」とも言ってくれて。それからは、スタッフに運営を任せるようになりました。そんな彼らを、どう幸せにしていくか。スタッフの人生設計に、会社がどう関わっていけるのか。この課題に対しては、今も模索中ですね。

―やはり、人に任せるというのは永遠の課題かもしれませんね。

五味:そうですね。私みたいに自分でやらなければ気が済まない人にとっては、人事のことを考えるのってすごくしんどいと思います。でも、最近は苦手なことに労力と時間を費やすならプロに任せる方がいいと思って、人事のスタッフを仲間に加えました。非常にフットワークが軽く、私がずっと悩んでいたことをサクサクとクリアしてくれていて、「こんなにあっさり解決するのか」と、驚かされています。人に任せることが苦手な経営者も多いかもしれませんが、「任せてみる勇気」を持つことも大事だと思います。

―会社の展開としては、どのように考えていますか?

五味:それも踏まえたうえで、今は“ミニマムな母体”でありたいと考えています。一時期は、直営店を大きく展開することを考えていたこともありますが、やはり、守れる店舗数など、自分たちに合うスケールが見えてくるんです。逆に、コンサルティングの方は、案件が増えるにつれて「他の方に寄り添える立ち位置を確立していきたい」と思うようになりました。だからこそ、自分たちの手が届く範囲、目の届く範囲を大事にしたい。自分たちらしいクリエイトを楽しんでいきたい。そのためには、大きく事業を展開するよりも、小さくても、自分たちが目の濁らない判断をできる規模で運営していきたいと思っています。

店舗出店、コンサルティングと幅広く展開するアティックプラニング代表・五味美貴子氏が、自分の“好き”を詰め込んだ「屋根裏」から伝えたいこと

―では最後に、五味さんの経営者論をひと言お願いいたします。

五味:“在り方”ですね。以前、夫から「トリュフ犬みたい」と言われたことがあったんです。どういう意味かわからず聞いてみたら、「いつも、ワクワクを探して、掘り起こしている」ということだったらしくて。言われてみたら、私はいつも自分がワクワクする気持ちに従って動いているなあ、と、妙に納得したんです。つまり、私は「ワクワクしている人」で在りたいんだと。その“在り方”を大事にしているんだと気づいたんですね。
だから、私はコンサルティングをするときも、「どんなカフェか」ということより「どう在りたいか」ということを聞きます。私だったら、「ワクワクしたい」だけど、別の人ならきっと別の答えが返って来る。もっと言えば、設定するゴールも違うし、その先にある“成功”の形だって、人それぞれ違う。そして、そういう自分の在りかたって、意外と知っているようで知らなかったりするんです。私が、夫にトリュフ犬と言われて言語化したように。
これから飲食店を開こうとしている人も、すでに運営している経営者の方も、何かを決断するときには“在りかた”を考えてみるといいかもしれません。きっと、自分の向かう先を決めるための助けになると思いますよ。

株式会社アティックプラニングについて

事業内容:
直営店舗の運営(カフェ・インテリア)/ カフェ開業コンサルティング 講師・スタッフ派遣 / カフェ関連執筆業 / プロモーションカフェの企画・開発業
フード関連商品開発・販売業 / セールスプロモーション業 / ビジネスコンサルタント業
店頭SPツール類のデザイン・出力・設営関連事業(デザインセンター)

HP:http://atticroom.jp/

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