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M&Aのテーマは「継承」。日本の焼鳥の先駆者「鮒忠」四代目社長・安孫子節人氏が語る、“次の80年を紡ぐ“経営論

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2023年09月01日

戦後間もない1941年に川魚専門店として産声を上げ、1946年に企業として創業した鮒忠(東京都台東区、代表取締役社長:安孫子節人氏)。創業者・根本忠雄氏は、当時高級品だった鶏肉を串焼きにして大衆に広め、飲食チェーンの先駆けとなる商才の持ち主だ。創業から80年が経った今でも、その魂は社内に脈々と受け継がれている。今回は、2022年に四代目社長に就任した安孫子節人氏にインタビュー。「継承」がテーマの経営論について、とくと伺う。

M&Aのテーマは「継承」。日本の焼鳥の先駆者「鮒忠」四代目社長・安孫子節人氏が語る、“次の80年を紡ぐ“経営論

1966年千葉県市川市生まれ。早稲田大学卒業後は教員免許を取得し、故郷である市川市立中学校の教諭に。1993年、小学生の頃から旧知の仲であった鮒忠二代目社長・根本修司氏の長女・由美子氏と結婚。1995年に同社へ入社した。2000年頃から、社内の構造改革を推進。また、2018年には浅草の老舗料亭「草津亭」を、2022年には老舗うなぎ料亭「柏又(かしまた)」を買収するなど、老舗の歴史をつなぐことに重きを置いた経営を進めている。

第一印象は「真面目にコツコツ」。昭和の職人気質な飲食企業に見えた地力と課題

―安孫子社長が入社した1995年は、すでに鮒忠が飲食企業として確固たる地位を築いている時だったかと思いますが、入った当時はどのような印象を受けましたか?

安孫子氏:コツコツ真面目に商売をする会社だな、と感じました。もともと鮒忠は、創業者の根本忠雄社長が戦後にリアカーを引いて川魚を売るところから始まったんです。そして、冬の魚が取れない時期に焼鳥を売り始めて、焼鳥の源流をつくりました。当時は鶏が全然足りなかったから飼料を売る商社や農家さんと組んで、鶏を捌いて肉にする。そして、それを店舗に卸す、という流れもつくったんですね。現在でも、鮒忠って鶏肉の卸が売上の大半を占めている。初代は「焼鳥の父」と呼ばれていますが、私にしてみると「鶏の卸の父」でもあると思っています。
で、私は入社した当時、そういった鶏肉の加工や卸の現場に配属されたんです。
そこでは、みなさんひたすら真摯に鶏肉を扱っている。毎日、コツコツ真面目に働いて、ちょっとずつ儲ける。そういう商売の基本となる精神が受け継がれている会社なのだな、と感じましたね。

―一攫千金とは逆の雰囲気で、まさに“昭和の職人気質な会社”という感じですね。

安孫子氏:そうですね。初代から引き継いだ伝統をしっかり守っている。でも、長く続けているということは、その分、課題も積み重なってしまうものでして。実際に現場を見たり、そこで働いている人と話したりしてみると、色々見えてくる。特に経営面ですね。

当時、鮒忠は飲食店舗を運営する「外食おもてなし事業部」、食材の加工・卸を行う「フードサービス事業部」、中食を販売する「お弁当・ケータリングサービス事業部」という、三つの事業部を展開していました。
それぞれの事業戦略は、とてもしっかりしている。飲食店経営にしても、卸にしても「こうすればうまくいく」という答えがあるわけです。
けれども、これをひとつの会社として見ると、3事業を貫く企業戦略がない。全体としてどこへ向かっているのかわからないような課題を感じていました。

商業から経営へ。既存の事業部の構造改革と、コロナ禍の波紋

M&Aのテーマは「継承」。日本の焼鳥の先駆者「鮒忠」四代目社長・安孫子節人氏が語る、“次の80年を紡ぐ“経営論

―具体的には、どのような課題があったのでしょうか。

安孫子氏:例えば、「フードサービス事業部」から「外食おもてなし事業部」に食材を卸す場面があったとします。その食材は、セントラルキッチンで調理され、飲食店だけではなく「お弁当・ケータリングサービス事業部」にも供給される。でも、それぞれの事業部で利益構造が違うから、どこでどう利益が出ているのかあいまいになってくる。ちゃんと見てみると、実は利益を圧迫している部分もある。そこで、2000年代に入ってからは、三つの事業のポートフォリオをつくって、事業全体の最適化をはかるための構造改革を推進していました。

―そんな中、2018年には浅草の老舗料亭「草津亭」を買収しています。これにはどういった経緯があったのでしょうか。

安孫子氏:改革を進める中で、「外食おもてなし事業部」の店舗の客単価向上を考えました。鮒忠は、創業当時から大衆路線の薄利多売のスタイルで続けてきましたが、この20年くらいは長くお店を維持していくため、価値の高いものを相応の価格で提供していきたいという流れをつくってきました。コロナ後さらに客単価を上げるよう準備してきました。 けれども、長期的に多くの人々に支持され続ける価値は、やはり歴史が裏付けているもの。自分たちにないノウハウや知識は、老舗から学ぶ必要がある、と考えていました。
そんな折、「草津亭」が倒産して、入札になっているという情報が入ってきます。「草津亭」は、明治時代から160年も続く浅草の名店です。鮒忠の倍ほども歴史がある。学びを得るならばここだと、買い取ることに決めました。
これによって、鮒忠には第4の事業部「割烹事業部」が誕生。さらに改革を推進していこうという状況だったのですが、2020年にコロナ禍がやってきて、ガラリと状況が変わります。

―やはり、コロナ禍は鮒忠にも大きな影響が?

安孫子氏:ありましたね。特に、2020年は「外食おもてなし事業部」と「お弁当・ケータリング事業部」が昨対比25%まで落ち込んでしまうほどの大打撃を受けてしまって。結論として、「お弁当・ケータリング事業部」を譲渡せざるを得ないという判断を下すことになりました。会社を守るためとはいえ、1970年代から50年以上も続けてきた事業ですから、苦渋の選択でした。

―翌年の2021年に譲渡が完了していますね。約1年の期間を要していますが、譲渡にあたってのハードルなどがあったのでしょうか。

安孫子氏:譲渡先の候補は多かったのですが、「働いている人も受け入れる」という企業と出会うのに時間がかかっていました。
コロナ禍において、会社は苦しい。けれど、働いている人の働き先は守る。たとえ、事業部が鮒忠から離れるとしても、そこで働いている人が食うに困ることはしない。それだけは絶対に譲らないと決めていたし、社員のみなさんにもお伝えしていました。そういった理由で時間はかかってしまったけれど、最終的には「お弁当・ケータリング事業部」で働く約110名の従業員のみなさまも含めて受け入れてくださる企業に譲渡することができました。
弊社としては、将来につながる大きな決断を実行することが出来ました。

長期スパンでのインプットによって買収した企業の歴史を継承する

M&Aのテーマは「継承」。日本の焼鳥の先駆者「鮒忠」四代目社長・安孫子節人氏が語る、“次の80年を紡ぐ“経営論

―その後、2022年には小田原の老舗うなぎ店「柏又(かしまた)」も買収しています。こちらはどのような経緯が?

安孫子氏:この頃、コロナ禍のダメージから「外食おもてなし事業部」では直営店をどんどん閉めている頃でした。これによって、店長クラスの優秀な方々のリソースが空いてしまったんです。その中には、「鮒忠のエース」と呼べるような人材もいて。苦しい状況だったけれど、彼らの力を結集して「浅草花川戸 鮒忠」を頑張って運営していました。 これがうまくいったので、花川戸と同様の店舗をつくろう、と考えていた時に、「柏又」が後継者不足で困っている、という情報が入ってきたんです。私たちからすれば、うなぎ店の大先輩なわけで、「草津亭」のときと同様に、老舗の価値を学ぶことができる。そういった経緯から、買収しようという決断に至りました。

―買い手も売り手も経験した安孫子社長ですが、M&Aにおける大事なテーマなどはありますか?

安孫子氏:ずばり、「継承」です。弊社も、「老舗」と呼ばれるようになって久しく、そう呼ばれる企業には積み重ねた歴史があるということを理解しています。どんなに商品が良くても、売り方が画期的であっても、積み重ねた歴史が生み出す価値だけは、真似することができません。だから、M&Aをして初めに何をするか、と聞かれたら「継承」なんです。

鮒忠のプロパーのスタッフを投入して、4~5年、ひたすら学ぶ。そこで本当に店舗の歴史を「継承」するまでは、店舗展開はしない。もちろん、その店のやり方を変えることもありません。「草津亭」を買収したとき、私は現場のスタッフに「『草津亭』で、焼鳥のにおいを漂わせたらダメ」と、伝えました。M&Aをすると、もとあるやり方を変えたり、自分たちの色を加えたりしたくなる。現場レベルになると、余計にそういう気持ちが芽生えるんです。
けれども、そこをグッとこらえて、ひたすら学んでもらう。なぜかというと、その店舗の歴史が生んだ風情や味を愛しているお客様がいるから。そういった方々に、変わらず可愛がっていただくことが、本当に店舗を「継承」することだと思うんです。それができてから、次の店を出すべきだと考えています。

―では、今後の展望についても教えてください。

安孫子氏:鮒忠の歴史を継承していくために、変化を続けていくことですね。
私の主観なのですが、老舗って80年サイクルでターニングポイントがあると思うんです。鮒忠は、まさに創業80年目前です。歴史も人も、誇るべき積み重ねがあります。真面目にコツコツ、真摯に向き合う。コロナ禍を乗り越えることができたのも、歴史に裏付けされた固い地盤と、そこで働く人々の信頼関係があったからだと思うんです。私は、代表としてこの素晴らしい会社を守る責任がある。みなさんの働く場所を確保する使命がある。先達が積み上げてきたストーリーを、次代に引き継ぐ必要がある。
だからこそ、新しい時代でも会社が走っていけるよう、常に変化していくべきだと思っています。大量出店で資本を増やしていく方法が主流の時代もありましたが、今は、もっと別なものが重視されたりもしている。時代によって、経営の形は変えていくべき。一方で、M&Aをした会社や店舗については、変えません。買収される側にしてみると、それだけでものすごい変化なわけですから。そういった方々と相乗効果を生むためにも、私たちの方が変わらなければいけないと思っています。

今後もM&Aで様々な老舗の歴史を継承して、次の80年の歴史を積み上げていきます。

株式会社鮒忠

HP:https://www.funachu.co.jp/

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