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飲食業界でも話題のスモールM&Aとは何か? 概要や案件の探し方、注意点を解説
2021年05月26日
大型の案件ばかりが取り沙汰される国内のM&A。しかし、近年は個人店や小規模事業を取り扱うスモールM&Aが非常に活発になってきており、飲食業界でも話題となっています。そこで今回はスモールM&Aの概要や案件の見つけ方、注意点などを説明します。
スモールM&Aとは?
スモールM&Aとは、小規模事業者や個人事業主のM&Aのこと。正確な定義はありませんが、一般的に売上高1億円未満の企業を対象としています。飲食業界では、もともと後継者不足が深刻であったうえに、コロナ禍で経営が困難になる事業者が増加。こうした背景から、スモールM&Aが注目を集めています。
さらにスモールM&Aが盛んな理由の一つとして、少額で売買できる点が挙げられます。飲食業界は小規模事業者が全企業の87%を占めているため(中小企業庁調査より)、特にスモールM&Aをしやすい土壌があるといえるでしょう。
小規模事業・個人店の価値はどれくらいになる?
では、小規模事業者の実際の企業価値はどれくらいになるのでしょうか。企業価値を算出する方法は数多くあり、そのプロセスも極めて複雑です。
しかし、中小企業の価値算定手法として一般的に知られている、「年買法」という簡単な計算方法があるので紹介します。ただし、信頼性の高いDCF法やマルチプル法などと異なるため、あくまで目安の一つと考えてみましょう。
年買法は、純資産と3年分の営業利益を足して企業価値を算出します。
企業価値=純資産+3×営業利益
純資産は資産から負債を引いて出します。例えば、純資産が1,000万円で毎年の営業利益が1,000万円の企業なら以下のようになります。
企業価値:4,000万円=純資産1,000万円+営業利益:1,000万円×3年
スモールM&Aは買収額が小さく、投資回収をしやすいことがわかります。
マッチングサイトや仲介会社を利用して進める
中小企業や個人事業主の飲食店をどこで見つければいいでしょうか。個人の紹介などを除いた方法としては、大きく3つあります。
・M&Aの仲介会社
・マッチングサイト
・商工会議所などの公共機関
仲介会社は売り手からの信頼を得ており、事業承継に本気で悩んでいる経営者が多いことが特徴です。そのため、オーナーが高齢化した老舗の繁盛店も少なくありません。売り手は成約に至るまでのすべてを任せられるため、スムーズかつ安全にM&Aを進められます。
ただし、仲介会社に依頼をする場合、売り手・買い手ともに仲介手数料を支払う必要があります。また、確実に成約や引継ぎを行うために、進行スピードが緩やかになりがちという点も。
一方、マッチングサイトは売り手が会社の情報を掲載し、買い手との仲介をする専用サイトです。膨大な件数の中から、業界や売上規模などを絞り込んで検索することができます。飲食店の専門マッチングサイトでは、店舗数も絞って調べることができます。
売り手の手数料が無料、買い手の手数料も手頃な場合も多く、安価でM&Aを行えます。また、1か月以内に成約する案件もあり、スピード感のある取引が可能です。
注意点としては、売り手と買い手の両方にM&Aの知識が求められること。サイトは基本的に案件を見つけて交渉する窓口と考えましょう。交渉そのものは自分で進める必要があり、必要な書類も当事者が用意します。M&Aの知識に不安がある方には、あまりおすすめできません。
各地域の商工会議所でもM&Aに関する相談を受けています。候補先企業の紹介や面談のセッティング、進捗のフォローなどを行ってくれることもあります。
スモールM&Aで注意したいポイントは?
小型の案件で成功させるポイントは、財務状況が安定しているか見極めることと、買収後に従業員の離反を招かないことです。中小企業は決算資料に穴のあるものが多くあります。簿外債務などがないように細かくチェックしましょう。
また、カリスマ性のある社長に惹かれて、スタッフが働いているパターンも中小企業によくあります。引継ぎ後は面談を重ねるなど従業員のケアを十分に行うことが重要です。
さらに、契約書の内容が不十分でトラブルになるケースもあります。不明確なことがないよう、事前の調査と交渉が重要に。売り手も買い手も譲れる条件、譲れない条件を明確にし、契約へと進むようにしましょう。
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