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外食時の食物アレルギーを防ぐために飲食店がすべき対策とは?

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7大アレルゲンのひとつ落花生。Photo by LongitudeLatitude「chipmunk」

日本初となる“食物アレルギーに特化したお出かけ本”が誕生

2015年9月17日、ぴあ株式会社より『食物アレルギーでも楽しくお出かけできる本』が発売された。これは、食物アレルギーに悩む方、そしてその家族を対象にした本で、レジャー施設や外食チェーンのアレルギー対応について詳しく紹介している。このような食物アレルギーに特化したガイドブックの発売は日本では初めてのことで、飲食業界でも大変話題になっているようだ。

日本ではえび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生が7大アレルゲンとして指定されており、なかでもそばと落花生は重篤な症状を引き起こすアレルゲンとして注意が促されている。これらのアレルゲンを用いた加工食品には、ラベル上で注意が促されているため、家庭での食物アレルギー事故は減りつつある。食物アレルギーを持つ方が特に気を付けなければならないのは、外食時と言えるだろう。

飲食店には料理に使用する原材料の表示義務がない。そのため、しばしば食物アレルギー事故が発生する。かく言う筆者もそばアレルギーを抱えており、数年に一度アレルギー症状に見舞われている。特に日本料理店で誤食することが多く、ある時はそば茶で、ある時はそば粉を用いたつみれでアレルギー症状を引き起こしてきた。幸い、喉の違和感や唇の腫れのみで症状は収まるのだが、そのたびに注意を怠った自分を恨んだものだ。

徹底したアレルギー対策を講じる『デニーズ』

さて、飲食店が行うべき食物アレルギー対策とはどのようなものがあるのだろうか? 前述した通り、日本には飲食店向けの食物アレルギーに関する制度・ガイドラインがない。そのため、各店舗の自主的な取り組みに委ねられているわけだが、内容については千差万別のようだ。ここでは、ファミリーレストラン『デニーズ』を例に具体的な取り組みについてご紹介しよう。

ちなみに、ほとんどのファミリーレストランで食物アレルギー対策を講じているが、その中でも『デニーズ』の対策は特に徹底しており、食物アレルギーを抱える方からは絶大な信頼を得ているようだ。ホームページなどを参考に対応策をご紹介していこう。

【デニーズが実施している食物アレルギー対策】
・メニューに含まれる栄養成分およびアレルゲンをホームページ上で公開
・ホームページでアレルゲンが含まれないメニューを検索できるようにしている
・低アレルゲンメニューの提供
・低アレルゲンメニューには専用の調理器具・専用食器を使用
・エライザ法を用いてアレルゲン物質の混入を検査

エライザ法とは主に食品会社が行うアレルゲン検査のことで、レストランの現場で実施されることは非常に珍しい。また、低アレルゲンメニューを配膳するのは専任のスタッフらしく、メニューに掲載された料理写真と実物とを見比べながら慎重に配膳しているのだとか。老若男女、幅広いゲストが訪れるファミリーレストランだからこその徹底ぶりと言えるだろう。

1,200万人もの食物アレルギー患者を抱える米国。その対策とは?

ここまでは『デニーズ』を例に飲食店が行っている食物アレルギー対策をご紹介した。ここからは海外の事例についても触れていきたい。例としてご紹介するのは米国の飲食店の取り組みだ。

米国では、約88万店が加盟する米国レストラン協会などが主導して、アレルギー対策を講じている。その対策の中から気になるものを2つご紹介しよう。

・アレルギーカードの運用
アレルギーカードとは、食物アレルギーを持つ方が、どの食材がNGなのかをレストランに伝えるためのカード。正確なアレルギー情報をレストラン側に伝えること、口頭での説明を省き、気軽に食物アレルギーを抱えていると伝えられるようにすることを目的としている。

・スタッフ教育ビデオの配布
米国には、レストラン協会や医療従事者、シェフなどによって共同開発された教育ビデオが存在する。そこには食物アレルギーの基礎知識、ウェイターや調理人の心得、さらに緊急時の実践的な対応術まで収められており、こうしたビデオを通じて食物アレルギーに対する知識を深め、実務に生かしているようだ。

米国の食物アレルギー患者は約1,200万人。飲食店で食物アレルギー対策を講じることは、もはや当然と言えるのかもしれない。

アレルギー対策の真理をつく、ある高級店の取り組み

最後に、ある高級レストランが実施している食物アレルギー対策についてご紹介したい。実施している内容は、年に1回のビデオ鑑賞。ただそれだけで、食物アレルギーに対する理解を深め、ゲストへ完璧なケアを行っている。

鑑賞するビデオとは、食物アレルギーを持つ子どもと、その家族がどのように生活しているかを描いたもの。実際の苦労を目に焼きつけることで、スタッフの意識が変わり、丁寧な対応に繋がっているのだとか。

「何が食べられないのか?」
「どれぐらいの量なら大丈夫なのか?」
「食べたらどうなるのか?」

こうしたコミュニケ―ションを丁寧に行うことこそ、アレルギー事故を防ぐ大きな手だてとなる。知識やノウハウも大切だが、それよりも大切なのはゲストに寄り添う心を持つこと。このレストランの考えは、食物アレルギー対策の根本を表している。

さて今回は食物アレルギー対策についての情報をお届けした。『デニーズ』のような徹底した対策を講じるのはなかなか難しいが、食物アレルギーを持つゲストに寄り添うことはできるはず。「何か食べられないものはございますか?」。このひと言で救えるアレルギー事故もあるので、まだ対策を講じていない飲食店は、こんなひと言から始めてみてはいかがだろうか。

Editting&Text/Hirokazu Tomiyama

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『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

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