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フェアトレードって一体なに? 「持続可能な社会」のために、飲食店ができること

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日本で生活する私たちにとってはあまりピンとこない話だが、近い将来、世界中で慢性的な食料不足に陥ることが危惧されている。

日本の食料自給率は、カロリーベースで39%。約6割の食料品を海外からの輸入に頼っている。それだけに、世界中で食料不足が発生してしまうと、私たちの生活を脅かすことになりかねない。今のうちに「持続可能な社会」を目指して、少しずつでも動き出すことが大切だといえるだろう。

では、飲食店としてはどのような取り組みができるのだろう? ひとつがフェアトレード認証品を扱うことだ。「フェアトレードって何?」。そう思われる方も多いはずなので、今回はこの“フェアトレード”という仕組みについて、そしてその可能性について紹介していきたい。

そもそもフェアトレードって?

ちらほらと耳にすることのあるフェアトレードという言葉、日本語に直訳すると“公平な貿易”となる。消費者庁のWebサイトには、このように記されている。

「国際貿易における一層の平等性を追求する、対話や透明性や尊敬に基づく取引パートナーシップであり、特に南半球の社会から取り残された生産者や労働者へのより良い取引条件の提供や権利の保護によって持続的な発展に貢献する」

特にコーヒーやチョコレートの生産地は、ほとんどが南半球の発展途上国と呼ばれるエリアにある。そして、それらの商品は生産地から遠く離れた国際市場で一方的に価格が決められ、先進国で驚くほど安く流通しているのだ。

このやり方では、生産者は充分な利益が得られない。ひいては生産者の生活が守られなくなり、生産性を上げるため、農薬などを用いて環境に無理な負荷をかけてしまうことに繋がる。こうした悪循環をなくすことを目的に、国際フェアトレード認証では、生産者の生活を支えるために必要な“最低価格”を定めている。

フェアトレード認証品の価格は高い?

“最低価格”が設定されている国際フェアトレード認証を得るためには、生産者とトレーダーが、それぞれに定められた項目をクリアしなくてはならない。たとえば、安全な労働環境が整備されているか、環境に優しい農法で作っているかどうかなどだ。

これらの項目をクリアすれば国際フェアトレード認証を得られるわけだが、この認証を受ければ最低価格が保証されるだけでなく、生産地域の社会発展の資金をまかなうための奨励金を受け取ることも可能となる。フェアトレード認証品のオーガニックコーヒーの価格が、通常品より15〜20%ほど高くなってしまうのはこの手厚いサポートがあるためだ。

とはいえ、環境問題や健康への関心が高まっている今、無農薬や有機肥料で育てた作物が消費者からは求められている。近年は“良いもののためなら、多少値段が高くてもいい”と考える人も多いのだ。事実、NTTコムのリサーチによると、フェアトレード認証品を購入する人の7割が商品自体の魅力を購入の理由として挙げている。フェアトレード認証品は、少々価格は高いがニーズはあるといえるだろう。

まずは、コーヒーで取り入れよう!

国際フェアトレード認証の対象品は、生鮮果物やスパイス、野菜などさまざま。そのなかでも飲食店で取り入れやすいのは、コーヒーではないだろうか。日本では“サードウェーブ”と呼ばれるコーヒーブームが依然続いている。消費者の関心は、今やコーヒーの淹れ方はもちろん、豆の生産地や生産方法にまで及ぶ。フェアトレード認証品をさりげなく取り入れるのに、もってこいのアイテムがコーヒーなのだ。

たとえば京都府に本店を置く人気コーヒーチェーン『小川珈琲』は、フェアトレード認証を受けた有機コーヒー豆を使用。同店が提供しているスペシャリティーコーヒーの中でも、目玉メニューとして高い人気を博している。また、ご存知『スターバックス』もフェアトレード認証品を使用しているとして有名だ。毎月20日を「フェアトレードの日」と名付けてイベントを開催するなど、フェアトレード認証品を集客のツールとしても活用している。

このように上手にフェアトレード認証品を活用する飲食店が増えつつあるわけだが、フェアトレードという考え方はまだ日本に浸透し始めたばかり。特に飲食店で使用する場合は、どれほど生産者の支援になるのか、有機栽培、無農薬などの基準が守られているのかを正しく調べることが大切だ。

生産者を含め、誰にも無理をさせない持続可能な社会は、潜在的に誰もが求めているもの。フェアトレード認証品を使用すれば、消費者に味やサービス以外の“体験”と“きっかけ”を与えることができ、それは店の評価を上げることにも繋がる。情けは人の為ならず、というわけだ。

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いずみかな

ライター: いずみかな

グルメやライフスタイル、育児などを中心に編集執筆業をおこなう。2015年からフリーランスとしての業務を開始。タウン情報誌やレストラン情報を扱うWeb媒体で取材や執筆をしており、特にケーキや洋菓子に興味がある。