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ボランティアが主役の「子ども食堂」に。『要町あさやけ子ども食堂』山田じいじの思い

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「ボランティアの方々が主役」だと語る山田さん

3つの大切なこと

山田さんはボランティアに参加する方々に大切にしてもらいたいこととして、以下の3つを上げた。

①自分の好きな時間に参加する
②やりたいことをやる
③満足感を得ることができる

「例えばあれだけ子どもたちがくるとトイレがどうしても汚れてしまう。じゃあトイレ当番を考えましょうとか言い出すと、①と②ができないし、ボランティアじゃなく“お給料をもらえない係員”になってしまう。だから、うちは反省会をしないと決めている。『それだとボロが出るんじゃないか』ってつっこまれるんですけど、たしかにボロは出るんです。でも“気が付いた人がやる”ってことを大事にしてる。みんな大人だからね」

当日のメニューはボランティアが中心となって考える。料理には生活クラブ生活協同組合の無農薬野菜、全国の農家や八百屋などから届いた材料を使用。アレルギーを考慮して、卵、牛乳は使わない。無添加の優しい味付けが評判だ。

「豊島区のこども食堂はほとんどが無料。うちは100円をいただいてるけど、事情がある人……、大体2割くらいの人からはお金をもらっていない。貧困はお互いに隠すのが暗黙の了解。服装はみんなある程度ちゃんとしてるから見た目では分からないと思うけど、困ってる人はいるんだよね。とはいえ、月に2回ご飯を提供しているだけで、孤食や貧困を解決できるわけではないから、大したことはやってないよ。うちは“場を提供するだけ”としっかり線を引いて決めているから、そういう意味ではドライかもしれない。それでも月に2回は必ず開く。“一人でも来られる場所”があることを覚えておいてもらえたらいいな、と思ってる」

普段は料理をお盆にのせて提供しているそう。完食したら、数に限りはあるがデザートをもらえる

ずっと続けていくために、山田さんがしていること

この活動を続けるために、山田さんはゴミ、騒音、自転車など近隣への配慮も欠かさない。今のところ苦情はなく地域から歓迎されているようだ。

「近所の地主さんに許可を取って子ども食堂の日は自転車を置く場所を借りている。もし誰かに『うるさいからやめて』って言われても場所も日にちも変えられない。リカバリーできないからこそ、クレームが出ないように必死でフォローしてる」

山田さんとボランティアのチームワークで、『要町あさやけ子ども食堂』は今年の春で7年目を迎えた。山田さんが、今だからこそ思うこととはなんだろう。

「そもそも始めたときに、“どういう子ども食堂を作ろうか”と考えたことがなかった。みんなとも話さなかったし、子ども食堂のモデルが『だんだん』しかなかったですし、うちはうちで少しずつやればいいかなと。今でもあんまり考えてないかな……、子どもも大人も来られる子ども食堂になればいいかなってくらい。私が目指してるのは70点の子ども食堂。安心安全に成立していればいいんじゃないかな」

「小さく始めて大きく育てる」が山田さんのモットー。そんな山田さんの姿勢に感銘を受けた自治体や子ども食堂の店主がたびたび見学に訪れている。飲食店の人が来ることも多いそう。子ども食堂を開きたい飲食店の人に何かアドバイスをするとしたら……。

「飲食店の場合はキッチンが専門的だし、包丁もプロのものだから、ボランティアの人はお手伝いしづらい環境だと思う。飲食店の人たちはそれを織り込み済みでみんなやってるとはいえ、色々な制約があるから大変だよね。うちの場合は“食べてから遊ぶ”ができるけど、飲食店の場合はそうもいかないし……。難しいことはたくさんあると思うけど、子ども食堂という愛情支援が少しずつ日本全国に広がっていくことは、とても素晴らしいと思う」

食事は“お腹を満たす”だけのものではない。誰かの心の支えになり、誰かの夢になり、誰かの「場」になる。食には様々な可能性が秘められていること、それは金銭に代えられない喜びを持っていることに気づかされた。山田さんの志から学ぶことは多い。

『要町あさやけ子ども食堂』
住所/東京都豊島区要町1-39-4
電話番号/03-3957-4270(山田)
営業日/毎月、第一・第三水曜日17:30~19:00
https://www.asayake-kodomoshokudo.com

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逆井マリ

ライター: 逆井マリ

フリーライター。音楽、アニメ、ゲーム、グルメ、カルチャー媒体などに取材記事を執筆。現在の仕事に就く前に、創作居酒屋、イタリアン料理店での業務経験あり。写真は大好きなアイスランドで撮影したもの。