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コロナ禍で増えた遊休不動産を活用してオープン。『HANARIDA』が目指す新しい原宿

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『HANARIDA』の店内の様子。席のまわりには花や木々があり、癒しの空間となっている

2021年9月8日、原宿に新たな複合施設「Section L Pop-up House」がオープンした。コンセプトは、1990年後半から2000年代生まれの若者「Z世代」の“溜まり場”。施設内には話題のフードクリエイターが出店する食のセレクトショップや、お客に直接自社製品を販売する「D2C」ブランド向けのコミュニティースペースなど、今注目のトピックを担う場がずらりと並ぶ。

同施設で特に話題を呼んでいるのが、デジタルデトックスをコンセプトに掲げるドライフラワーカフェ『HANARIDA』。デジタルネイティブのZ世代が集まる原宿で「デジタル以外の良さをもう一度見つめ直してもらいたい」という思いでオープンした。同店オーナーの今瀧健登さんに、出店までの経緯や今後の展望を伺った。

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『HANARIDA』オーナー・今瀧健登さん

Z世代にデジタルデトックスを。花とともにくつろげる空間

『HANARIDA』は、今瀧さんが代表を務める「僕と私と株式会社」が“花のある暮らし”を提案するブランドとしてスタート。花を贈る人のきっかけづくりを行うほか、花を活用したアクセサリーの販売や、花言葉をまとめた書籍『花を買いに』の出版など、さまざまな取り組みを行っている。そのブランド展開の一環として、今回のカフェを出店した。

フラワーアーティストの手によって彩られた店内は、賑やかな原宿のイメージとは異なる落ち着いた空間だ。メニューもドライフルーツ入りの“食べられるお茶”「咲茶」など、個性豊かなラインナップが揃う。なかでも一押しは、一見シーシャ(水たばこ)のような「花煙」。シーシャの機材に咲茶を入れ、水たばこのかわりに“お茶を吸う”感覚を楽しめるのだという。今瀧さんは語る。

「Z世代はシーシャに関心がある人が多い印象ですが、なかなかシーシャ屋さんに行きづらい方、たばこやニコチンを苦手とする方もいらっしゃいます。そういった方にも『花煙』は楽しんでいただいていますね」

さらにもう一つ、同店のコンセプトとして注目を集めているのが「デジタルデトックス」。店内のロッカーにスマホを預けるとドリンクが一杯無料となるほか、毎週日曜日はデジタルデトックスデーとして電子機器の使用を禁止している。

「花の美しさはデジタルでは表せられないので、実際に目で見て楽しんでもらうことを目的にしています。それに、SNSにアップできない代わりに友達と『この前行ったお店がね……』といった会話が生まれるかもしれないですよね。そうした直接的なコミュニケーションを大切にしてもらいたいんです」

コロナ禍でオンラインのつながりが増える中、あえてオフラインのコミュニケーションを大事にする。デジタルネイティブのZ世代が集う原宿だからこそ、際立つコンセプトと言えるだろう。客層は狙い通りZ世代である一方で、思いもよらぬ年齢層へのリーチもあった。

「40代以上の方にも楽しんでいただけたのは驚きました。デジタル中心の社会になる中で、デジタルから離れられる場所が落ち着くという人もいらっしゃるようです。このあたりは代々木公園も近いので、散歩がてらデジタルデトックスをしに来るという人もいらっしゃいます」

『HANARIDA』にて提供している「花煙」。シーシャ(水たばこ)の機材を使い、“お茶を吸う”体験を味わえる

スタッフにもインフルエンサーにも、店のファンになってもらう

同店のデジタルデトックスは、Z世代以外の幅広い年齢層にも受け入れられている。しかしスマホやPCの使用に制限をかけることは、SNSで拡散してもらうことによる集客に歯止めをかけることにもなり得る。制限がある中で、集客をどのように行っているのだろうか。

「僕が大事にしているのは『カフェでの体験を誰かに言いたくなるかどうか』、それから『来てくれた人に自分たちのサービスをちゃんと好きになってもらえるかどうか』の二つです。例えばSNSでの集客方法としてインフルエンサーさんにPRしてもらうという手段がありますが、自発的なPRでないとあまり良いものにならない場合もありますよね。それよりも誰か一人が友達に『このカフェすごいよかった!』って勧めた方が、広まっていくこともあります」

インフルエンサーに依頼してSNSにアップしてもらうことだけを目標にすると、集客につながらない可能性もある。だからこそ、まずはとにかく自店を好きになってもらえるようにサービスや商品に力を入れて、自然とPRしてもらえるような環境づくりを心掛けている。

事実、『HANARIDA』ではインフルエンサーにPRを依頼していないものの、訪れたインフルエンサーたちがカフェのファンとなり、自然と発信してくれるケースも多いという。また、店のファンになってくれたYouTuberとコラボし、さらなるPRを行うといった好循環も生まれている。

さらに今瀧さんが大切にしているのが、スタッフに店のファンになってもらうこと。「『どうしたらスタッフがお店を好きになってくれるか』を考えることが、結果としてお客様にファンになってもらうことにつながります」と今瀧さん。

「これからは“ファン兼スタッフ”が大事になってくるのかな、と思います。離職率の低下を防ぐことにもつながりますし、TikTokやインスタグラムなどの店のSNSアカウントを運用していく際にも、ファンとして働いてくれるスタッフが投稿してくれた方が魅力的なPRになりますよね」

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竹野愛理

ライター: 竹野愛理

食と文学を愛するライター。飲食店取材、食に関するコラム、書評を執筆のほか、食関連のメディアや書籍にて編集者としても従事。趣味は読書と散歩。本を片手に旅行したり食べ歩きをしたりすることが好き。