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10坪月商300万円の参宮橋ワンオペ“ピザ屋”『SAM』。自由と売上を両立する裏側

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店名は、アメリカのポートランドでブリュワリーを営む友人の名から

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熱源は薪窯のみ、冷凍庫はなし。設備もスペースもミニマムに

とはいえ、ワンオペの薪窯ピッツェリアの前例などほぼないに等しい。ましてや『SAM』の場合、その日使う分だけの生地玉を前日から寝かせ、オーダーが入ってからそれを広げて具材をトッピングし焼き上げるスタイルだ。仕込み量の見立てから営業中のオペレーション、目標客単価まで、様々なことをコントロールしなければならないはずだが、それでも後藤氏は「公算はあった」と話した。

生地は24時間発酵させるため、前日から準備

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後藤氏がワンオペピッツェリアの一番のネックだと考えていたのは、初期投資だという。特に「窯」。ピザ自体が大衆的な料理ゆえにフレンチのフルコースのように単価を上げられない中で、窯にかける投資の大きさと、ワンオペで見込める売上の天井を比較すると、リスクバランスがよくないからだ。

そこで『SAM』では、徹底して固定費のコンパクト化を図っている。まず、融資の返済期間は長めに設定し月々の支出を抑えるほか、厨房設備をミニマムにすることで物件の大きさと賃料を縮小。熱源は薪窯に絞り、コンロもオーブンも置いていない。

メニュー例。ピザは常時7種類前後

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「あくまで“ピザ屋”ですから、薪窯が第一。薪窯調理だけに絞ることで、よくも悪くも料理の幅も制限され、一人で回すのにちょうどよいサイズ感になりました。それに、ピザ以外の肉や野菜などの焼きもの料理は、窯に入れさえすればしばらく手が離れる。その間にお酒を準備したり冷菜を盛り付けたりお会計をしたり、結構自由がきくんですよ。生地づくりも、ミキサーにかかるお金やスペースを考えれば手ごねの方が効率的。何より、手ごねも楽しいですしね」

さらにこの店には、冷凍庫や製氷機がない。窯にスペースが取られるため、ストックスペースは極力減らしたという。「フレッシュなものを仕入れて回転させる方が、おいしさの面でも健全で理にかなっている」と後藤氏。提供するアルコール類も、ナチュラルワインやクラフトビールのため氷が必要なく「思い切って成功だった」と話した。

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山本愛理

ライター: 山本愛理

フリーライター・エディター。WEBを中心に食にまつわる記事を執筆。 昔ながらの喫茶店から星付きレストランまで、美味しいものを通して幸せな時間を提供してくれる人の声と熱を届けるのが好き。空いた時間はもっぱらカフェ巡り。