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飲食店の経営者に捧ぐ「本」10選。経営アイデアやモチベーションを刺激する作品たち

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飲食店を経営する方の中には、経営の参考としてさまざまなビジネス書やハウツー本を読んできた方も多いのではないだろうか。そういった実務に即した本ももちろん大切なのだが、じつは何気ないエッセイやノンフィクションの中にこそ世の中の“今”を知るヒントが隠されており、経営へのモチベーションやアイデアを刺激するものが多かったりする。そこで今回は、飲食店を経営する人に向けて「今読んでおきたい10冊」をご紹介したい。

多角的な視点から飲食店経営の本質を見直す

■『シェフを「つづける」ということ』井川直子著(ミシマ社)
本書から遡ること10年、イタリアで料理の修業をする若者たちを取材した著者が、彼らのその後を追ったノンフィクション。イタリアで修業を積んだ料理人といえども、帰国後の保証があるわけではない。所属した組織の中での葛藤や、オーナーとの確執、店の閉店など、皆さまざまな壁にぶつかりながらも、人との縁や努力を通じてそれを乗り越えている。料理人を追った本ではあるが、飲食店が抱える様々な問題を多角的に描いているので、経営者にもぜひ読んでほしい一冊だ。

世界の食の多様性からイメージを広げる

■『毛沢東の赤ワイン 電脳建築家、世界を食べる』坂村健著(角川書店)
トロン研究の第一人者で東京大学教授の著者が、研究のかたわら訪れた世界各国の食について綴ったエッセイ。本書では多様な食のあり方から見えてくる世界の文化や経済について言及。海外から見た日本の食文化なども描かれている。多様化する飲食業界へのニーズを理解するヒントに繋がる一冊。

■『NEW YORK FOODIE マンハッタン&ブルックリン レストランガイド』池城美菜子著(カンゼン)
トレンド発信地ニューヨークの食通たちが進める最旬グルメガイド。タイトルの「フーディー」とは「食通」や「食い道楽」というような意味で、「グルメ」のような高級志向ではなくカジュアルだけれどこだわりを持った新しいタイプのニューヨーカーなのだそう。日本の食トレンドに生かせるヒントが盛りだくさんなので、まさに今押さえておきたい一冊。

経営のリアルを知る

■『ドリルを売るには穴を売れ』佐藤義典著(青春出版社)
マーケティングの入門書。タイトルの意味は、ドリルを買いに来る人は、穴を開けるという目的(=結果)を得るためのツールを探しているのだ、という意味。つまり、ニーズに直結するのは何かを考えるのがマーケティングの基本だということ。本書の特徴として、解説の理解をより深めるために飲食店を例にしたサブストーリーを挿入しているので、飲食店経営者の方もマーケティングとは何かをよりイメージしやすいのではないだろうか。

■『夢はボトルの中に――「世界一正直な紅茶」のスタートアップ物語』セス・ゴールドマン、バリー・ネイルバフ著(英治出版)
紅茶ブランド「オネストティー」の10年史を漫画でわかりやすく紹介。数々のトラブルや困難を乗り越え、オーガニックボトルティーの全米売り上げNo. 1にまで成長するブランディングストーリーを追う。商品開発や資金調達、市場開拓、他商品との差別化など、改めて考えたいポイントが満載の一冊。

■『本音の飲食店』稲本健一著(柴田書店)
名古屋から東京に進出し一大外食企業に成長したゼットンの元社長(現会長)が語る飲食店経営の本音。トレンドや世の中のニーズをどう読み取り、どう生かしていくかなど、ヒントになりそうなセンテンスが詰まった一冊。

愛される店を作るヒントをつかむ

■『大坊珈琲店』大坊勝次著(誠文堂新光社)
2013年12月に惜しまれつつ閉店した「大坊珈琲店」の思い出がエッセイや写真でまとめられた一冊。永六輔や糸井重里などこの店とゆかりの深い著名人35人による寄稿文も読み応え十分だ。常連客の視点を垣間見ることで、長く愛される店にはどんな要素があるのかを知ることができるはず。

■『居酒屋百名山』太田和彦著(新潮社)
全国津々浦々、著者が訪れた名店居酒屋の佇まいを綴ったエッセイ。人情味あふれるエピソードや各店の逸品が小気味よく綴られており、読み物としても読み応えがある。最近は地域性を大切にした個人店や、小規模ながらラインナップに奥行きのある専門店がトレンドでもあるので、そういった店舗を目指す方にとっては、ヒントになるサービスやメニューもありそうだ。

経済的成功だけではない、飲食店のあり方をもう一度考える

■『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』渡邊格著(講談社)
日々利益を出すことに精一杯で、気付いたら本当にやりたかったこと、作りたかったものから遠く離れたところに来てしまった……と感じたことはないだろうか。著者はそうした問題を解決するために、パン作りを通して「職」と「食」に正しい価値がもたらされるよう奔走してきた。全ての業態にこの試みが当てはまるわけではないが、経営以前に、飲食業の原点を改めて考えるきっかけになるかもしれない。

■『サードプレイス――コミュニティの核になる「とびきり居心地良い場所」』レイ・オルデンバーグ著(みすず書房)
家庭や職場での役割から解放され、自分らしさを見出す場所をサードプレイスとし、その意義や重要性を社会学的に論じた一冊。『スターバックスコーヒー』の店舗空間作りにもこのサードプレイスがキーワードとして掲げられている。サードプレイスは、カフェや居酒屋、書店、図書館など地域によって様々だが、サードプレイスたり得る飲食店を目指すことも地域活性と相まって今後ひとつのフラグになりそうだ。

飲食業に限らず、経営者の多くは愛読書を持っていることが多い。常にリーダーシップを発揮し、緊張を強いられる立場にあって、壁にぶつかった時や、葛藤を抱えた時に本を開くのは自然なことかもしれない。

本に何かの答えを求めるものではないのだろうが、活字を通して今ある自分と向き合う意味で読書は経営者にとってとても有用である。上に挙げた本をきっかけに、ぜひ今後の愛読書となる一冊を見つけて欲しい。

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イシイミヤ

ライター: イシイミヤ

フリーライター。ファッション誌やカルチャー系のウェブサイトでライフスタイルに関わる記事を執筆。現在はフードカルチャーに焦点を絞り、その最旬事情から老舗の妙味まで多岐にわたり執筆中。週3でアンテナショップに通い、全国の郷土菓子と未知の食材の収集を日課にしている。ビールとコーヒーのトレンドに詳しい。