豊洲市場への移転から1か月、築地“場外”のその後。老舗そば屋「今が改革のチャンス」
豊洲に市場が移転してから、約1か月後の築地場外市場(撮影:11月6日午前10時)
豊洲市場の開場から1か月。“日本の台所”と称された築地市場の移転は、東京だけでなく日本各地の飲食店、さらには一般消費者までもがその動向について強く関心を抱いていることだろう。
豊洲市場は開場当初の混乱も落ち着き、大小の問題がありつつも機能し始めていると聞く。一方で気がかりなのは、残された「築地場外市場」の存在だ。
築地は市場の移転により観光客減少が懸念されており、これまでの賑わいがなくなると“場外”にある飲食店は大きな痛手を被ることが予想される。また、築地市場で働いていた卸売業者や、仕入れに訪れた料理人たちには、場内同様に場外にも“ひいき“にしていた飲食店があり、それらのお店に足繁く通うことで自身の胃袋を満たしてきた。こうした客が一気にいなくなるわけだから、当然、経営にも影響が出てくるだろう。今、築地場外市場はどうなっているのか? 現状を取材した。
築地場外の老舗蕎麦屋の現状
市場が移転して約1か月が経過した現在。築地場外市場では以前と変わらず飲食店や乾物屋などが軒を連ねて営業している。観光客や訪日外国人の多さが目立つものの、かつてのような賑わいや勢いが感じられないのも事実だ。
こうした流れをふまえ「築地場外市場の飲食店が今、どのような形で営業しているか?」を知るために、築地場外の老舗『そば處 長生庵』の松本ご兄弟に取材した。まずは弟の憲明さんに、現在の客足について伺った。
「移転してから、朝の営業に関して言えば、客足が半分以上減っていると思います。朝の7時からお店を開けていますが、以前は週3~4回来てくれたお客様が週1回になってしまったり、毎日のように来てくれたお客様がパタッと来なくなってしまったり……。逆に、『どうしてるかなぁ、と思って』と言いながら、顔を出してくれる常連さんもいらっしゃいます。市場の移転に際して『もう買い出しにはいかない』というお客様、そして廃業を決めた方もいましたので、朝の客足が悪くなるのも当然だと思います」
朝の営業では市場関係者や買出人が客として訪れることが多かったため、市場移転の影響が大きく出ているようだ。ちなみに市場移転に伴い、自店舗の仕入れの変化はあったのだろうか。
「買い出しは豊洲と築地の両方でやっています。昔からお付き合いのあるお店が、今は豊洲に移転しましたから。あと、築地の場外には、2年前から鮮魚マーケット(※築地魚河岸のこと)ができましたから、そこで買い出しをすることも多いですね」
