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豊洲市場への移転から1か月、築地“場外”のその後。老舗そば屋「今が改革のチャンス」

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弟の松本憲明さん。『長生庵』は憲明さんのお父様が48年前に創業

1~2年は様子見。足元を固めつつ改革の種まきを

例えば鰹節や昆布などの乾物や、調理器具などを買い求めるのならば、今まで同様、築地場外市場を訪れることもあるだろう。また観光客や訪日外国人にとって“場内”はなくなったものの、場外市場は訪れるべきスポットであり、食べ歩きをしている方たちもいまだに多いように感じた。しかしながら『長生庵』のように、朝のお客の大半が卸売業者や買出人であれば、移転のダメージは大きいだろう。打開策は考えているのだろうか。

「豊洲へ移転してまだ1か月なので、1~2年は様子を見てみようと思っています。お客様が減ったから『ヤバイ、ヤバイ!』と慌てるよりも、しっかり足元を固めていこうかと。朝の客足は減っていますが、お陰さまで昼と夜は近隣のサラリーマンの方が来てくれていますので、以前と変わらない状況です。ウチは元々蕎麦屋ですが、お蕎麦にまぐろ丼やしらす丼をセットにしたり、10年ぐらい前からはお酒やコースメニューにも力を入れて、夜は隠れ家的な居酒屋という感じでやってきました。こういう試みを続けながらも、やっぱり『蕎麦が美味しい!』と言ってくださるお客様が多いので、これを機会にもう一度蕎麦屋として原点に戻って、もっともっと気軽に来店してもらえるような店づくりをしていこうと思っています」

ランチで大人気の「マグロ丼とお蕎麦のセット」¥2,500

移転をチャンスに。夜の築地を盛り上げる!

最後に兄の聰一郎さんに話を伺った。弟の憲明さんとともに『長生庵』を引き継ぎ、今年で5回目となる「築地はしご酒(2018年11月17日開催)」の実行委員も務めている。

「これまで築地というと朝のイメージが強かったと思いますが、これからは朝からシフトして夜の築地を盛り上げようと思っています。当初、豊洲への移転は2016年の予定だったのですが、その数年前からすでに危機感を抱いていました。それで2014年から築地場外の有志を集めてはじめたイベントが『築地はしご酒』です。お陰さまで昨年は2,500人以上の方が参加してくれました。今年も51店舗のお店が参加してくれます。今回の市場移転では、新しくできた豊洲市場だけでなく、もともと市場があった築地も注目されているので、それをチャンスと捉えて夜の築地を積極的に盛り上げていきたいですね。築地の飲食店同士がつながって楽しくやっていければいいな、と思っています」

築地市場は“日本の台所”と呼ばれていたが、今回の移転にあたりその役目を終えた。しかし、築地場外に残る市場ならではの風情はいまだ健在だ。この町の特色を生かしながら、そして「築地はしご酒」のような新たな試みにチャレンジしながら、新しい“築地”が作られていくことを期待したいものだ。

『長生庵 (ちょうせいあん)』
住所/東京都中央区築地4-14-1 モンテベルデ1F
電話番号/03-3541-8308
営業時間/月〜金7:00〜15:00/17:30~23:00、土7:00〜14:00/17:30~23:00
定休日/日曜、不定休

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東海林ミノル

ライター: 東海林ミノル

1973年静岡県生まれ。印刷会社の営業からコピーライターに。広告制作会社勤務を経て、現在は執筆/編集に軸足をシフトしている。15年程前から中央線沿線在住。趣味は食べ歩き、料理など。特技は知り合いと偶然、町で出会うこと。