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フレンチ名店『L'AS』の働き方改革。給与アップ、短縮営業でも利益をキープできた理由

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「どうせなら全員で!」という兼子シェフの声で集まってくれたスタッフの皆さん。左上は統括マネージャーの常盤さん

2012年にオープンして以来、東京中の美食家を惹きつけてやまないフレンチレストラン『L'AS(ラス)』。飲食店にしては珍しく週休2日制を導入し、テクノロジーを活用した業務効率化で、従業員の働きやすい環境を整備している。『Foodist Media』でも度々紹介しているが、業務改善への取り組みはさらに進化しているようだ。話を伺いに『L'AS』を訪問した。

「ランチ営業の廃止」と「営業時間の短縮」で労働時間を削減

『L'AS』は、2018年に個人差はあるが従業員の給与を10〜15%ベースアップ。ランチ営業も廃止し営業時間も短縮した。しかも、2017年と比較して売上や利益は大きく変化しなかったという。その具体的な施策をオーナーシェフの兼子大輔さんに伺った。

「まず、週に2日、営業時間を短縮しました。曜日別にデータを集計したところ、集客数が一番少なかったのが月曜日と火曜日だったので、営業を2回転営業から1回転営業にしたんです。それから、土日祝日のみ営業していたランチを完全に廃止しました。ランチ営業日は通常よりも出勤が1時間半早くなるだけでなく、その日の仕込みが他の5日間に分散するので、負担が重かったんです。そこでランチを止めても、売上が落ちない方法を考えました」

兼子シェフが考えたのは店の改装だった。2018年の春に庭だった部分を改装し、客数を7席増やした。

「7席って少ないようで、結構大きいんです。そこに一晩で12名入ったとすると、1週間で84名増えます。土曜日は2回転するので、平均すると100名くらい集客できます。それでランチ営業分はカバーできると判断しました。改装費はかかりますが、『コンスタントに営業時間を短くして、利益を確保できるなら悪い選択肢ではない』と思ったんです」

ランチ営業をやめたことで普段の仕込みが楽になり、あわただしかった休憩もしっかり取れるようになったという。

オーナーシェフ・兼子大輔さん

テクノロジーの活用で労働時間を短縮

兼子シェフはこれまで「Airレジ」などのツールを活用し、業務を効率化してきた。2018年からは2種類の掃除ロボットも導入したという。

「掃除はある程度自分たちでしていますが、床の清掃はルンバに任せています。夜、帰る前に椅子を全部上げてルンバをセットしておくと、朝来たときに床がピカピカになっているんです。ルンバの性能もどんどん上がっていますし、うちの店は段差がない設計なので問題なく使えています。ルンバがうまくいったので、全自動窓拭きロボットも導入しました。今まではスタッフが脚立を用意して窓を拭いていましたが、結構時間がかかっていたので“自動化できればいいな”と考えていたんです。こうした機器は初期費用がかかりますが、人件費やランニングコストを考えると決して高くないと思います」

窓拭きロボットは、窓に吸着させ、起動させると自動で上から下まで移動し、きれいに窓を磨いてくれる。さらに、店内のダクト掃除は、外注業者に委託するようになったという。

「僕らの業界って、掃除も一生懸命やるのが当たり前と言われていますよね。もちろん大切ではあるのですが、『本質がどこか』と考えたときに、すべてを自分たちでやる必要はないと思ったんです。従業員が早く帰れて、疲れが溜まらないのであれば、簡易的にできる方法を選ぶようにしています」

以前は営業終了後にやっていた片付けも、気力が充実した朝に回すようにしてから効率が良くなったという。こうした工夫の積み重ねで、一人当たりの労働時間が1週間あたり7時間も削減できたそうだ。

ロボット掃除機「ルンバ」の最上位モデル

「給与」や「やり甲斐」で定着率アップ

『L'AS』は業界の水準と比べて、スタッフの待遇がいいのも特徴だ。個人店の中ではダントツの給与水準を誇っている。

「今まで飲食業界全体の水準が低すぎたので、世間の普通に近づけただけで、良く見えるとは思いますがまだまだ改善の余地はあります」

給与だけではなく、働きやすい環境も魅力だ。『L'AS』は料理人に料理に専念してもらうため、皿洗いは専属のスタッフに任せている。

「洗い場で勉強になることもあるけど、実際みんなやりたくないでしょう? 1年間洗い物をしても料理は上手にならないので。できるだけ働きやすい環境を整えてあげたいと思い、以前から働いてもらっていた洗い物専属のスタッフをさらに追加で雇うことにしたんです。良いスタッフに定着してもらいたいので、時給は一番高い人で1400円にしています。クリスマス期間中は1800円にしていたので、みんな毎日長時間入ってくれました」

スタッフへの支払いを増やすと人件費が利益を圧迫するように思えるが、その点はどう考えているのだろうか。

「僕も最初は『利益を削ってでも、スタッフにゆとりを持たせてやっていこう』と思っていたんですけど、蓋を開けてみると利益はあまり削られませんでした。いい従業員が定着することで料理やサービスの質が上がって、リピーターが増えたんです。サービスが上手い人って商品をすごく売ってくれるので、掛けた人件費以上にリターンが大きいんですね。そこはケチると損する世界だと思います」

『L'AS』の平均集客数は1日90名以上。月間にすると2700名を超える。広告費を掛けて宣伝しなくても、料理やサービスのクオリティーの高さで集客できるのが『L'AS』の強みである。

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三原明日香

About 三原明日香

これまでに、百貨店の会報誌や、フリーペーパー、グルメ冊子、地域の経済新聞などで取材記事を執筆。社会保険労務士や年金アドバイザーの資格を持ち、人事労務の分野にも詳しい。趣味は都内のカフェめぐりで、とくにチョコレートには目がない。