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調布『Maruta』石松一樹シェフに聞く、コミュニティを意識した店づくり

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『Maruta』のシェフ・石松一樹氏

古い歴史と豊かな自然があふれる調布市の深大寺エリア。京王線調布駅からのアクセスも良く、静かなひと時を求めて、連日、多くの人が足を運ぶ。この深大寺の閑静な住宅地の一角に一軒家レストラン『Maruta』は佇む。自生ハーブや野菜、地元食材を主に使った“ローカルファースト”と大皿料理をみんなで取り分ける“シェアスタイル”が特徴の人気店だ。

近年、飲食業界でも地産地消やSDGsといった環境配慮や持続可能な世界を目指すキーワードをよく見かける。『Maruta』は時流に先駆けて、そうした店づくりを自発的に行う。今回は『Maruta』のシェフ・石松一樹氏に店づくりで実践していることや料理人としての思いについて話を伺った。

『Maruta』には、料理人や経営者、建築関係者などが多く訪れる

自然と同志が集い、会話が生まれる店

『Maruta』が打ち出す独創的なコンセプトの一つが、大きなロングテーブルを知らない人同士で囲って食事を分け合う“シェアスタイル”だ。このスタイルを打ち出すきっかけは、店のオーナーである田丸雄一氏が、海外で訪れた店が深く関係している。

「オーナーがデンマークのコペンハーゲンに行ったとき、知らない人同士で料理をシェアするスタイルの店に出合いました。みんなでシェアしながら自然と会話が生まれる様子に触れて、食事の味だけではなく、体験としても感動したそうです。日本の方にもその感動を感じていただきたいという思いがあったと聞いています」

『Maruta』の運営元は、造園をはじめとする空間緑化事業を手掛ける株式会社グリーン・ワイズ。そのため、店も「深大寺ガーデン」という会社所有の土地に建つ。近隣の駅からはやや距離があるものの、来店目的の似た客が自然と集まってくるのだという。

「ただ食事をするだけでなく、食や菜園、建築に興味があって来られる方が多いので、それとなく同志が集まり、何かしらの会話が生まれるようです。つながりを作るちょっとした手助けになっているのではないでしょうか。食事を取り分けるだけでもさりげない会話が生まれるので、共通項があるとさらに会話が盛り上がって一緒にタクシーで帰るなんてこともありますよ」

店内には8人掛けのロングテーブルを3台配備

コミュニティを意識した空間と店のつくり方

知らない客同士が親しくなれるのは、シェアするという食事スタイルだけではない。互いに心地よさを感じられる、絶妙な距離感を生み出す空間づくりも理由の一つだ。店の敷地内には住居用の物件も建っているが、発想の軸は店の空間づくりと同じだと、石松氏は語る。

「この区画で垣根のない新しいコミュニティを作りたいという目的で、敷地内に住居を建てました。しかし、住人だけだとコミュニティもやはり狭くなりがちです。外部からも人が集まってコミュニティを作ってほしいという思いを込めて、オーナーはお店を開いたようです。シェアも無理強いすることはしません。最低限のコミュニケーションが生まれるようにシェアスタイルを提案していますが、サービスする側はお客様にどう進んでいただきたいかという動線を作るだけ。あとはお客様にそれぞれ選んでいただくという感じです」

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河田早織

ライター: 河田早織

フリーライター・記者。人、物、コトと社会をつなぐ媒体として、インタビュー・取材レポート等の記事を執筆。主な執筆媒体は、日本の食、教育、医療、不動産など。