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飲食店の支援の実情を『ウルトラチョップ』高岳氏に聞く。廃業防ぐには「キャッシュの確保」

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写真はイメージ。画像素材:PIXTA

支援を受ける しかも素早く

新型コロナウイルス禍を切り抜けられた店舗と、心ならずも倒産・廃業に追い込まれてしまった店舗。運命を分けたのは何だったのか。

「キャッシュの確保に動いたかどうかでしょう。すべてはキャッシュです。今月の支払いができれば潰れることはありません。今回、(新型コロナウイルスによる急激な売上減少の波が)やってきたスピードに対して、より早くアクションできたかどうかが勝負の分かれ目になったと思います」

新型コロナウイルスの影響は、驚くほど速く伝播した。『ウルトラチョップ』の場合、実質的に2~3週間で前年比10~20%に落ちているのは前述の通り。他店舗も大差ない速度であったとすると、ただ、支援や融資を受けるだけでなく、素早く受けることが求められる。そうしなければ資金がショートしてしまう。そのために日ごろから会社の経理の透明性を高め、税理士や銀行と密にコンタクトを取り、いざという時のためにキャッシュを手元に用意できるようにすることが重要である。

「今回のことで学びがあるとしたら、手元に現金がなかったとしても、すぐに確保できる手段を常に考えておくことが大事だということです。廃業された人の中には、今、キャッシュがあったとしても『3か月後には多分、尽きるだろう』と考えて廃業した人もいると思います。何れにせよ、手元に現金がないとそれすらできません。選択肢を広げるためにもキャッシュが必要なのです」

「早くアクションできたかどうかが勝負の分かれ目になった」と語る高岳氏

「アフターコロナ」はピンチをチャンスに変える機会

5月25日に緊急事態宣言が全国的に解除されたとはいえ、すぐにすべてが元通りになるわけではない。東京都では3段階で休業要請の緩和をするとしており、消費者のマインドもすぐに戻る保証などない。「アフターコロナ」も飲食業界には厳しい時代が予想される。

3密を避けることを求められるのは変わらず、飲食店は席数を半分にして対応するなど、身を切るような努力が求められる。そのような時代に対応するためには、「客の回転を2倍にする」「単価を上げる」「全く違う方法を考える」の3つの対応が考えられるとする。高岳氏は3つ目を選択。客の滞在時間を長くする方法での対応を考えているという。

「ここからはそれぞれの店舗での努力合戦だと思います。『ウルトラチョップ』も客単価を上げるための努力をしますが、価格を上げるのではなく滞在時間を長くしていただいて、たくさん召し上がっていただくことを考えています。1軒目、2軒目と行くところを、ウチの店にずっといていただく努力をします。そのことで単価を上げるということです」

もちろん、回転が速い店であれば、それを徹底する方法もある。要は各店舗に合った方法で生き残りを模索していくことが肝要。そして、そのことは危機を回避するだけでなく、新たなビジネスチャンスと捉える必要がある。

「今回、初めてテイクアウトを始めた方がいて、テイクアウトをサポートするサービスも始まりました。今までやっていなかったことを始めるのはいいことです。ヒントは、オンライン化。人がいなければオンラインで対応できますし『密を避けましょう』、『家で食べましょう』という流れになっていくでしょう。例えばフェイスブックでサロンを作り、常連のお客さんに入っていただいて、直接ワインをお届けするとか。そこで常連のお客さんを囲い込むわけです」

すでに『ウルトラチョップ』ではこうした試みも始めており、750人程度をサロンに集めることに成功したという。

飲食店は生き残りのために行政の支援に目を配り、そこで生き残ったら、次は新たな時代に向けての戦いを始めなければならない。ピンチをチャンスに変える、そんな心意気を持った店舗・企業がポストコロナの時代に羽ばたいていくのであろう。

高岳史典(たかおか・ふみのり)
1968年生まれ。京都大学経済学部卒業後、銀行勤務を経てマーケティング、コンサルティングの世界へ。2006年にライブドアのCMOとなり、いわゆる「ライブドア事件」で傷ついた会社を再生させた。2013年に飲食業界に入り、ラムチョップを提供する『ウルトラチョップ』など5年間で5店舗を展開。2018年にLINEを用いた飲食店予約サービス「ビスポ!」をスタートした。ビスポ!:https://bespo.tech

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/