渋谷『カクニマル』が常連客に愛される理由。初回で客の心を奪うスゴい「演出力」

女性客を中心に熱心なリピーターに支えられている『カクニマル』
新型コロナウイルスの影響によって新規客の獲得が困難になっている今、コツコツ通い続けてくれるリピーターの存在は、飲食店にとっての命綱とも言える。
渋谷の居酒屋『▢二〇(カクニマル)』は、若い女性を中心とする熱心なリピーターと、彼女らの紹介や口コミによって訪れる客に支えられる繁盛店だ。コロナ禍という逆境をものともせず、月商450~500万円台をキープしている。店主は楽コーポレーション出身の黒川圭太氏。『くいものや楽』『井の頭 汁べゑ』などで勤務し、2018年に同店をオープンさせた。
「大切にしているのは演出力。『この店面白い!』と思ってくれた人が常連になり、どんどん友達を連れてきてくれる。おかげで同じ空気を共有できる人が集まる“ホーム感の強い場所”になってきました」と黒川氏。楽しさの輪が広がる場づくりの秘訣を聞いた。
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カウンター前の天井から吊るされたメニュー、焼き海苔、ライスペーパー、アイスピックなどの雑多なアイテムで非日常の空間を演出する
小さな遊び心の積み重ねが「また来たくなる楽しさ」に繋がる
『カクニマル』の立地は、決してアクセス良好な場所ではない。入口はビルの奥にあり看板も出ていないため、偶然通った人が気軽に立ち寄れる店とは言い難い、というのが正直な印象だ。
だが、扉を開けた瞬間目に飛び込むのは、明るい笑い声と冗談が飛び交う秘密基地のような空間。外観とのギャップで、訪れた者の気分を一気に高揚させる。
「当初から紹介や口コミでの集客を想定していて、誰かに教わらなければ絶対に来られない場所を選びました。お店を本当に気に入ってくれる人が集まりやすくなるので」
店内を見渡すと、壁、天井、トイレの中など、至るところにクスッと笑える手書きのポスターが貼られている。さながら大人のテーマパークだ。
「『ディズニーランドでタイルに“隠れミッキー”を見つけると嬉しくなる』みたいな、ちょっとしたワクワクを居酒屋に落とし込みました。必殺技ではないジャブ的要素の演出を積み重ねて、楽しい気分になれる空間を作っています」
接客にも独自の工夫がある。定番となっているのは、中身が残り少ないグラスを双眼鏡で覗き込んでおかわりを促す演出。お客を笑わせ、スムーズに「もう一杯」を引き出している。
「双眼鏡は元々、僕がいない日もスタッフがお客さんと盛り上がれるように用意したんです。首からぶら下げていれば絶対に『なんで!?』って突っ込まれるし、手を止めて『全テーブルの状況を把握するためですね』と見渡せば笑いを取れる。それがウケたので、普段から使うようになりました」
遊び心満載の演出は、ターゲット層である若い女性の心をグッと掴む。すっかりハマってすぐに2回目、3回目と来店するお客も多く、帰り際に次回の予約を取る人もいるという。
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