飲食店ドットコムのサービス

三鷹『ひな酉 ふじ乃』を率いる敏腕店長の仕事術。常連客づくりからスタッフ育成まで

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

取材時のメニュー。グランドメニューは毎月アップデートされる。今酔の酒はそのときのおすすめを厳選ラインナップ

画像を見る

【注目記事】天才パン職人『365日』杉窪章匡さんに聞く「モテる店」の作り方。お客も従業員も虜に!

学生バイトの成長もやりがいに。頼れるホールスタッフの育て方

ホールを担当するのは瀧下さんと学生アルバイトが中心だ。つまり瀧下さんの采配と、アルバイトスタッフの質の高さが常連客から高い評価を受けていると言える。一体どんな方法で育成しているのだろうか。

「僕もこの店に入って教わったように、学生バイトさんには、“お客さまをよく見ること”の大切さを伝えています。例えばお客さまがお箸を落としてしまったら、サッと新しいお箸をお持ちしたり、ドリンクオーダーを予測して先回りしたり。こういう接客はお客さまの様子を見られてこそ、できることなので。接客マニュアルは作らず、スタッフ自身の“気づき”を応援するだけで、あとは自然と応用力を身につけてくれていますね。本当にいい子ばかりで、頼もしい存在です」

スタッフの自主性を尊重しながら、成長を見守る。学生アルバイトが仕事に慣れ、頼もしく働く姿を見るのは店長としてのやりがいの一つだという。

「学生アルバイトが中心の営業体制なので、彼らが働きやすい環境づくりは特に重視しています。僕は年も近いので、なんでも話せるお兄ちゃん的な存在で、学校の話や恋愛相談も含めて普段からフランクに接していますね」

ちなみに同店で働く学生の多くは、時給目的ではなく、バイト同士の繋がりや仕事の楽しさを目当てに働いているという。お金以外でここで働く魅力や価値を感じてもらうことは、店長の手腕にかかっているといっても過言ではない。おかげでリファラル採用も活発だという。

学生アルバイトが頼もしく働く姿を見るのが店長としてのやりがいだと語る瀧下さん

画像を見る

飲食店経営のシビアな現実。売上を上げ続ける、店長の責任

ただし店長である以上、「日々の営業をやりきればそれでOK!」とはいかない。当然、売上・利益を出し続ける責任が伴う。瀧下さんは店長就任を機に、岡村社長から飲食店経営の収支計画について教わったという。

「この店を続けるには、毎月いくらの売上が必要か……。飲食店経営のシビアなお金事情を、このとき初めて理解しました」

店長就任後は少しずつ価格改定を行い、焼鳥1本150円程度から220円以上に引き上げた。現在は原価率30%、客単価3,800円をキープし、原価高騰の波を受けながらも、描いた目標を毎月達成しているという。

「価格改定はいろんなやり方がありますが、当店の場合は月1のグランドメニュー更新にあわせて10〜20円ずつ引き上げさせてもらいました。お客さまには、それでも“コスパよく飲める”と言われています」

人気メニュー『チキン南蛮』。高菜を使ったタルタルソースがやみつきに

画像を見る

そんな瀧下さんの目下の悩みはこの2つ。「2時間制を導入するか問題」と「男性トイレが汚い問題」だ。

「2時間制を徹底すれば回転率が上がって、売上も上がるとわかってはいますが、常連さんの顔を見るとそれが正解かは疑問です。緊急事態宣言中からの常連さんで、ボトルキープしてオープンからラストまで楽しく飲んでいるお客さまに、いきなり“2時間で帰ってくれ”という方針転換はいかがなものかと」

これは常連客が中心の同店ならではの悩みとも受け取れる。一方、すべての飲食店が大切にしたい、お手洗いの衛生問題についてはこんな施策が。

「“綺麗に使ってください”というメッセージを込めて、お手洗いの中でだけ『トイレの神様』をBGMとして流していたのですが、全く効果なかったですね。このユーモアを理解してくれたのは、学生バイトのみんなだけです(笑)」

もちろん試した施策がすべてうまくいくとは限らない。それでも店の課題を見つけ、解決や改善に向けた取り組みを行うことは、店長に求められる大切な職務だ。スタッフがそれを理解していて、さらに瀧下さんの人柄もあってこそ、失敗したときも一緒に笑い飛ばせるのだろう。トライアンドエラーのエピソードに、同店の良好な関係性が垣間見える。

Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
松本ゆりか

ライター: 松本ゆりか

東京でWebマーケターを経験した後、シンガポールへ渡りライフスタイル誌やWebメディア制作に携わる。帰国後、出版社勤務を経てフリーライターに。主に中小規模ビジネスや働き方に関する取材・執筆を担当。私生活ではひとり旅とはしご酒が好きなごきげんな人。