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渋谷12坪で月間1,000人以上を集客。スタンド酒場の新境地を切り拓く『KAMERA』の視点

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写真手前から時計回りに「山形豚の熟成焼売」(550円)、「仔羊と黒米の熟成焼売」(770円)、「富士鶏と豆腐の水焼売」(550円)

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着目したのは「認知度は高いのに、変化や進化が乏しい」焼売とウーロン茶ハイ

一方亀谷氏は、「焼売」と「ウーロン茶ハイ」を看板メニューに据えた理由について、以下のように説明する。

「焼売とウーロン茶ハイって、広く認知されているのに、長い間、変化や進化の乏しいメニューなんですよね。この視点でメニューを深掘りすれば、ポピュラーアイテムを使って新たな価値を提供できると考えました」

焼売という料理を成り立たせる大きな構成要素は、具材、皮、調理法だ。しかし、焼売と言えば一般的に、具材は「豚肉」、皮は「小麦粉」、調理法は「蒸す」に集約されていて、そこからの進化があまり見られないと亀谷氏は話す。

「たとえば『KAMERA』で提供している『仔羊と黒米の熟成焼売』(770円)は、具材を『ラム肉』、皮を『黒米』に変換する発想です。『富士鶏と豆腐の水焼売』(550円)は、調理法を『煮る』に変えました。また、焼売のタネをソーセージに見立てて開発したのが、『山形豚の熟成焼売』(550円)。塩漬けした豚肉を熟成して旨味を引き出したところに、ソーセージと相性がいいトマトソースとドライトマトを合わせることで、唯一無二の肉焼売に仕上げました」

熟成焼売は豚肉を塩漬けしてから、商品として仕上げるまでに三日間を要する。「仕込みに手間をかけて品質を追求していることもあり、フードメニューは25品に絞り込みました」と亀谷氏。よだれ鶏、エビチリ、春巻きなどの中華料理をメニューの下地にしながら、「フランス人が中華料理をつくるとどうなるかという発想で商品を考案し、オリジナルの料理のみでフードメニューを組み立てた」という。

一方で、調理の効率化を加味している点も見逃せないポイントだ。メニューは基本的にツーオーダーで提供しているが、「私自身が厨房に立つわけではないため、フランス料理のような調理難易度の高い料理は置けない」(亀谷氏)という考えから、鍋振りなど手間がかかる料理はメニューから排除している。これも高いクオリティを保つための工夫だろう。

フードメニューは中華料理を下地にした創作料理25品をラインアップしており、中心価格帯は税抜き650円~1000円(715円~1100円)

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専用焼酎と専用グラスを開発。ウーロン茶ハイの品質をとことん磨く

亀谷氏曰く、「ウーロン茶の本場である台湾には、茶葉の違い、熟成の違いなどによってさまざまな味わいのウーロン茶がある」とのこと。しかし、居酒屋で提供されるウーロン茶ハイは、国内に多く流通している一般的なウーロン茶を使用したものばかり。亀谷氏はここに目を付けた。

「定番ドリンクでもクオリティを追求することにより、幅広い層に受け入れられつつ、差別化を図れると考えました」

『KAMERA』で提供されるウーロン茶ハイは、「台湾四季春(たいわんしきはる)」「鳳凰単叢(ほうおうたんそう)」「岩茶武夷水仙(がんちゃぶいすいせん)」 (各650円)の三品。発酵が浅い四季春は、煎茶のような爽やかな味わい。鳳凰単叢はマスカットのようなフルーティーな香りが特徴で、岩茶武夷水仙は炭火焙煎された力強い風味が感じられる。

「茶葉の選定に加え、淹れ方も中国人の専門家に指導していただきました。福岡県の蔵元『篠崎』さんと共に、ウーロン茶に合う専用の麦焼酎も開発したんです」(亀谷氏)

さらに、ウーロン茶の香りをより引き立たせるため、飲み口の繊細な「うすはり」の特注グラスを使用するなど、あらゆる角度からウーロン茶ハイの品質アップを図っている。

ドリンクは三品を揃えるウーロン茶ハイが看板メニュー。写真左から「岩茶武夷水仙」「台湾四季春」「鳳凰単叢」(各715円)

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栗田利之

ライター: 栗田利之

フリーランスの記者として、15年以上にわたって外食経営誌の記事を執筆。大手、中堅の外食企業や話題の繁盛店などを取材してきた。埼玉県下を中心に店舗網を拡げている「ぎょうざの満洲」が贔屓の外食チェーン。