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白金の工場跡に開業した隠れ家。ワンオペのレストラン『FRANZ』がお客様を引きつける理由

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ほの暗く温かみのある雰囲気。1人で営業することを前提に10席のカウンター席のみにした

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独立前に働いた2軒で学んだことを、店づくりに投影

『FRANZ』の店づくりを語る上で欠かせない要素は二つある。一つが、『イートリップ』と『チニャーレ エノテカ』での経験だ。この2軒から受けた影響は非常に大きいという。

「生産者やデザイナーなど、さまざまな人に出会えましたし、レストランとは単に食事をする場所ではなく、内装の雰囲気やサービスなどを含めた総合力が求められるのだということも学びました。また、それまでクラシックなフランス料理を経験してきた自分にとって、『イートリップ』や『チニャーレ エノテカ』の、素材に手を加えすぎない料理は衝撃的でした」

緑なすのフリット。下にはひよこ豆のペーストのフムスを敷き、仕上げにオリジナルのスパイスアーモンドを散らしている

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信頼する生産者の食材を、最小限の調理で最大限に生かす

メニューは1万2000円のおまかせコースのみ。フレンチの技法をベースにしているが、一皿に盛り付けるのは主素材と付け合わせ1種だけといった具合に、非常にシンプルだ。このスタイルであればワンオペでも出来たての状態でサービスできるというメリットに加え、「お客様がついて来れないような、難しい料理は出したくない」という福田氏の思いも表れている。

例えば、肉料理には赤ワインソースやトリュフを使ったソース・ペリグーなど、クラシックなソースを組み合わせるところを、自家製の赤ワインバターなど、複数の調味料や野菜、ハーブ等を混ぜ合わせたコンディモンと呼ばれる薬味を添えることで気軽さやオリジナリティを表現している。

食材は、独立前から生産者とのネットワークを少しずつ広げ、全国各地から仕入れている。産地にも足を運び、時には1年分の支払いを手渡ししに行き、生産者とのつながりを大切にしている福田氏。なかでも令和6年能登半島地震で大きな被害を被った能登は、栗やイチジクの生産者、魚介類を届けてくれる漁師がいて愛着のあるエリアだという。食材には手を加えすぎず、シンプルに調理することで滋味深い一皿に仕上げる。料理をサービスする時には産地や造り手について話すことで、料理の背景がより伝わるようにしているという。

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難波美枝

ライター: 難波美枝

ライター・エディター。プロ向けのフランス料理専門誌の編集部におよそ10年在籍した後、フリーランスに。料理雑誌やワイン専門誌、Webなどで星つきレストランからビストロ、バルまで、幅広く取材。