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独学で三つ星に! ニコ・ロミート氏が掲げる8つの料理哲学。『ブルガリ』とコラボを続ける理由も

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温かいマッシュルームのサラダ(写真提供:レアーレ ©Andrea Straccini)

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料理が一生の仕事になるとは思ってもいなかった

菓子店を営む両親のもと、アブルッツォ州で生まれ育ったニコさん。食と深い関わりのある家庭で育ったものの、少年時代に料理の道を志すことはなく、大学に進学して経済学を修めた。ところが両親が菓子店をレストランにリノベーションした直後に父親が病気で倒れたため、“急場をしのぐ”つもりで帰郷し、姉と共に店を継いだ。

「後を継いでしばらくは、これは一時的な対応と考えていて、まさか料理が一生の仕事になるとは思っていませんでした。けれども食の世界を知るうちに、学ぶべきことや究めたいことがどんどん増え、それを追うように知識を深めていきました」

『レアーレ』にて姉のクリスティアーナさんと(写真提供:レアーレ ©Brambilla Serrani)

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2000年に引き継いだ『レアーレ』は、わずか7年後の2007年に一つ星、2009年二つ星、2014年三つ星に。レストランが成長すると共にニコさんの“独学の三つ星シェフ”という異例の経歴も注目された。

「私は調理師学校を卒業しておらず、レストランで研修した経験がないという点では確かに独学です。しかし、たくさんの書籍を読んだり、多くのグランシェフから話を聞いたり、“山の家族”と呼んでいる地域の方々に伝統的な料理や地元の食材について教えていただいたり、たくさんの人たちの教えを受けながら自分なりの勉強を積み重ねてきたと思います」

アブルッツォ州の土地の恵みを受け、イタリア料理の本質を模索する。それはゴールの見えない日々だった。しかし、その思索があったからこそ、高名なシェフなどの影響を受けることなく、ニコさんにしかできないオリジナリティが生まれて言語化された。

ブロッコリー・レーブとレモンのスパゲットーネ(写真提供:レアーレ ©Andrea Straccini)

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「私が辿った道のりは確かに遠回りかもしれません。けれども20年間に渡って繰り返し続けてきたこの努力が、『ブルガリ ホテルズ & リゾーツ』とのコラボレーションという素晴らしい結果につながり、今こうして東京に来ることになりました」

北京、上海、ドバイ、ミラノ、パリ、東京、ローマ。自身の『レアーレ』はもちろん「ブルガリ ホテルズ & リゾーツ」とのコラボレーションによるリストランテを巡るために、ヨーロッパからアジア、中東まで世界を飛び回り、各店舗を委ねたヘッドシェフを直々にトレーニングすると共にメニューを開発するなど、カウンセラーおよびコンサルタントとして日々精力的に活動を続けている。

ブルガリ ホテル 東京『イル・リストランテ ニコ・ロミート』にて(写真提供:Bvlgari Hotels & Resorts)

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世界を旅するニコさんだが、東京店の出店が決まるまで、日本を訪れたことは一度もなかったそうだ。

「信じられないかも知れませんが、“美食の国”と言われる日本を訪れる機会はありませんでした。しかし、『レアーレ』には、日本から遠く離れているにも関わらず多くの日本人ゲストがやって来て、私の料理に共感してくれました。日本人のお客様から感じたことは、食材や料理の作り手への敬意です。それは私が描く世界観ととても近いものでした。『レアーレ』で私が表現してきたイタリアの食への愛や敬意を、今度は東京でお伝えしたい。そう考えると東京で自分の世界を表現できるこの機会が、とても刺激的で大きな喜びとなりました」

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shifumy 詩文

ライター: shifumy 詩文

旅するフードライター&インタビュアー。“ガストロノミーツーリズム”をテーマに世界各地を取材して各種メディアで執筆。世界の料理学会取材や著名なシェフをはじめ各国でのインタビュー多数。訪れた国は80か国以上。著書に『ほろ酔い鉄子の世界鉄道~乗っ旅、食べ旅~』シリーズ3巻(小学館)。