2か月で坪月商40万円の『オモテサンドリア』。世田谷発「寿司とワイン」が表参道に挑む
フードは成功モデルを活かし、ワインは客層を意識して強化
とはいえ、呑兵衛の街や学生街として知られる三軒茶屋と、ハイブランドのショップが多く立ち並ぶ表参道では、客層やニーズは異なるはず。実績がある業態とはいえ、都市部での成功の背景にはどんな戦略があったのか ——。綱嶋氏との会話の中からキーワードとして見えてきたのは、「確固たる成功モデルの追究」と「街に合わせた部分的強化」の組み合わせだ。
まず前者は、ブランドコンセプトとフード面に現れている。一貫して「寿司とワインをポップに」を掲げ、握りは変わらず1貫99円〜。既存店で支持を得てきた「まぐろ三重奏」や「ぼたん海老と大人のかっぱえびせん」の寿司はもちろん、17品の「究極コース」などフードメニューに大きな変化は加えずほぼ踏襲したという。なぜなら、これらへのニーズの高さは既存店のお客の満足度を見ても、もはやお墨付き。ブランド最大の“顔”として欠かせない存在だからだ。
一方で、大きく強化したのはワインだ。これまでどおり「ワインは飲みたいけど選び方や組み合わせ方がわからない」というビギナー層もターゲットにしつつ、よりワインに高い感度を持つ表参道ならではの客層を見込み、自然派ワインやワンランク上の日本産ワインなど、仕入れ値の高いものを加えバリエーションを充実。グラス1杯あたりの価格も、ボリュームゾーンを200円ほど上げて800〜1,000円に設定した。
「大衆酒場慣れしたお客さまや学生が多い三軒茶屋店は、600円前後のレンジでないとワインが出ませんが、表参道では1,000円オーバーでも躊躇なくオーダーが入ります。むしろワインが好きな方には安すぎるといわれるくらい。ペアリングを楽しんでくださる方も多くて嬉しいですね」
想定どおり、周辺のワーカーやワインスクール関係者の客足は上々。さらにそこから派生してか、アラカルトとコースの売上構成比にも差があり、三軒茶屋店では約2割程度に留まっていたコース客が、表参道は約5割を占めているという。夜営業の客単価も三軒茶屋店を2,000円ほど上回る約6,800円と、当初の綱嶋氏の試算以上だ。
