“火鍋”を主役に人手不足に強い業態へ。多店舗化を狙う『TOKYO TANG TANG』驚くべき戦略
少人数、調理未経験スタッフで回す秘訣は“段取り8割以上”の仕込み
主役となるメニューは「火鍋セット」1人前3,000円。陰陽に見立てたおなじみの二色鍋には、鶏、鯖、鰹、煮干しで丹念に出汁を取った白スープ、10種類以上のスパイスを熟成させてつくるオリジナル「火鍋醬」を使用した赤スープの2種のスープが入り、セットには「赤豚しゃぶしゃぶ肉」「麻辣牛肉」「厚切りチャーシュー」「季節の野菜盛合せ」「ジャスミンライス」が含まれる。
〆にはジャスミンライスに赤スープをかけ、“スープカレー風”にして食べるのがおすすめなのだとか。好みに応じて+290円で辛味を追加できるほか、「刻みパクチー」「納豆」「フライドエシャロット」各200円などのトッピングや、「ラムしゃぶしゃぶ」890円、「野菜盛り」590円~をはじめとする追加具材、麺派のための〆として「さつまいも春雨」「じゃがいも春雨」各590円なども用意する。
「レシピはこれまでも共同で店を手がけてきたRhythm Placeの加藤と一緒に開発しました。火鍋の最大のメリットは、ほぼ仕込みの段階で完成すること。社員がスープやタレを仕込み、具材をカットするところまできちんと仕事をしておけば、営業中はアルバイトスタッフや料理未経験者でもおいしい火鍋が提供できる。現在は2名体制で回しています」
「海老の紹興酒付け」1尾590円、「干し豆腐の青山椒和え」690円など、鍋が煮えるのを待つ間のつなぎ、箸休めとしての一品料理も用意するが、決して品数は多くはない。こちらも営業前に仕込み、盛り付けなど簡単な調理だけで提供できるように仕上げておくのがポイントだ。
「これは都心に限ったことかもしれませんが、ターゲット層としている30代の人たちは、外食をする目的として『おいしいものを飲んだり食べたりする』こと以上に、『居場所』を求める傾向があります。そのため、居酒屋業態では単価が上がらない、アルコールが出ないなどの課題がありました。このシステムであれば1人につき必ず3,000円の売上が担保されます。
また、火鍋は、具材を入れてからある程度放っておくことで、食材のうま味が出ておいしくなります。寿司やラーメンのように提供したてを食べないと見た目や味が変わってしまうリスクがなく、また焼肉のように頻繁にひっくり返したりという手間がなく、鍋が煮える間にゆっくりおしゃべりが楽しめるわけです」
ドリンクは「ビール」400円~や「ハイボール」600円、「紹興酒」690円~をはじめ、定番を中心に揃えた。熱くて辛い火鍋を食べれば汗をかき、のども乾くため、お酒を飲まないお客であっても1~2杯は注文する。そのため、当初の想定していた客単価よりも上回り、平均5,500円前後を維持している。何よりも「居酒屋の最大の課題であった、ノンアルコールのお客様を歓迎できる仕組みが作れたことは革命だ」と吉利氏は満足そうな笑顔を見せる。
