月商700万円で好発進! 三軒茶屋『ニューあかんぼ』の異色業態「中華×ジビエ」とは?
獣臭の少ない部位選び&クセを抑える調理法
『ニューあかんぼ』で扱うジビエはシカ、イノシシ、カモ、クマ。狩猟される野生鳥獣肉以外にヒツジ(ラム)とヤギ(マトン)もそろえ、クセや獣臭が少ない部位を入荷する。具体的には「脂のサシの部分はにおいが強いこともあるのでバラ肉は避け、背肉や肩、腕などの肉質が引き締まった部分を主に選びます」と、武居氏は言う。
とりわけ“クセ強”なのが、イノシシとクマ。独特な香りと硬さがあるため、調理法を工夫しなければ食べづらいのだ。そこでイノシシ肉はミンチにした「猪のシュウマイ」(2個・900円)として出す。塊肉は脂身の少ないロースを使った「猪のチャーシュー」(1,000円)を提供。淡白な味わいながら、ジビエの嫌な部分は抑えられる。
アバラ肉と腕肉を仕入れるクマ肉は、とにかく硬い。そこで見栄えを損ねず、咀嚼疲れを防ぐための工夫が必要。酢豚のクマ肉版、「クマ肉の黒酢餡」(2,300円)では、仕込みで隠し包丁を施す。肉を揚げる際には火が通り過ぎると硬くなり、身も縮んで映えなくなるため、「ギリギリを狙う。最後に黒酢ソースと合わせるときにやっと火が通るぐらいに揚げます」と、武居氏は調理のコツを語る。
とはいえ、ジビエといえばフレンチの食材として用いるのが主流。「メニュー開発で苦労されたのでは?」と問うと、武居氏はこう答えた。
「いや、楽しかったですね。やりがいがありました。自分の発想でメニューは考えましたが、『俺が作ったこれ、おいしいから食べてみてよ』と、カリスマ性を醸し出すような自己暗示をかけながら試作していました(笑)。ただ、お客さんの反応はゼロか100だろうなと思っていたのも事実。『普通の中華を食べさせろよ』と文句を言われるか、『面白いことやっているな』と喜ばれるかのどちらかと。ドキドキしながら取り組んでいました」
客の反応は後者だった。昨年末12年28日のプレオープン後、「クマ肉を初めて食べた!」など、若い女性を中心にSNSで拡散。それを見た情報感度の高い20~30代が店を訪れる好循環が生まれたのだ。平均客単は4,000~5,000円で、初月はご祝儀来店も含めて月商800万円。2月のグランドオープン以降も、月商700万円・坪月商35万円と出足好調だ。
華やかな高級食材を駆使しつつ、カジュアルな価格帯に
ヒットの要因はジビエだけではない。町中華系の1号店『あかんぼ」との差別化を図るために用いた「高級食材」を掛け合わせた創作中華も一翼を担う。3品から選べるお通しの一つ「雲丹(ウニ)プリン」や、「カラスミ干し豆腐」(各500円)の他、通常メニューとしてラインアップする「オマール海老のチリソース」、「トリュフの焼き餃子」がその一例。
「カラスミ干し豆腐は、中国の冷菜でよく使われる細切りにした乾燥豆腐の上に削ったカラスミをかけたもの。日本のカラスミそばのように味わってもらうアイデアは、和食時代の経験からきています」
料理人歴20年の武居氏は和食出身、1号店もコロナ禍前までは旬素材を意識した和食店だった。業態転換後もその名残から、冬なら白子や牡蠣を使うなど、町中華居酒屋では既視感のない食材の組み合わせのレシピを考案した。なかでも名物なのが、オレンジ色のビジュアルに食指が動く「とびっこ高菜チャーハン」(1,500円)。圧倒的な集客アイテムのため2号店でも流用し、〆の一品として8~9割の注文率を誇る。
