月商700万円で好発進! 三軒茶屋『ニューあかんぼ』の異色業態「中華×ジビエ」とは?
不定期のバー営業も売上に貢献
こうして独学ながら武居氏が培ってきた調理エッセンスにより、ジビエと高級食材を扱いながらも、アッパー層向けレストランとは一線を画す、平均価格1,500円前後のメニュー構成を実現できた。
だが、先に挙げた「クマ肉の黒酢餡」(2,300円)、「オマール海老のチリソース」(3,000円) など一部のメニューは、特に素材が高値のため原価率60~75%と採算度外視。そのため、フードメニュー全体で原価率約45%と収益を圧迫しているという。
「うちの救世主はアルコールのお茶割です。最初はジビエと相性のいいボトルワインを主力に据えましたが、基本的に原価率45%超えと高く、実入りが悪い。ウイスキー、生ビール、リキュール類も原価高騰の影響により強く打ち出せない。それでも『ウーロンハイ』『ジャスミンハイ』『紅茶ハイ』(各600円)などの原価率の低いお茶割は、中華料理に合うイメージが強いから、めちゃくちゃ出ますね。そのおかげでフードと合わせて全体でならすと原価率40%を切り、37%くらいに。今後は本場・中国産のものを使うなど、もっとアピールしやすいお茶割を増やしたいと思っています」
また、毎週火曜と日曜を中心に不定期で開く、深夜のバー営業も売上に貢献。「お食事後も長居したいお客さんを狙いました。三茶は深夜帯も動いているお客さんもが多いから需要がある」と武居氏。「カキの山椒オイル漬け」(800円)、「クミン枝豆」(600円)、「トリュフのポップコーン」(600円)など、10種のおつまみを用意する。さらに、ゆくゆくは中華がゆを出すモーニングも加えた三毛作営業を目論む。
「元々、三毛作をやる前提で準備を進めていました。事業計画書にも書いていましたし、売上高の目標を月商750万円に設定しました。この物件を選んだ決め手も、24時間営業が可能なテナントビルだったからです。モーニング営業で働ける主婦の働き手の目星も付いています」
師匠の言葉と三茶の現状が発奮材料
「中華×ジビエ」などの尖ったメニューだけでなく、攻めの経営で挑む所存の「ニューあかんぼ」。その根底には、武居氏が飲食人としての基礎を学んだ『料理人のいる魚屋ガシラ』(株式会社ユニバーサルキッチン)の代表から教わった言葉がある。
「『現状維持は衰退だ』と、師匠からずっと言われました。僕たちの仕事は、下りのエスカレーターを逆向きに上り続けているようなもの。同じ速度で歩いていたら、その場にしか留まれないんです。なので、2段飛ばしくらいの速さで走ったりしないと、上の方へは進めません。それを意識していますね」
まして三軒茶屋の下りエスカレーターの速度は増していると、武居氏は実感する。
「コロナ以降は三茶で長く営んできた方がお店を譲渡されたり、閉店されたりすることが増えました。それで僕たちみたいな若い人の店が増加し、ドミナント出店が非常に多いですね。10社ぐらいが集中して2、3店舗を出しています。かたやチェーン店の出店が目立たなくなってきた印象。料理、接客ともにクオリティーがすごく上がっている分、生き残れずに閉店する店も多いですね。オープン後、1年持たない店をたくさん見てきました」
そんな多士済々がひしめく三軒茶屋で、自店はどんな存在でありたいのか?
「お客さんが新しい食体験、居酒屋体験ができる『楽しい場所』にしたい。大好きなこの街でさらに多店舗展開したいですし、悪さはできませんね」と言って武居氏は破顔一笑。三茶の「あかんぼ」は成長速度を緩めず、進化を止めない。
『新赤坊(ニューあかんぼ)』
住所/東京都世田谷区太子堂4-15-8 マガザン三軒茶屋3 B1F
電話番号/080-1000-9996
営業時間/17:00~L.O.23:00、バータイム24:00~翌5:00(火曜、日曜を中心に不定期営業)
定休日╱火曜(バー営業のみ行う場合あり)
坪・席数/18坪・50席(テーブル40席、カウンター10席)
