坪月商60万円の恵比寿『co.flamingo』、“気軽さ”と“ガチ”を共存させる巧みな業態設計
意識したのは「ハコの大きさ」だけ
そんな岡田氏だが、2店目づくりにあたって意識したのはたった1点、物件の小ささのみだったという。
10坪ある本店に比べて、『co.flamingo』は約半分の6坪。厨房からはテーブル側のお客まで全員の顔が見え、満席になっても全ての人に声をかけることができるサイズ感だ。ハコが小さくなれば、必然的にお客との物理的距離は近くなる。そうすれば、何かを意図的に変えなくても自然とコミュニケーションが増え、心の距離が縮まって親しみやすさが生まれるはずだと睨んだのだ。
さらに、『Flamingo』がレストランとして確立した要因の一つは、広めに取ったカウンターの幅や席間、明るいライティングにあると考えた岡田氏は、『co.flamingo』では全体をギュッとコンパクトにしながら、身構えずに入れる落ち着いた照明に。「コンセプトは同じでも、物件の大きさだけで店の空気は変えられる」。それは、自他共に認めるレストラン好きの岡田氏が導き出した経験則だったのだろう。
好循環を生む最大のカギは、現場に任せ切ること
だがここまでシンプルに考えられるのも、ハコさえ整えれば、あとはスタッフ全員が自ら全力で考え・動き・さらにブラッシュアップを続けるという、計り知れない『Flamingo』の「チーム力」があるからに他ならない。
前回の取材でも、自らの役割はあくまでハコづくりとサポートであり、メニュー構成からワインの仕入れ、サービス、オペレーションに至るまで、全てを現場スタッフに一任していると語っていた岡田氏。店のビジョンだけを確かに共有した上で、「シェフやスタッフに、『自分がやりたい・やるべきだと思うことを、とにかく本気で考え実行してほしい』とだけ伝える」のが、岡田氏のやり方だ。
「結局、他人から何を言われても、現場がどこまで実践するかが全てです。それなら、彼ら自身がやりたいようにやってもらうのが一番いいものができると思っています」(岡田氏)
例えばオープン当初にシェフを務めていた塚本貴亮氏(現・虎ノ門店シェフ)は、料理のポーションを『Flamingo』よりもやや小さくし、単価も低めに設定。イタリアンをベースにしつつも自らが培ってきたフレンチやエスニックのエッセンスを取り入れ、バルに近い形で盛り上げてきた。その後、長く本店で腕をふるっていた大崎シェフにバトンタッチすると、その思いを受け継ぎながらもより『Flamingo』とシンクロするスタイルに。
「『Flamingo』に入れなかったお客さまが流れてくることが多くなって、しっかりとした食事を求める声が大きくなりました。最初はライトなメニューもあったんですが、岡田さんやソムリエとも相談しながらその声に本気で応えようと試行錯誤していたら結局、『Flamingo』と同じくパスタもメインディッシュも……って、なっちゃいましたね(笑)」(大崎氏)
まさに今、“小さな『Flamingo』”と化した『co.flamingo』。だがあくまで、軸に置くのは「気軽さ」だと、二人は口をそろえる。初めにオーダーを取り切ることもなければ、コーススタイルを勧めることもない。どのタイミングで何を飲んでも食べても自由だ。岡田氏・大崎シェフを含め、常にチーム全員で「お客が自由に過ごせる場」という意識を共通して持つことを徹底していると話してくれた。
