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モーニングとアペロの店『titoten』三軒茶屋。“型破り”の人気店はなぜ生まれたのか

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店があるのは駅前の西友のすぐ裏手

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ランチ回避の理由は、コスパ・タイパとは異なるフィールドに身を置くため

『titoten』として営業する物件は、もともと『マルサラ飲食店』のケータリングキッチン兼実店舗だった場所だという。当時から同店でアルバイトとして働いていた岩村さんは、本店の移転を機にこの場所を引き継ぎ、独立を視野に『titoten』をオープンさせた。

酒飲み文化が根付く三軒茶屋の街で、明るい時間帯の需要があるだろうかと不安もあったと話すが、「せっかくなら、将来自分がやりたいかたちにチャレンジしてみたら?」という代表の西野春乃さんの後押しもあり、労働時間や自分が好きなことを考えてたどり着いた答えが、モーニングとアペロだったと振り返った。

「そもそも、ランチはしないと以前から固く決めていたんです。ハルさん(西野さん)にも『ランチ営業だけは避けたいんですけど、いいですか』って、ずっと言っていましたね(笑)」

席はカウンターのみの落ち着いた雰囲気。モーニングの客単価は2,000円を超える

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飲食店にとっていわば稼ぎ時ともいえるランチタイム。しかし、岩村さんがそれと距離を置くことを決めていた背景には、自身が描く理想の飲食店像がある。

「ランチ営業をされている方には、本当にリスペクトしかありません」と前置きしつつ、「料理を通じて届けることができる、プラスαの価値をより大切にしたい」と、まっすぐ前を見て力強く語った岩村さん。

「おいしいもので満足していただくことは大前提で、単に空腹を満たすだけじゃなく、気持ちが安らいだり、味わうこと・時間・空気感を楽しんだり、『人と関わった』という感覚をできるだけ大切にしたいんです。お客さまと直接会話を交わすことはもちろん、私たちが選んだ食材で心を込めて作った料理を、お客さまが一つ一つ受け止めてくれるだけでも、人と人との関わりになる。そういう、食べることの周りにある喜びに共感してくれる人たちが集まる場になれるといいなって」

「ランチの代わりに、他の時間でちゃんとお客さまと向き合うことにエネルギーを費やしたい」(岩村さん)

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特に平日のランチタイムともなれば、間違いなく、時間に迫られている人が大多数だろう。飲食店の営業態の中でももっとも強く「コスパ」と「タイパ」が求められ、同時にそれは経営側にとって、いかに価格を抑えて回転率を上げるかの勝負を強いられることを意味する。ましてや高くない利益率と、競合がひしめく中でのお客の奪い合いだ。その戦場に飛び込むことは、「おいしい料理と、それを楽しむ時間・空間を提供する」こととは異なる体力が必要になると岩村さんは話した。

だからこそ、あえて違うフィールドを選んだ『titoten』。描く店の姿と、自身が好きな飲食店の過ごし方から骨格を固めていった結果、飲食店のセオリーともいえる「ランチとディナー」の真逆をいく、「モーニングとアペロ」という彼女なりの解にたどり着いたのだ。

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RIN

ライター: RIN

カフェライター・エディター。街の小さな一軒からトレンドカフェ、昔ながらの喫茶店まで、カフェという場を通じて幸せを提供してくれる人の声と熱を届けるのが好き。ライフワークは"スコーンの人"(IG:@rin_125)。