モーニングとアペロの店『titoten』三軒茶屋。“型破り”の人気店はなぜ生まれたのか
特別な時間を確かに彩る料理がここにある
今、日々『titoten』にお客が多く訪れているということは、岩村さんの思いに共感する人が間違いなくいる証だろう。だが、単に営業する「時間」だけが彼らを惹きつける理由ではない。彼女の願いが、料理やサービスの随所に表れ、伝わっているからだ。
『titoten』のシグネチャーは、複数の自家製デリが盛り合わせになったモーニングの「プレート」。まるでワインのアテとしてビストロで楽しめるような繊細かつ鮮やかなひと皿が、一日の始まりを彩ってくれる。
皿に乗る一つ一つのデリはシンプルながらも季節感であふれ、ハーブやスパイス、酸味で奥行きを加えた豊かな味わい。また、味や食感が重ならないよう、フレッシュのまま使う食材があれば、ロースト、フライ、ボイルと調理法を多用したり、切り方一つをとっても、大ぶりのブロックカットから千切り、みじん切り、ペーストまで変化を持たせたりと、手間暇を惜しまず仕上げている。
「時間をつくってわざわざ楽しみに来てくださるモーニングやアペロだからこそ、料理そのものも、それを味わう時間も『来てよかった』と心から思ってもらえるものを届けたいんです。ジャンボンブランやジャムまですべて一から仕込んでいるので大変じゃないといえば嘘になりますが、やる意味はある……、やるべきだと思っています」
調理中は忙しくてお客に声をかけられなかったとしても、できる限り帰り際には出口扉まで見送ることも、彼女が大切にする店のスタイルの一つ。「自分が他の飲食店でしてもらって嬉しかったことは、自分も実践したい」と話してくれた。
「暮らし」が隣にある街だからこそ、馴染めたスタイル
最後に、「今は三茶でよかったと思う」と話した岩村さん。店の存在が周知されるにつれ、都内各地からここを目指して訪れる人々や旅行客、夜勤明けに朝からワインを楽しむ近隣の飲食店関係者、また、子どもの送り迎えの合間にひとときの自由時間を満喫しに来る地元住民から、ブランチ・カフェに息抜きの場として頼るリモートワーカーまで、飲食店街と住宅地が隣接する三茶だからこそ、「モーニングとアペロ」が浸透した側面はあるのではと語った。
モーニングにアペロ……、それはもしかすると、あえて飲食店に行かなくてもいい時間なのかもしれない。だが、ランチやディナーとは一線を画すちょっと特別な食の楽しみであり、そこに確かな価値を届けられているからこそ『titoten』には人が集うのだろう。
「自分の時間を過ごす場として、選んでもらえているのはすごく嬉しいです。直近の課題として、混雑の分散化も含めてオペレーションを整えて、より一人ひとりのお客さまにゆっくり気兼ねなく過ごしていただけるようにしていきたいですね」
今後も試行錯誤を続けながら、一歩ずつ、自身が思い描く飲食店をかたちづくっていきたいという岩村さん。『titoten』がこれからどのような店に育っていくのか、きっと多くの人が楽しみに見守っているはずだ。
『titoten(チトテン)』
住所/東京都世田谷区太子堂4-25-5
営業時間/日〜水8:00〜11:30/13:00〜16:30、木〜土8:00〜13:00/15:00~22:00
定休日/火曜
坪数・席数/約9坪・9席
https://www.instagram.com/tito.ten/










