『祇園さゝ木』、親方と弟子の関係ではない。全員参加で京料理の未来を切り拓く
京都らしい情緒が漂う祇園・八坂通り沿い、建仁寺近くに1998年にオープンした『祇園さゝ木』。店主の佐々木浩さんは、カウンターでの一斉スタートなど斬新なスタイルを数々打ち出し、「割烹の革命児」と称されてきた。
2023年、還暦を迎え、「今一度、勝負に出よう」と「弟子たちとともに料理を作る」をコンセプトに、店の全面リニューアルを敢行。長時間労働が美徳とされた時代から、働くことの“意味”そのものが大きく変わってきている現在、いかに料理人を育てるか。多くの優秀な弟子を輩出してきた佐々木さんに、働き方改革が進む飲食業界の人材育成について聞いた。
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チーム全員で、新しい料理を追求する
店に足を踏み入れると、まず、革新的な料理を創造するガラス張りの「ラボ」がある。スタッフが仕込みをする様子を垣間見つつ進むと、邪気祓(じゃきばらい)のための仁王像が厨房やゲストを見守る自動扉が開く。
目に飛び込んでくるのは、8メートル50センチもの迫力ある白木の新しいカウンター。オープンキッチンで佐々木さんと若い弟子たちが和気あいあいと料理を作り出していく。「チーム全員で新しい料理を追求していこう」と親方と弟子としてではなく、いわば同等の立場でともに献立を考えていく。そんなビジョンを具現化する空間だ。
「この方式を採用してからは、弟子たちの目の輝き方が違います。自分のアイデアが採用されたら嬉しいですよね。もちろん、僕がブラッシュアップするんですけど、その子の発想を取り入れると、『今度はこんなものを作りたい』と向上心が高まる。お互いがともに新しい味を創造していきたい、という連帯感が生まれます。僕が修業していたときは、親方が献立を決めて、僕らは忠実にその真似をするだけ。少しでもミスをすると頭を押さえつけられて怒鳴られた。もちろん、僕にもそんな時代はありますよ」
裏方にはなかなか佐々木さんの目が届かなかったが、オープンキッチンにしてからは、それぞれが持ち場を守りながら、料理人同士のコミュニケーションも取りやすくなった。全員が一つの料理に対して向き合っている、という意識が出てくる。お客さまとの会話も弾み、その空間に存在するすべての人が一体となって食事の場を盛り上げていける。
「若い人たちの意見を聞いて、みんなで共有していく、そうして新たな料理のアイデアを引き出していく。若者は、とてつもないパワーと情報を持っているんです」


