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『祇園さゝ木』、親方と弟子の関係ではない。全員参加で京料理の未来を切り拓く

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佐々木さんは、コースの途中、旬の魚で2貫ほど鮨を握る

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チーム全員が献立を提案、試食して意見を交わす

佐々木さん自身は、料理人になりたいと思ったことは一回もなく、パイロット志望だったという。たまたま友人に料理をふるまったところ、「おいしい」と感激して食べてくれた。それがうれしくて料理で人を幸せにしたい、とこの道に進んだ。料理人だった父のツテで、今はなき、滋賀の料理旅館『臨湖庵』で修業をスタート。師弟関係が厳しいのがあたりまえの時代、「怒られると、器や調理器具など何でも飛んできました」 と振り返る。

今は、子弟であっても、なるべく上下関係にとらわれないことを信条とし、人材育成の根幹としている。

「“親方やから、俺の料理はこうなんや”という教えでは、もうやっていけない。弟子一人ひとりを参加させて、納得できるように料理も教えていく」

「鱈と胡麻豆腐のみぞれ仕立て」。自身がデザインした「八坂の塔」の椀で

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年齢を超えて弟子たちが、意見を出し合い、自分たちで練り上げた料理を作る。「この料理を考えたのはこの子なんですよ」と佐々木さんがお客さまに伝えれば、弟子が喜んで料理の説明を始める。自然とカウンター越しの会話も盛り上がる。その料理を考案したという功績をお客さまに認めてもらえると、次の料理を考えるモチベーションも上がる。

「弟子がミーティングをして、献立をある程度決めたら試食会を行い、僕が意見を述べて指導するんです。たとえば、先付けにクエを焼いて西洋わさびで香り付けしたいと提案してきた。それに対して、『それでは力強すぎるから水溶きわさびにしてはどうか』と助言します。きちんと着席して、先付けからコースを試食しますから真剣ですよ。店のファミリーとして弟子たちを料理にも参加させ、一人ひとりに教えていく。そこが大事なんじゃないかな」

佐々木さん流「ぶり大根」。常に新しい京料理を生み出していく

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こうして『祇園さゝ木』で学んだことが次世代へと継承されていく。現在、16人の弟子が修業中だが、次々と独立させて未来に繋げていってもらいたいという。

2019年4月から「働き方改革関連法」が順次施行されており、時間外労働の上限規制も厳しくなった。8時間と法律で決まっている労働時間はなかなか守れないが、弟子には「8時間たったら、帰るのは自由」というルールにしているという。あくまでも、自主性にまかせ、親方は総監督の立場。いかに労働意欲を引き出すかが、これからの人材育成の鍵となる、それが佐々木さん流弟子の育て方だ。

若いパワーと情報を柔軟に取り入れ、師匠の経験値を掛け合わせ、グレードアップしていきたいという佐々木さん。弟子と切磋琢磨しながら京料理の未来を切り拓いていく。

『祇園さゝ木』
住所/京都府京都市東山区小松町566-27
電話番号/075-551-5511
営業時間/火水18:30~21:00、木金土12:00~14:00、18:30~21:00
定休日/月曜+不定休
坪・席数/約100坪・20席
https://gionsasaki.com

佐々木浩(ささき・ひろし)
割烹『祇園さゝ木』主人。1961年奈良県生まれ。祖父、父が料理人という環境で育ち、高校卒業後に料理人の道へ。滋賀県の料理旅館を皮切りに複数店で修業し、27歳で京都・先斗町の『割烹ふじ田』料理長に就任。1998年、36歳で独立し、祇園町北側に『祇園さゝ木』を開店。その後、移転に伴い店舗の規模を広げ、2006年、八坂通に100坪の一軒家を購入。1年がかりで改装を施し、連日「予約の取れない店」として満席を取り続ける。「弟子を育てる店造りを」と再度改装を施し、2023年8月、リニューアルオープンを果たす。

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Miki D'Angelo Yamashita

ライター: Miki D'Angelo Yamashita

コロンビア大学大学院国際政治学修士、パリ政治学院欧州政治学修士。新聞社にて、新聞記者、雑誌編集記者、書籍編集として勤務。国際情勢、文化一般を取材執筆。食関連取材、料理本編集多数。