【2025年から順次施行】食料システム法とは? 飲食店への影響と「価格転嫁」のチャンスを解説
昨今、原材料の高騰や物流コストの上昇など、飲食店経営を取り巻く環境は厳しさを増している。そんな中、業界内で改めて注目を集めているのが、新たに創設された「食料システム法」だ。2025年(令和7年)10月から計画の認定受付が始まり、2026年4月からは食品等の取引の適正化措置もスタートする。「環境配慮=コスト増」という古い図式が崩れつつある今、この法律をどう経営に活かすか。飲食店が直面する「価格転嫁」の課題と絡めて解説していきたい。
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そもそも「食料システム法」とは? 3分でわかる基本の解説
まずは法律の全体像を整理しよう。この法律は、正式には「食品等の持続的な供給を実現するための食品等事業者による事業活動の促進及び食品等の取引の適正化に関する法律」という非常に長い名前がついている。一般的には「食料システム法」と呼ばれ、将来にわたっておいしい食を届けるための新しいルールだ。
この法律が生まれた背景には、切迫した世界情勢がある。原材料価格の高騰や輸入リスクの顕在化など、今のままのシステムでは「安定して食材を調達すること」自体ができなくなる。そこで、生産者から飲食店まで、サプライチェーン全体でコストを分担し、持続可能な食料システムを作ろうというのが狙いだ。
飲食店経営に直結! 「適正価格」と「価格転嫁」の行方
飲食店経営者にとって最も気になるのが、コストと価格設定の問題だろう。2026年4月から「食品等の取引の適正化」が本格的に導入され、「適正価格」への転換を後押しする流れが強まりそうだ。具体的には、飲食店を含む事業者に対し、コスト上昇に伴う協議の申し出があった場合に「誠実に協議に応じること」が法律上の努力義務となる。
これまでは、生産コストを度外視した安売り競争が一部で常態化していたが、持続的な供給を維持するには、相応のコストがかかる。法律の推進により、今後は「安さ」ではなく「供給に必要なコスト」を反映した適正価格での取引がスタンダードになっていくだろう。
これは飲食店にとって追い風だ。なぜなら、法的根拠を持って「メニューの値上げ(価格転嫁)」や、仕入れ業者との「価格交渉」を行えるようになるからだ。これまでコスト増を自店だけで被っていた経営者にとって、この法律は利益構造を正常化する大きな武器になるうる。
認定されるとメリットも? 「計画認定制度」とは
国は、ただ「努力しろ」と言うだけでなく、具体的なメリットも用意している。それが2025年(令和7年)10月から開始された「計画認定制度」だ。
■環境配慮や効率化で受けられる支援(融資・税制優遇)
安定的な産地開拓や流通の合理化、環境負荷低減などに取り組む事業計画を作成し、農林水産大臣の認定を受けると、設備投資に対する税制特例(所得税・法人税の優遇)や、日本政策金融公庫からの低利融資といった支援措置が受けられる。経営体力のある店舗や、多店舗展開を目指す企業にとっては、無視できないインセンティブだ。
■飲食店が活用できる具体例
認定のハードルが高いと感じるなら、まずは身近なアクションから始めればいい。たとえば、地域の生産者と契約して「地産地消」を進めることは、輸送コスト(CO2)の削減に直結する。また、食品ロスの削減や、野菜の端材を堆肥化して地域の農家へ譲渡するリサイクルループへの参加も立派な貢献だ。これらはコスト削減と社会的信用の獲得を同時に叶える、賢い経営戦略となり得るのではないだろうか。
来年4月に向けて、飲食店が今やるべき準備
■仕入れ先の見直しと「プラットフォーム」の活用
来たる4月に向けて準備しておきたいのが、仕入れルートの再構築だ。今回の法律では、物流効率化などの「商慣習の見直し」を提案された際、検討や協力をすることも努力義務として新たに盛り込まれた。こうした新しい取引の形を模索する飲食店と生産者をつなぐ「マッチング・プラットフォーム」の整備も、現在は各地で急ピッチに進められているようだ。具体的には、自治体などが主導する「地域連携推進支援コンソーシアム」といった、新しいビジネスを創出する枠組みが動き出している。これらを活用すれば、これまで出会えなかった地域の生産者との直接取引や、希少な食材を手に入れるチャンスが広がるはずだ。これを単なる義務と捉えず、新しい仕入れ先を開拓する「武器」として活用してはどうだろうか。
■お客への伝え方(ストーリーで付加価値をつける)
仕入れた食材は、黙って出してはもったいない。メニューブックや卓上ポップで「なぜこの食材を使うのか」を語ることが重要だ。「この野菜を食べることで、地元の農地を守ることにつながります」といったストーリーは、料理の隠し味となり、お客の満足度を高めるだろう。それは結果として、客単価の向上という形で店に返ってくるはずだ。
食料システム法をチャンスに変える店舗経営を
食料システム法は、決して飲食店を縛るための規制ではない。これからの時代に店が生き残るための「指針」であり、新たな付加価値を生み出すためのツールだ。持続可能な食への配慮が、巡り巡って店の利益とブランドを守る。そんな視点を持って、来たる4月からの新年度を迎えてみてはいかがだろうか。








