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月商1,000万円超えの門前仲町『宿酒 きんきん』。客単価倍増させた2つの戦略【連載:居酒屋の輪】

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UPSTART TOKYO株式会社の代表取締役・坂本大輔さん。バーテンダーを経て独立、コロナ禍でのM&Aや業態転換を成功させ、門前仲町エリアでドミナント展開を進める気鋭の経営者だ

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下町情緒と歴史が薫る街、門前仲町。駅周辺には老舗の大衆酒場が軒を連ね、近年では感度の高いネオ酒場も急増する激戦区だ。この地で『大衆酒場 坂本商店』や『富岡一丁目の夕陽』といったヒット店を次々と生み出しているのがUPSTART TOKYO。なかでも異彩を放つのが、開業から1年足らずで名店として評判を集める『宿酒(しゅくしゅ) きんきん』だ。

当初は平均客単価4,500円程度の居酒屋だったが、現在は8,000円にまで急上昇。居酒屋の枠を超え「上質な和食店」として認知され、月商は1,000万円を突破した。その裏側には、徹底した「空間への投資」と、組織全体に浸透させた「星付きマインド」の注入があった。代表の坂本大輔さんに、その戦略と勝算を聞いた。

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門前仲町駅6番出口から徒歩約30秒。老舗の居酒屋が立ち並ぶ辰巳新道の入口に位置する

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「見切り発車」からの脱却。客単価アップの起爆剤は“空間への投資”

2024年5月、門前仲町の一等地にオープンした『宿酒 きんきん』。駅近の好立地とはいえ、周辺は「安くて旨い」が当たり前の競合ひしめくエリアである。約30坪・50席という規模を考えれば、相応の売上を作らなければ維持できない。

「恥ずかしながら、当初は何も考えていなかったんです。『良い場所が空いたからやろう』という、完全な見切り発車でした。オープン当初の客単価は4,500円ほど。決して悪くはない数字ですが、この立地とキャパシティのポテンシャルを考えれば、もっと上を目指せるはずでした」と坂本さんは振り返る。

暖簾をくぐると、そこは別世界。欧風のアンティーク家具を活かした非日常的な空間が広がる

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オープン直後の月商は、2週間の営業で300万円ペース。フル稼働すれば単純計算で600万円前後だが、坂本さんは満足しなかった。なぜなら、目指すべきは「単なる居酒屋」ではなく、わざわざ足を運ぶ価値のある「選ばれる飲食店」だったからだ。

そこで坂本さんは、徹底的な競合リサーチを開始する。都内全域の人気店、繁盛店を食べ歩き、自店に足りないものを模索した。まず行き着いた答えが「空間」だった。

「高級感のある落ち着いた接客をスタッフに求めても、空間自体がチープであれば、それは違和感にしかなりません。逆効果なんです。まずは、そのサービスに見合う環境を整えることが先決だと気づきました」

そこからの決断は早かった。まだオープンして間もない店舗にも関わらず、空間のブラッシュアップを敢行。照明の照度を落とし、陰影のある雰囲気を演出。行きつけの骨董品店からの助言を取り入れ、本物のアンティーク家具やファインアートを配置した。


店内に飾られた絵画や調度品が、美術館のような静謐さを醸し出す。テーブル席はゆったりと配置され、会話を妨げない

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さらに、お客が直接触れる器やカトラリーも一新。スタート時の物件取得費などを含め、総投資額は3,000万円に上った。

「テーマやコンセプトを言葉で飾るよりも、ひたすら『お客さまが入店した瞬間にどう感じるか』を突き詰めました。消費者の目線に立った時、この空間なら8,000円を払っても満足できるか。そこを徹底的に作り込んだんです」

空間の質が変われば、客層が変わる。客層が変われば、求められる料理もサービスも変わる。この好循環が生まれ、売上は月商500万円、700万円と右肩上がりに推移。現在では月商1,000万円を超える繁盛店へと成長を遂げた。

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。