世界的レストランでのパワハラ告発。飲食店が再確認すべきパワーハラスメントの定義と指導の境界線
世界的に知られる名店のシェフが、過去のパワーハラスメント(以下、パワハラ)告発を受けて辞任を表明した。米紙ニューヨーク・タイムズなどで、当時のスタッフに対する暴力・暴言の証言が報じられた影響によるものだ。
この事例は、従来の慣習では通用しない現代の飲食店経営の在り方を、改めて浮き彫りにした格好だ。これを機に、改めてパワハラの定義や指導との境界線、そして健全な労働環境を確立するための対策を確認しておきたい。
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パワハラ報道の経緯と、ブランドに与えた甚大な影響
報道によれば、当該のシェフは2009~2017年頃、従業員の顔面を殴るなどの身体的暴力や、激しい罵声を浴びせるなどの行為を繰り返していたという。こうした告発を受け、同氏は辞任を発表するに至った。
さらに、報道後にはレストランのスポンサー企業が、次々に契約を打ち切って撤退。この事例は、発信力のあるメディアでの告発が短期間で企業イメージを損ね、ブランド価値を大きく毀損するリスクを突きつけている。
飲食業界では、従来「厳しく教えることが美徳」とされる文化も見られたが、近年は労働環境への意識が格段に高まっている。特に情報がグローバルに共有される現代では、過去の行為であっても瞬時に世界中に拡散しかねない。指導の名の下でも「暴力や恐怖」に頼る旧来型の手法では、人材確保やお客からの信頼維持はもはや難しいと言えそうだ。
経営者が知るべきパワーハラスメントの定義と、健全な厨房をつくるためのポイント
そもそも「パワーハラスメント」とは何か。
厚生労働省の指針では、以下の3つの要素をすべて満たすものと定義されている。
1.優越的な関係に基づいて行われること
2.業務の適正な範囲を超えて行われること
3.身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること
具体的には、上司・先輩による身体的暴力や、人格を否定するような著しい暴言などがこれに該当する(参照1)。
では、通常の教育的指導や叱責はどこまで許されるのだろうか。一般に指導とは、部下の成長や業務改善を目的として、具体的に改善点を教える行為を指す。例えば、遅刻や服装の乱れなどが見られる部下に対し、再三注意しても改善されない場合に強く注意することは、業務上必要な範囲であり、パワハラには該当しないと考えられる。一方、業務の目的を大きく逸脱した行為や、不適当な手段による執拗な叱責は「適正な範囲を超えた」とみなされ、パワハラに該当する可能性が高い。
指導を行う際には感情に頼らず、内容を言語化・マニュアル化するなどの対策が重要だ。業務の改善点を明確に示し、感情的な叱責を避けるのはもちろんだが、日頃からコミュニケーションを深め、スタッフが安心して働ける環境づくりを心がけたい。必要に応じて外部の相談窓口を活用したり、防止研修を実施することも有効な手段となるだろう(参照2)。
パワハラと指導の線引きは、時に曖昧に感じられるかもしれない。しかし、オーナーは「その指導が本当に業務改善を目的としているか」「相手を尊重しているか」という視点を常に持ち、健全な店づくりに努める必要があるだろう。











