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料理人なら一度は味わっておきたい「名作メニュー」10選。高級フランス料理から元祖オムライスまで

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料理人が技術を身につける方法は様々とある。日々の実戦の中で学ぶのを基本としながら、時には本の中から、あるいは休日のレストラン巡りの中から学ぶこともあるだろう。

レストラン巡りをする際、「あの店の料理を食べてみたい」という目的を持って足を運ぶ方も多いはず。そこで今回は、名店のスペシャリテから大衆的な一品まで、料理人なら一度は食べておくべき名作メニューをご紹介する。

ストーリーのある名店のスペシャリテ

■『シェ・イノ』の「マリア・カラス」
日本のフランス料理界を牽引してきた井上旭氏。その彼が、フランス修行後に苦心しながら作り上げたスペシャリテがコレ。フランスの『マキシム・ド・パリ』の人気メニューであった「牛肉のパイ包み」を羊肉にアレンジした一品は、そもそもは、世界的なオペラ歌手マリア・カラスのリクエストに応えたものだったのだそう。丁寧なフォンとマデラ酒などで味付けしたソースは、個性的な子羊の味わいを丁寧にまとめている。

■『コート・ドール』の「梅干しと大葉シソの冷製スープ」
食通たちが揃って、“東京の夏を代表するスープ”と呼ぶメニュー。オーナーシェフの斉須政雄氏は、フランスで12年間その腕をふるった人物。日本のフランス料理界の重鎮としても知られます。このメニューでは、酸味のきいたメニューが多いフランス料理を、日本独自の食材である梅干しとシソで表現しきっている。食材の見事な調和に、料理人としての抜群のセンスを感じずにはいられない。

■『クチーナ ヒラタ』の「カッペリーニ からすみのせ」
現在のオーナーシェフ・町田武十さんは、料理学校を卒業後に『クチーナ ヒラタ』に入店。その後13年、先代から料理を学び、代替わりして店を任されることになる。「カッペリーニ からすみのせ」は先代の頃からのスペシャリテ。貝の出汁がきいたクリームソース、そして熱でとろけるカラスミ……。その計算され尽くされた食感、香り、味わいに、まさにパスタの極みを感じ取ることができる。

工夫から生まれた“元祖”と呼ばれる味を知る

■『煉瓦亭』の「元祖オムライス」
現在広く知られている一般的なオムライスとは違い、ごはんと玉子、そしてひき肉などを混ぜて焼いたもの。もともとは従業員のまかないだったものを、客の要望があったことから改良し、メニューにしたそう。日本の文化である“洋食”の老舗で、千切りキャベツを添えたトンカツのスタイルもこちらが元祖とのこと。

■『渋谷ロゴスキー』の「ボルシチ」
創業者は、昭和10年代の後半に満州でロシア料理に触れた。日本に戻ってからボルシチやピロシキを試行錯誤で再現し、日本人に受け入れられるようにアレンジ。日本人にとってのロシア料理の基礎を築いた。人気のボルシチは、トマトとビーツがベースの「いなか風」と細切り野菜にビーツたっぷりの「ウクライナ風」、2種類の味が楽しめる。

長年愛される老舗の美味に触れる

■『天茂』の「かき揚丼」
エビと小柱を揚げ鍋に入れ、菜箸で中央に寄せるように揚げていく。そして、揚げたてを温めたつゆにくぐらせ、炊きたてご飯にのせる。店主の高畑粧由里さんが先代の父から技術を受け継いでから、20年余り。穴子はしっかり火を通す、エビはマッチ棒一本分ほど生の状態を残して油から上げる……といった父の仕事を忠実に守っている。手を抜かないこと、それがランチ激戦区・赤坂で50年以上愛される秘訣のようだ。

■『津つ井』の「ビフテキ丼」
作家の向田邦子氏も愛した丼。A5ランクの黒毛和牛サーロインをたっぷり使い、その上にとろけるバターをのせる。見た目からしてたまらない一品だ。昭和25年に創業者があみだした名物メニューであり、継ぎ足して使われている秘伝のタレが唯一無二の旨さを形作っている。『津つ井』には、ほかにも牛ヒレカツやミックスグラタンなど“日本の洋食”と呼ぶべきメニューが揃う。

■『ナイルレストラン』の「ムルギーランチ」
日本初の本格インド料理店として誕生した『ナイルレストラン』を代表するのが「ムルギーランチ」だ。昭和24年創業以来、変わらない味を守り続けているこのメニュー。その食べ方はちょっと変わっている。ルウとイエローライス、やわらかな地鶏モモ、温野菜が一皿に盛られており、それらをぜんぶ“よく混ぜて”からいただくのだ。スパイシーなのにどこか懐かしい味わいが楽しめる。

日本人に感動を与えたデザート

■『資生堂パーラー サロン・ド・カフェ』の「ストロベリーパフェ」
資生堂パーラーは、もともと手作りアイスクリームとソーダ水の専門店としてオープン。明治35年当時の人たちは、それまでになかった食体験に夢中になったという。現在でも、パフェのアイスクリーム、苺ソースはすべて手作り。古くから培ってきた食文化を感じることができるメニューは食べてみる価値あり。

■『スリジェ』の「ガトー・ブリ」
調布で長年愛されるフランス菓子店。日本のパティシエの草分けとも言われるオーナー・原光雄氏は、まだ日本に浸透していなかったフランス菓子を丁寧に作り上げた人物。昭和49年のオープン間もなく考案した「ガトー・ブリ」は、当時まだ馴染みのなかったレアチーズケーキのこと。様々な試作を重ねてつくり上げられたこの名作は、現在でも同店の看板メニューとして高い人気を得ている。

斬新な食材の合わせ方、先代からの教えを守る姿勢、日本に馴染みのない料理を広めたいという情熱。どれを取ってもそれぞれのメニューが“名作”と呼ばれる理由がある。それらを味わうことは、料理人としての成長の大きなきっかけになるはずだ。

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いずみかな

ライター: いずみかな

グルメやライフスタイル、育児などを中心に編集執筆業をおこなう。2015年からフリーランスとしての業務を開始。タウン情報誌やレストラン情報を扱うWeb媒体で取材や執筆をしており、特にケーキや洋菓子に興味がある。