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肉王・亀田興毅が語る「知られざるコスパ最強店」と、飲食店が“肉戦争”を生き抜く極意

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■1位 影の王者『ホルモンX』

美味しすぎて、メニューをフルオーダー

最初に挙げてくれたのは神戸市にある『ホルモンX』。名前の通りホルモンを中心に扱う店である。名物の「7色ホルモン」は、牛ずり、ハチノス、赤ツラミ、リードボー、ハート、ミノ、ネクタイの盛り合わせで630円と驚きの価格設定だ。

「『ホルモンX』はやばいですよ。あそこは影の王者。新開地駅近くの誰にもわからないようなところにあって、客入りもまばらなんですが、関西にいるときはしょっちゅう行きます。新鮮な国産和牛のホルモンが腹いっぱい食べられて、値段は都内の焼肉店の三分の一程度。『原価率80%行くんちゃう?』『儲ける気ないんかな?』と思わせる圧倒的な低価格にビビります。オーナーが神戸食肉市場で働いているため直売できるということですが、それにしても安過ぎです。めっちゃええ肉が出ますよ。その日につぶしたばかりの牛のホルモンとか。すごく新鮮で、味も食感もぜんぜん違います。『新鮮レバー』なんてデザートみたいに甘いですよ。いま流行りの焼きしゃぶもひっそりとやっています。地元にコアなファンはいるけど、あまり知られていない穴場的な店です」

亀田さんが以前この店を訪れたときには、友人と二人でメニューをフルオーダーして食べつくしたそうだ。「動けなくなるまで食べたい肉」ということなのだろうか? 興味がそそられる。

■2位 サーロインをサイコロのように焼き上げる『七輪や』

『七輪や』はダクトにもこだわりアリ

続いておすすめしてくれたのは、焼肉激戦区の麻布十番で炭火焼肉を提供する『七輪や』だ。

「高級店の多い麻布十番の中ではカジュアルな店。予約せずに行っても入れるのが魅力です。どの肉も平均以上ですが、イチオシの『サーロインの六方焼き』は仕上がってる! サイコロのように転がしながら肉の六面を焼き上げて余分な脂を落としてボクサーみたいに減量させるから、サシのたっぷり入った肉でも胸焼けしません。岩塩や黒胡椒をかけて食べると、もうペロリンコドリル! 七輪と吸い口の細いダクトにもこだわりがあって、薫煙効果で肉が香ばしく焼きあがるようになっています。これはこの店の設備だからこそできるんです」

厚切りの肉は焼き加減が難しいが、『七輪や』ではスタッフが焼き方を教えてくれるのが魅力だ。ちなみに「ペロリンコドリル」は、亀田さんの食に対する褒め言葉「ペロリンコ」から派生した言葉。その他に「ペロリアーノ」、「ペロリアンヌ」等がある。

■3位 真心が伝わる『くいや』

人情味あふれる『くいや』

亀田さんが3番目に名前を挙げたのは、彼の地元である西成で50年以上も営業している老舗焼肉店『くいや』だ。カウンター6席だけの小さなお店で、ホッとするような雰囲気がある。

「『くいや』もレベル高い。最強にうまくて安い。一人3000円から4000円で新鮮な肉が腹いっぱい食べられる。けど、紹介したらおばちゃんが倒れるんちゃうかな(笑)。 それがちょっと心配ですね。80歳くらいのご高齢の方が一人でやっています。おばちゃんが毎朝チャリンコに乗って仕入れしてきた、めちゃめちゃいい肉を目の前でバッサーと切って豪快に出してくれます。大阪のおばちゃんやから、お皿がカラになったら『肉くいや~』って言って次々と持ってきてくれるんです。常連客は冷蔵庫から瓶ビールとったり、煙たくなったら窓を開けたりして、おばちゃんを労わりながら食べてますよ(笑)。おばちゃんのペースに合わせられる人やったら行ってもいいんじゃないですかね」

『くいや』は、半世紀変わらぬ味を守り続けたタレも絶品とのこと。何より店主の真心こもったあたたかい接客が、亀田さんの心を掴んで離さないようである。

以上3店舗に共通するのは、目を引く派手さはなくても、良心的な価格設定と心のある接客で、トレンドに関わらず愛されているということである。インパクトのある個性的な店も魅力的だが、昔ながらの基本を大切にした店にも、足しげく通いたくなる吸引力があると気づかされた。

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三原明日香

ライター: 三原明日香

編集プロダクションに勤務し、フリーライターとして10年以上活動。ふとしたことから労働基準法に興味を持ち、4年間社労士の勉強に打ち込む。2014年に試験に合格し、20年4月に開業社労士として独立した。下町の居酒屋で出されるモツ煮込みが好物。