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多様化する飲食店の「デリバリー事業」。店で作った料理を、客の自宅で最終調理するサービスも

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Photo by iStock.com/Daisy-Daisy

飲食店の中食分野への進出が活発化しつつある昨今、テイクアウトやデリバリーといった主だった中食サービス以外にも、新たなものが続々と登場してきている。ここでは飲食店の中食分野への関わり方の中で、特にデリバリー事業についておさらいをしながら、新たに登場したサービスについても触れていきたい。

市場拡大を続ける「中食」

飲食産業は「外食」「中食」「内食」に分かれており、近年は、調理済み食品を店内では食べずに、家庭や職場などに持ち帰って食べたり、デリバリーしたりする中食分野が大変伸びてきている。矢野経済研究所によると、2016年度の中食市場規模は前年度比101.3%の8兆5,758億円と好調推移。2012年度以降、プラス成長を維持している。

市場規模が年々拡大している理由、それは「一人前の料理の手間を省きたい単身世帯」や「社会進出をしたことで家事の負担を軽減したい女性」が増加したことだと考えられている。さらに今後は、高齢世帯の増加も市場拡大を後押しすると予想されている。

こうした状況の中、「中食が増えたら外食の機会が減ってしまうのではないか?」と懸念する飲食店オーナーは少なくないだろう。しかし視点を変えて考えると、飲食店が中食に参入すれば新たな市場を獲得でき、売り上げを伸ばすチャンスになることがわかる。テイクアウトやデリバリーに適したメニューを提供している飲食店は、中食への参入を一度は検討してみてもいいだろう。

Photo by iStock.com/Milkos

多様化するデリバリーサービス

飲食店が中食に参入するとなると「テイクアウト」や「デリバリー」という形態が考えられる。もしデリバリーを始めようとすると、「専用メニューは必要か?」「配達はどうする?」「販促手段は?」と、準備しなければならならいことがたくさんあり、参入は無理だと諦めてしまうオーナーも多いだろう。だが近年、さまざまな形態のデリバリーサービスが登場しているため、より簡単に参入ができるようになってきた。ここで、主だったデリバリーサービスを紹介しよう。

■出前館
「デリバリー」を語る上で外せない、先駆けと言える存在。利用者は、ピザや寿司、中華料理をはじめとする多数のジャンルから食事を注文でき、最短20分で受け取ることができる。今年7月にはコミュニケーションアプリ「LINE」と業務提携し「LINEデリマ」をスタート。LINEアプリを通じて注文ができるようになった。

現在、国内最大級の15,000店舗が加盟している。加盟店のオペレーションの負担を軽減する独自の受注システムや、低コストで新規顧客層からの注文を獲得しやすいといった点が評価されているようだ。

■UberEATS(ウーバーイーツ)
配車アプリ大手の米ウーバーテクノロジーズによるフードデリバリーサービス。日本のほか、7カ国でもサービス提供されている。利用者は、アプリ「UberEATS」から注文。するとウーバーが仲介し、加盟飲食店の料理を、配達員として登録した一般人が自転車や原付バイクを使って配達する仕組みだ。

特徴は、飲食店側の負担を一挙に引き受けること。ウーバーが利用者から直接注文を受け、料理を引き取り、配送する……。これらを請け負うことで、デリバリー機能がない飲食店でもデリバリー事業へ参入を可能にしている。

Photo by iStock.com/Jean-philippe WALLET

付加価値のある新たなデリバリーサービスも登場

差別化を図るべく、デリバリーという概念をさらに発展させた新たなサービスも台頭している。

■マイシェフクイック
レストランの機能をまるごと配達できるサービス。加盟レストランのシェフがレストランで料理をつくり、マイシェフクイックのサービススタッフがレストランから料理を持って出張し、出張先の自宅等のキッチンで最終調理をして料理を提供する。サービススタッフは最終調理を含め、料理のサーブや片付けまでを行うという。

普段使いというよりは、記念日や晴れの日の利用を想定しているため、基本的に事前注文制となっている。加盟店にとっては急な受注がないため、通常のレストラン営業への負担が軽減できるほか、食材ロスを抑えられるというメリットもある。

■シャショクル
デリバリー型社員食堂。オフィス勤めにとって、ラインタイムの行列は悩みのタネ。この問題を解決すべく、社内に毎日決まった時間に弁当を届けるのが「シャショクル」だ。

このサービスは加盟飲食店側に対し、弁当の全量買い取りという保証をしていることが大きな特徴。また、顧客ごとに商品ラインナップをカスタマイズしたり、ムスリム対応の弁当を販売予定であったりと、商品を売るためにさまざまな工夫を行っている。姉妹サイトとして飲食店の弁当をご家庭に届ける「ごちクル」もある。

こうしてデリバリーサービスの例を見ていくと、上で挙げたような「世帯の変化」の問題に応えるだけでなく、社会の多様なニーズに応えられるようにさまざまなサービスが誕生していることがわかる。サービス利用者の中には、飲食店からのデリバリーに対して大きな利便性や特別感を感じる人も多いはず。飲食店にとっては新たな市場を開拓するだけでなく、人々の生活に寄り添うという意味で大いに取り組み甲斐のある事業だといえるのではないだろうか。

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岩﨑美帆

ライター: 岩﨑美帆

1982年生まれ。NPO活動に没頭した 大学時代、塾講師、広告営業を経て、フリーライターに。食・健康・医療など生と死を結ぶ一本線上にある分野に強い関心がある。紙媒体、Web媒体、書籍原稿などの執筆の他、さまざまな媒体の企画・構成の実績がある。好きな言葉は「Chase the Chance!」